興味本意の理由

「みょうじくんいるー?」

部屋を尋ねてみた。
例のあの子が来たと言うから興味本位で。

「え、はい…います、けど何かありましたか?」
「俺たちちょーっとみょうじくんとお話したいんだけど!」
「せっかくうちに来たし、前から話してみたくてさぁ」
「前から…?でも僕なんかといたら、怒られちゃいますよ…」
「そんなん副長だけだって」
「大丈夫大丈夫、見つかんなきゃいけるから」

戸惑うみょうじくんはこちらを警戒しているようで、そんなに怖がらなくてもいいのにと思いながら部屋の中へ失礼する。

「あの…前からって、僕のこと知ってるんですか」
「いや俺たち見回りの時によく見てるし、なにより近藤さんがバカでかい声で、なぁ」
「あぁ、山崎の彼女来たって言いながら廊下走ってたもんな」

あからさまに顔がひきつるみょうじくんを見て、言葉の選択を間違ったかもしれないと、もうひとりの隊士と顔を見合わせる。
みょうじくんを安心させなくては!

「実は普段から山崎の惚気がすごくてな!」
「うんうん!だから1回話してみたかったんだ」
「さ、退くんが僕のこと…惚気っ?そんなの初めてきいたぁ…あの、詳しく教えてください」

引きつっていた顔を山崎の名前を出すだけでこんなにもとろとろに変えてしまうのか。
これはよっぽどだなと思いながら話を続ける。

「作ってもらった手料理がうまかったとか、あー今日もこっち見てるの超かわいいとか言ってるし」
「あと見回りしてる時に何回見つけたとか言ってくるよな」
「え……っ」
「俺も俺も!それ聞いてからみょうじくん外で見かけないとなんか不安になるし」
「カメラ持ってないと忘れちゃったのかなって心配したりしてな」
「…っ、も、もしかして…僕が退くんの……」
「ストーカーって知ってるけどそれがどうかしたか?」
「安心しろ、うちの局長も重度のストーカーだ」
「そのくらいで引くやつうちにはいねえよ。むしろストーカーを好きになるなんて山崎らしいと思った位だわ」

恥ずかしさから顔を真っ赤にしていくみょうじくんが俯きながらにやけている。
うわ〜!これか〜!これは可愛いぞ!
自分のことここまで知られてるって知らなかったんだろうな。
俺たちは山崎と君の結婚式に呼ばれる気でいるんだ、もはや気の早い親戚のおじさんポジションなんだぞ。
山崎が好きになるのも納得したところで、がらりと戸が開いた。

「何話してんでィ」
「「沖田さん!」」
「そんなむさ苦しい奴と浮気たぁ、おめーもこりねぇな」
「ひえ……!ちが、これは…!」
「おいみょうじ俺にしとけ、これが欲しいならな」
「はわああ……!これ、っ退くんの……!」
「おう、昔のザキの写真でさァ」

目をきらきらと輝かせたみょうじくんは完全に山崎の写真しか見えてなくって、沖田さんはしっしと手で追いやってくる。
文句を垂れながら立ち上がり、戸を開くと流石にこちらに気づいたらしい。

「あっ、あの、ありがとうございました。またお話してくださいね…?」
「もちろん!もっとみょうじくんと話したいしな」
「俺たちならいつでもいいから声かけてくれよ」

後ろで沖田さんがこちらをジロリと睨んでいたけれど、もしかしてみょうじくんのこと…いや、まさかな。
なんだかいいところでみょうじくんをとられちまったけど話せてよかったな!
 
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はじめ