夏油傑の独白


彼は私のことを好いていることがあからさまで、あえて認識してからかった方がこの先楽だろうと思った。冗談ですませてしまえばいいと。それなのに後先考えない自分勝手な感情にはめんどくさいの言葉が勝ってしまった。

ただ、彼の存在は都合が良かった。悟に乗せられたとはいえ、有り余った男子高校生の性欲を発散させるのには最適で、余計なことを言わずに自分の立場を弁えていた。今まで相手にしてきた女は私をアクセサリーのように扱っていたから、尽くされることは初めてだった。私が言ったことをよく聞いて私だけを見ている。まるで犬のように。

そのうち先を求めだした君に、初めてその身体を暴く男になるんだと思ったら気分が良かった。この頃から少しだけ見え方が変わっていたのかもしれない。それでも男なんか好きになるわけがないと言い聞かせて、彼女とはなんとなく別れてそれっきり。あんなにも尽くしていたのにこうも簡単に無駄になるのかと思った。どうせ君もいなくなるのだろう。

彼を使っていいなんて悟に言ったのは、芽生え始めたそれをなかったことにしたかったからだ。芽は嫉妬を栄養にして私を蝕む。悟は恋愛というものに興味を持っていたようだった。私と彼女のやりとりで得た知識は、ままごとのように中途半端な甘さとなって彼に注がれる。私のことがいいと言ったのに結局は誰でもいいのかと、突き放すように無茶な要求をしてもしがみつく。悟にしか見せない表情をひどく妬ましく思うようになって、私にも見せて欲しいと気づいた時、行いは全て自分に返っていた。

私がしてきたことは許されるものではない。それなのに彼は全てを許そうとしてくるから、それに包まれてしまったら自分が許せなかった。私のせいで増えた赤い傷も、身体の至るところに残る痣も、好きと言われる度に責められている気がした。私は突き放すことしかできない。自業自得だ。今になって言葉を告げることなんてできやしなかった。本当の馬鹿は私だったのに。

だから彼は死んだ。私が殺したも同然の結果だ。私から生まれた呪いはひとつの欲望だけを纏って彷徨っているように見えた。祓うか取り込むか、これが君の最期の呪いなら選ぶまでもない。

君は私のものだからね。






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はじめ