ふりだしにもどる

結果としてなまえくんはまた、俺のストーカーとなった。

あのあと、俺のものをつかみながらボーッとしているなまえくんをよそに、我に返った俺はドタドタと慌てて家を出てきてしまった。
なんだあれ!恥ずかしすぎる!俺なにやってんの!
なまえくんは飲みきれなかった精液が口からたれていてエロかっ、た…じゃなくて俺は本当になにやってるんだ。

今日も路地から見てるなぁ、ってわかっててもずっと見ないふりをしていたのに、俺はしっかりと彼を認識してしまっているし、肉体のつながりを一瞬でも持たせてしまったんだから、もう関係ないなんていえない。
いざとなったら勝てるなんて考えは甘すぎた、あきらかに俺の負けだよ。
あの時、帰ってしまったことを謝りたいな。



今日もなまえくんはいつもと同じように、ただ、俺のことを見ている。
もしかして、なまえくんから声をかけてもらえる日があるんじゃないかって思っていた俺は、あれから数日立っても変わらない光景と、この変わりつつある気持ちに戸惑ってしまう。
なに期待してるんだ山崎退!それでも監察か!
あんなことしたんだから、なまえくんだって恥ずかしいにきまってる。
……俺もとても恥ずかしいです。

「えっと、なまえくん…こんにちは」
「……ッ!こんにちは」

俺のことをじっと見つめて固まってしまったなまえくん。
やっぱり恥ずかしいよね、ごめん。

「こないだの件なんだけど、」
「えっと、抜きます…か?」
「へ、なにを?」
「ナニですけど…。僕、ストーカー兼処理係になろうかなって」

あ、肉便器って言い方のほうがすきですか?なんて笑ってる姿に戸惑うと、どうしたんだろう?とでも言いたそうな顔をしている。

「ちょっと待って!なんでそんな事言うの!」
「ヤリ捨てでもいい、僕は退くんをもっと好きでいたい」
「ヤリ捨てってそんな…」
「呼んでくれればいつでもしゃぶりに行くし、嫌じゃなければおしりだって…!退くんが僕の体を使ってくれるなら僕はそれで幸せ、だから…好きに使ってください」

そう、なまえくんに言われた途端、怒りがこみ上げてきた。
なんで自分の体を大切にしないんだ。
もしこれが初めてじゃなかったら?ずっとこんな風に彼が生きていたら?
俺のなかでぐるぐるといろんな考えが巡ってきて、さっきまで恥ずかしいなとか声かけてほしいなって思ってた甘酸っぱい気持ちはすべて吹き飛んだ。

「そんな、なまえくんなんて嫌いだ」



だって、ストーカーなんだから嫌われてて当然じゃないか。
1mmでも両想いの可能性なんてないんだから、僕は少女マンガ展開にでも少し憧れていたのかもしれない。

家に来てくれるなんてもしかしたら僕のことを知ってもらえるかもしれないという淡い気持ちは帰っていく退くんの姿と一緒にとけて、今まで見てるだけだったのに体を使ってくれただけですごくよかったじゃないかって思うようになった。
退くんがうれしいなら僕もうれしい。
退くんが気持ち良いなら僕も気持ち良い。
でも、もっと僕で気持ち良くなってほしい。

さらに欲深くなってしまった気持ちは、体という手段を差し出せるようになったことで、近くで退くんを感じることができてしまうようになった代償だった。
見てるだけで幸せだったのに、退くんが、ぜんぶ僕に教えたんだ。
なのに、嫌いなんて直接言わないでほしかった。
 
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はじめ