20
どうしてだろう。
あの月光が、今はとても懐かしい。
優しくて寂しい光が胸に迫る。
あれとよく似た眼差しの人を、知っているからだろうか。
まだ本当の微笑みを見た事の無い人。
気が付くと、切ない瞳を自分に向けている人。
その名に、月を持つ人。
「氷月さん……」
自分でも気付かない内に呟いた声は、一人の部屋に消えて行く。
どうしてだろう。
月光が、とても懐かしい。
貴方の瞳が、懐かしい。
- 62 -
[
*前
] | [
次#
]
しおりを挟む
ページ:
時の境
争の楔
魂の刃
人の念
晦の夜
内の声
業の花
朱の戦
静の刻
月の夢
愛の神
後書き
Reservoir Amulet2