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「氷月……そんな顔しないで」

気が付くと、神無の指が頬に触れていた。

自分が泣いている事に、その時初めて気付いた。

「私、貴方を……ほんの少ししか知らないままだったけど……。それでも知っている貴方も、知らない貴方も、全部……全部、大好きだよ」

「神無、もういい。話すな」

絶えず流れ続ける血と、次第に弱く細くなって行く声に堪らなくなって止める。

しかし、神無は全ての力を振り絞るように言葉を紡ぐ。

「ねえ、氷月……。貴方は幸せに、生きてね……」

彼女の瞳から一筋こぼれた涙は、炎を映して朱く朱く。

「私、貴方に会えて……本当に、幸せだったよ……。哀しませて、ごめんなさい……」

こんな状況でも微笑むから、もう何も言えない。

「有り難う……」

最後まで人を気遣って、心を救おうと笑って。

神無は力尽きたように目を閉じた。

「……神無」

呼び掛けに応える声は無い。

力無く落ちた腕が地面に垂れる。

閉ざされた瞳から一筋流れた涙は、炎を映して何処までも朱く朱く。





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Reservoir Amulet2