いつか、その時まで、

エッジショットのところでインターンを行うのはいいが、現在エッジショットはシンリンカムイとMt.レディとチームアップ中であり、チーム・ラーカーズを結成している。
したがって、シンリンカムイとMt.レディが受け入れたインターン生とも一緒になるのだった。


「まさかインターンでもおまえと一緒とはな」
「え、なに万癒、俺と一緒はご不満!?」
「不満っつーか、おまえのお守をここでもしなければならんと思うと……はっ」
「やっぱご不満じゃん!!」

ラーカーズでのインターンは、上鳴・瀬呂・峰田とB組の塩崎が一緒であった。
上鳴を軽くあしらう万癒に、瀬呂は「前途多難だな」と笑った。峰田は「上鳴までイチャつくなよなぁ〜!!」とギリギリハンカチを噛んでいた。塩崎はそれを見て物凄く軽蔑する目を向けていた。大丈夫かこの組み合わせ。







「来たな、万癒」
「万癒じゃねぇ、レディ・パルフェだ」

各々面識のある者はそちらとまず挨拶をしていた。当然のようにエッジショットが万癒に話しかけるが、ツンとした様子で万癒も訂正した。
それに気にした様子もなく、エッジショットは穏やかに話出す。


「おまえの活躍は聞いた。随分あれからまた変わったらしい」
「……私なりに答えは出したつもりだ」
「聞こう」
「……私は、どうしたって根本は医者だ。そうでしか在れないし、在りたくもない。私の原点は父さんみたいな医者になることだから。でも、憧れ父さんを超えるためにも……もっと深いところで沢山の人を救けたい。人々に安寧をもたらせるように。皆が安心して、当たり前に明日を迎えられるように、だから私は……ヒーローをも救う最高のヒーラーヒーローになる。それが私の答え、私が出した大正解だ」

身体だけじゃない、心も救う医者に、ヒーローになる。それが万癒の答え。万癒が出した大正解。無敵に素敵に、完全完璧なレディ・パルフェの在るべき姿。
改めて打ち明けられる万癒の熱い思いに、上鳴が嬉しそうな顔をした。
エッジショットもまた、満足そうに一つ頷く。


「本当に変わった。今のおまえならその名に恥じることもないだろう」
「……これから先、私が救えないものなんて何もない」
「その眼……慢心ではないようだな」
「自分の未熟さも、無力さも嫌と言うほど思い知った。そうならないようにどうすればいいかももうわかってる。もう誰も死なせない。レディ・パルフェの失敗は……一度で十分だ」

今も、万癒の中にはナイトアイがいる。レディ・パルフェが救えなかったヒーロー。未来を変えられなかった人。もう誰も死なせない、救えなかったのは彼だけ。悔恨も、悲哀も、贖罪も、彼だけで十分だった。


「――いい答えだ」
「当然」

エッジショットが納得したのに当然だと言って笑う。だからそう、私のことはレディ・パルフェと――。


「では頼りにしているぞ、万癒」
「いやなんでだ!!」

呼ばなかった。
今のは完全にレディ・パルフェ呼びの流れだっただろうと吠える。けれどエッジショットはしれっとした顔で言ってのけた。


「答えは聞いたが、俺が知っているおまえはレディ・パルフェではない」
「ぐっ、おまえ……神野でのこと根に持ってんのか……」
「俺とおまえの間に遺恨などない。だが、そうだな……おまえが疑いようもなくそうだと思った時にそれは取っておこう」
「それまで名前呼びだって!?」
「ああ、ではさっそく巡回に行くぞ、万癒」
「気安く呼んでんじゃねぇぞマジで!!」

ぎゃんぎゃん吠えてもエッジショットはどこ吹く風でさっさと行ってしまう。万癒も唸りつつも素直について行くのだから、周囲はちょっと唖然とした。


「なんか……医刀、ちょっと幼く見えるな」
「そういやあいつ妹属性備えてたよな」
「いや……あの感じ……え、エッジショットってまさか……!?」
「あ、やっぱそう思う? 私もそうじゃないかなって思ってんのよ。よくパルフェちゃんの記事とか見てるし。マイ・フェア・レディって感じ」
「まっじかああああ!! 強力なライバルすぎる……!!」
「おい憶測で勝手なことを言うんじゃない!」

エッジショットの真意はエッジショットのみぞ知るが、Mt.レディも嬉々として燃料を投下して、面白おかしく騒ぎ立てるのをシンリンカムイが一喝した。
塩崎は何かを考えるように「主よ……これも試練なのでしょうか?」と祈るように天を仰いでいた。







「――なんっでまた……こんなことに」
「パルフェちゃん、髪伸ばしてるんでしょ? 私の出てるCMにちょうどいいのよ」
「それを言われると何も言えねぇ……」
「(あら……意外と素直なのね)」

インターンに来て早三日。万癒はMt.レディがイメージモデルを務めるシャンプーのCMに試用されることになった。どうも髪を美しく、かつ早く伸ばすというコンセプトらしく、それなら最初から短かめの髪でデビューしていて、なおかつ伸ばそうとしている万癒を抜擢してはどうかと、Mt.レディの意見が通ったのだった。

万癒もなんでこんなことに、とは思いつつもいずれは受ける仕事だと思い気持ちを入れ替えた。CMもイベントも、人々の安寧に意味があることだともう分かっているから。


「大丈夫よ、あなた……笑うと可愛いんだもの。あなたの微笑みなんて見たら……画面の向こうの人たちなんてイチコロよ♡」
「いや、死んだら困るんだよな」
「あらやだ……あなたも天然なのね」
「は……?」
「(無自覚かぁ……)なんでもないわ」

にっこり笑ってMt.レディは誤魔化した。万癒の意外な一面にこれは確かに可愛いかもね、とエッジショットに思いを馳せるのだった。髪紐を女の子に贈るって……結構特別だと思うんだけど、どうなのかしらね。やはりその真意はエッジショットのみぞ知る。


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