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血で汚れ、所々破れた衣。

それでも大切なものだ。

「氷月さんには捨てていいと言われたんですが、捨てられなくて」

「……そうか」

腰を下ろしてからしばらく黙り込んでいた鏑は、やがて大きく息を吐いて口を開いた。

「すまなかった。お前のこと、黙ってて」

「いいえ」

首を振り、父と呼ぶ人を真っ直ぐに見詰める。

「こちらに来て記憶を無くして、何も分からない私の面倒を見て下さったんですよね。有り難うございます」

「そんな改まるなって。俺だけじゃなくて、神崎の奥さんや天承さんにも助けてもらったさ。俺は男だし、至らないところも沢山あるからな」

困ったように頭をかいた鏑に対し、きちんと姿勢を正して両手を揃える。

「私を娘として引き取って下さって、本当に感謝しています。とても言葉では言い表せない程、感謝しています」

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