クソナード
最初に緑谷を見つけたのは爆豪だった。
ダツゴクの個性で操られた市民たちを攻撃できず、揉まれていた緑谷を救った。
「皆……何で……」
「心配だからだよ」
「僕は大丈夫だよ。だから……心配しないで……離れて……」
緑谷は随分変わっていた。コスチュームはボロボロだったし、その風貌はヒーローというより敵のようだった。
「そいつぁよかった! さすがOFA継承者様だぜ! ンでてめェ〜は今、
「……笑う為に、安心してもらう為に……行かなきゃ……だから……」
緑谷の何かに追い詰められた声が振り絞るように出される。悲壮な決意がそこにはあった。
「どいてよ、皆……!」
「どかせてみろよオールマイト気取りが!!!」
「
「うん」
一度決めたら止まらない人だとよく知っていた。けれど止めると決めたから、A組は明日を一緒に笑う為にその手を掴みに行くのだ。
万癒は常闇が緑谷を飛ばしてくるのを見計らい、八百万と準備していた。
八百万が創った装置に万癒の麻酔を仕込む。それで止まるヤツではないから、絶縁テープを創造しておく。
緑谷を今止めているのは耳郎たちだろうか。それならきっと、すぐだろう。そして実際すぐだった。黒影に押し込まれた緑谷が飛んできて、砂藤の声が聞こえる。
「緑谷! 聞いてくれ! おまえは特別な力持ってっけど、気持ちは俺らも同じだ! さっき言った口田の話もさ!! 聞いてくれ! でなきゃもうエリちゃんにリンゴアメ作る時、食紅貸してやんねー!」
「いいよ……! エリちゃんだって……僕からじゃなくて……いいよ……!」
その瞬間、装置が作動して緑谷を固定し、眠らせるように動く。そこに八百万が姿を現す
「初めは一同あなたについて行くつもりでした。今はエンデヴァー達と協力のもと個性≠行使しています。緑谷さんの安全を確保するという任務で」
眠らせる装置だということに気づき、抜け出そうとしたところ、緑谷は勢いよく白い何かに突進され、胸倉をつかみあげられる。何だとみると、そこには万癒がいた。顔は俯いていてどんな表情をしているのかわからない。
「っ……ってんだよ……」
「医刀さん……? 離して……」
万癒の手を離そうと、手を優しく、怪我をしない程度の力で外そうとするが、力が強すぎた。
「医刀さん、怪我しちゃうから……お願いだから……!」
「誰がおめぇの言うことなんざ聞くか!! 私の言うことなんて一度だって聞いたことないクセによぉ!!」
「っ、医刀さ――」
上がった顔を見て緑谷は息をのんだ。万癒の瞳に涙がにじんでいた。思わずたじろぐと、万癒はさらに力を込めて押してきた。
「自分からじゃなくていいとか、おまえが言うな!! エリちゃんに特別に好かれてるおまえが!! エリちゃんのヒーローが、そんなこと言うんじゃねぇ!!」
エリちゃんには緑谷が雄英を出たことは話していない。
怪我をして、病院にいるんだと話した。「早くデクさん、よくなるといいな……」そう言って、クリスマスに届けたデク人形を抱きしめる姿を、何度も万癒は見てきた。
「おまえじゃねぇと意味ないんだよ!! 他の誰がリンゴアメ作ったって、あの子が一番喜ぶのはおまえなんだよクソナード!!」
「医刀、さん……」
「ちょっと目を離せばこれだ! ボロボロもいいとこじゃねぇか! マジふざけんな!! そうやっておまえは自分を蔑ろにして、どこへでも救けるために飛んでって……そんで……そんで……っ!」
言葉にならないものをぶつけるように、再び押し込む。いいからもう眠ってろ。頼むから止まってくれ。その一心だった。
けれど緑谷は万癒の身体に黒鞭を巻き付け、無理やり引きはがした。
「緑谷っ!」
「ごめん……本当に……ごめん……!」
その謝罪は万癒の言うことを一度だって聞けないものに対しての謝罪と、エリちゃんへの謝罪だと理解してしまった。
押し込まれた装置から抜け出そうと緑谷が足掻く。
「もう……僕にかまわなくて……いいから……! 僕から離れてよ!」
「やなこった!!」
バキバキと音を立てながら装置から抜け出す緑谷を捕まえたのは、上鳴だった。ガバっと抑え込んで、語り掛ける。
「緑谷! OFAだかも大事だと思うけど、今のおまえにはもっと大事なもんがあるぜ! 全然趣味とか違げーけど、おまえは友だちだ! あと個人的におまえに対しては色々あんだよ俺!」
上鳴の頭の中にはいつも緑谷を気にしていた万癒の姿が浮かんでいた。
それは怒りだったり、心配だったり、緑谷に何かを重ねる姿だったり、救えなかったかもしれないと追い詰められた姿だったり、心配なんかしてやらないと泣いていた姿だったり、今だってそうだった。
「だから、無理くりにでもやらせてもらう!」
そうやって抑えている上鳴と黒影ごと障子が絶縁テープでぐるぐるに緑谷を巻き付ける。そこに常闇も到着した。
「絶縁テープを巻いてある……八百万と医刀産のな。「このメンツなら
「――ここは暗くて良い……黒影。
黒影が緑谷と上鳴をその身で包む。万癒が八百万に抱き起されながら奥歯を噛みしめていた。
林間合宿も体育祭も、自分は一緒にそこにいた。いつもどこかしらぶっ壊す緑谷を救けるために。体育祭の騎馬戦では初めて緑谷はぶっ壊れずに進んで、林間合宿では打って変わってボロボロで、それでも遂行できるようにドーピングをした。言いたいことなんて、まだまだ山ほどあった。
「おまえにとって俺たちは庇護対象でしかないのか?」
「とりあえず風呂入ろう、な!? 緑谷、風呂行こ!!」
「(頼むから……!!)うう……!」
もうもたない、それを察知した万癒は気づけば口にしていた。言うつもりのなかった一言が、勝手に口からこぼれていた。
「行かないで……!! 『 』」
声にならない音が零れた。誰も何も、聞き取れなかっただろう。でもその音を万癒は何か理解していた。
「うああああ!!」
「
突破してしまった緑谷を追う。一人でそちらに行かせてはならない。その手を掴まなくてはならない。
だって万癒はその手を掴めなかった結末を知っている。声にならない音は、その人を呼んだから。
――なんで、緑谷が怖かったのか、やっとわかったよ……「父さん」、あなたと同じだったからだ。
守られたいわけでも、緑谷を否定したいわけでもなくて、ただ隣に在りたかった。
一人でコミックのようなスーパーヒーローになろうと、全部背負おうとしている緑谷を救けたくて、力になりたくて。一緒にみんなでやりたくて、その荷を分けて欲しかった。
「皆ぁ!!!」
「レジェルドープ、完了した!」
「溶解度0.1%。保護被膜用アシッドマン!」
「行け轟!!」
万癒が突撃する轟たちをドーピングし、芦戸が保護するために粘液をまとわせる。そうして轟が氷で作った滑走路に力自慢の砂藤たちが飛ばし、轟が膨冷熱波を放って爆豪と飯田更に飛ばした。麗日がタッチして軽くして、爆豪が爆速ターボ・クラスターで緑谷への道を委員長に託す――。
「(君はいつだって俺の先を行く……!! だから)だから俺はいつだって――君に挑戦するんだ!」
飯田の手が、緑谷の手を取った。
同じ意志で、同じ歩調で。隣を走り続けるために。たった一人で、茨の道を歩ませないために。
「そんな…………ダメだ……離して……!」
「離さない! どこへでも駆けつけ――迷子の手を引くのがインゲニウムだ。余計なお世話ってのは、ヒーローの本質なんだろ」
緑谷は振りほどかなきゃいけないとわかっているのに、力が入らなかった。
麗日が解除して、そのまま飯田と一緒に落下していくのを切島が受け止めた。みんなが駆け寄ってくる。芦戸が一緒にいよう、また授業を一緒に受けようというと、緑谷が立ち上がってそれでも、と口を開く。
「……そう……したいよ……けど、恐いんだ……! 雄英には……! 沢山の人がいて……! 他人に迷惑かけたくないんだ……! もう、今まで通りじゃいられないんだ――――」
緑谷の前に、爆豪が進み出る。言いたいことが、言わなきゃならないことがあった。
「死柄木にぶっ刺された時言った事、覚えてっか?」
「……覚えてない」
「「一人で勝とうとしてんじゃねェ」だ。続きがあるんだよ……身体が勝手に動いて、ぶっ刺されて……! 言わなきゃって思ったんだ」
爆豪は真っ直ぐ緑谷の目を見て、真っ直ぐに伝える。言わなきゃいけないことがある。段々と自覚していたそれを、言葉にして今、伝えようとしている。
「てめェをずっと見下してた……無個性≠セったから。俺より遥か後ろにいるハズなのに。俺より遥か先にいるような気がして。嫌だった、見たくなかった、認めたくなかった。だから遠ざけたくて虐めてた」
何も持たないはずなのに、心は誰よりずっとヒーローだった緑谷を見ていた。自分の方がすごいはずなのに、自分より根本から緑谷はヒーローだった。
「否定することで優位に立とうとしてたんだ。俺はずっと敗けてた」
大丈夫、と川に落ちた時、差し伸べられた手にぞっとした。どんな相手――格上の存在――でも、救けることが当たり前なその姿勢が、ずっと――。
「――雄英入って、思い通りに行くことなんて一つもなかった。てめェの強さと自分の弱さを理解してく日々だった。言ってどうにかなるもんじゃねェけど、本音だ」
信じられないものを聞いたかのような顔をする緑谷に、爆豪は言わなきゃならなかった、本命の一言を告げる。
「出久。「今までごめん」」
頭を下げて、爆豪は謝る。
クソナードでも、デクでもなくて、出久と呼んで。
「OFAを継いだおまえの歩みは
勝って救ける。救けて勝つ。力と心、どちらも兼ねそろえた最高のヒーローに。
全部救けて全部勝つ。それは緑谷の心を動かした。
――皆とっくに
「「ついてこれない」……なんて……」
――僕なんかよりずっと先に
「「ついてこれない」なんて酷い事、言って……ごめん――」
「わーってる」
崩れ落ちた緑谷を爆豪が受け止めた。
緑谷の安全を確保し、雄英に連れ戻す。第一段階がクリアされたのだった。
雄英に戻ってからの方が、ずっと険しかった。
雄英の避難民の不安が緑谷にそのまま向かったのだ。けれどそれを変えたのは麗日だった。不理解、不寛容、何れもあと一歩°゚寄る事のできなかった人々の歩みを、麗日が必死で戦って、その一歩を道と成した。
――ここを!! 彼の!! ヒーローアカデミアでいさせて下さい!!
「すげぇな……麗日。誰にも出来なかったこと……やり遂げちまった」
「万癒……」
万癒の表情も声も明るいものだった。それに上鳴が意外そうな顔をする。
緑谷を確保するまでの間、万癒の様子がどこかおかしかったのに気づいていた。だから、もしかしたら万癒は緑谷のことが……好きなのかもしれないと思っていた。でも、緑谷を救った麗日を見る目はとても優しくて、むしろ嬉しそうだった。
「……恋じゃ、なかったのね」
「? 上鳴、なんかいったか?」
「なーんもっ!」
あんなに降っていた雨が止みそうだった。止まない雨はない。それは人間にだって言えることだろう。
男子によって全力で風呂に入れられた緑谷は、窓の外からタイミングを伺っていたオールマイトと話すと、万癒の方を見た。万癒は風呂から上がり、肩より下まで長くなった髪を弄っていた。
「あの、医刀さん……」
「……なんだ、緑谷」
相変わらず万癒は緑谷にはツンとしていた。上鳴と轟が見守るようにそちらを見る。
緑谷は万癒がこちらを見たのを確認すると、頭を下げた。
「ごめんっ、また君を傷つけた……!」
「……は」
また、意味の分からないことを言われた。万癒が着火しそうになると、緑谷がそれを察したのか何なのか、エリちゃんのことを話し出す。
「エリちゃんのことも……! どうでもよかったわけじゃなくて、通形先輩も、君もいるから……僕がいなくても、エリちゃんは大丈夫だって、思ってた」
その告白に、万癒はまた何かが胸の奥底からこみ上げてくるのを感じた。
「……大丈夫なわけ、ねぇだろ……。エリちゃんは、一度捨てられてんだぞ……あの子は本当にいい子だから、おまえを恨みはしないだろうし、責めもしないだろう。でも、必ず傷になる……! だっておまえは、エリちゃんのヒーローだから……!」
子どもにとってヒーローっていうのは本当に大きな意味を持つ。
でも、「傷になる」それは自分と重ねたからこその言葉でもあった。どんなに劇的で、どんなにかっこよくても、やっぱり傍でもっと一緒にいて欲しかったという思いが、自分にだってあったことに気づいてしまったから。
あの時とっさに口に出た「行かないで」はあの日飛び出した父に向けて言いたくて、でも飲み込んだ言葉だった。
「おまえはいつもそうだ……救けるために、そのためにどこまででも飛んで行っちまう。どんなにボロボロになっても、おまえは自分を顧みない」
「医刀さん……」
でも本当に、緑谷出久は止まらないのだ。父もそうだった。止まらないから、万癒は、だから――。
「だからっ、おまえは私の手の届く範囲で好き勝手しやがれ!! どんな大怪我しようが、心停止しようがなんだろうが、私が必ず救けてやる!! だからっ、だからっもう私から離れんじゃねぇぞ!! 分かったか!! このクソナード!!!」
「はっ、はいっ!!」
「あと別に傷ついてねぇ!! おまえに私が傷つけられるとか思い上がんな!! ばーか!!」
「そ、そっか!」
ぎゃんと吠えた万癒に、いやおまえ十分傷ついてたよな、と轟が言おうとしたのを上鳴が手で口を塞いで止めた。わかってても、言ったらだめなのだ。万癒嬢の精一杯の強がりだから。
そして、緑谷の件が解決したからかなんなのか、エッジショットから連絡がきた。ただ一言「おまえの安寧を守れなかったことを謝罪する」と。「うるせぇバカ」と送り返していると、眠ってしまった緑谷に轟が毛布を持ってきてかけてやっていた。
「医刀、なんか楽しそうだな?」
「そう見えるか?」
「ああ、なんか……八百万がおまえの麻酔モノにしたときと同じ顔してる」
「は……」
「まぁ……!」
轟のたとえに言葉が詰まった。それはどんな顔だ。楽しそうって、私は楽しそうにしてたのか、まったく自覚なんてなかった。だがしかし、轟の言うことだ。真に受けるのは危険だ。と思っていると更なる爆弾が投下される。
「そうだ、確か……八百万にサンタセット創ってもらってたときとかそんな顔してたな」
「……」
今度こそ万癒は絶句した。サンタセットだけは大いに楽しませてもらった自覚があるからだ。八百万もかなりの気合の入れようで、あれもこれもとどんどん増えていったのだ。よりサンタに近づくことが楽しくないはずがなかった。
それに恥ずかしいやら何やらで、項垂れる。
「医刀……大丈夫か?」
「大丈夫じゃねぇ……」
「なら俺なんか作るよ。腹が――」
「減ってねぇんだよ!? おまえはいつもそう! 私がいつも腹空かせてると勘違いしやがって! 空いてねぇ!!」
「そうか……」
心なしか残念そうな顔をしている。何故とりあえず食いもん寄こしとこうって発想になるのかわからない。
げんなりしていると、そこに上鳴が飛んできた。
「で、万癒なんがあったん?」
「おまえもまざるのかよ……」
「気になんじゃん?」
「大したことじゃねぇぞ……エッジショットが連絡寄こしてきたから、返信してただけだ」
「え」
「んだよその顔」
聞きたがるから教えたのに、上鳴がすごい顔をした。いつものアホ面とは違う、変な画風になることが度々あった。
けれどそこに意外なことに常闇が割って入る。
「師から連絡が来るのはいいことだ。ホークスも見習ってほしい」
「おまえんとこは連絡無精っぽいな。うちは細かすぎて逆にうんざりするよ」
「その割に……どこか嬉しそうだ」
「はぁ!? 常闇まで変なこと言い出すなっての!」
「いやいやぁ……医刀意外とエッジショットといいコンビだよ。ちょっと兄妹っぽい」
「兄妹ぃ……?」
瀬呂に言われて、兄妹、というものについて考えてみた。自分には兄がいるが、大層なぼんくらで、正直兄なんてよくわからない。でも、すぐさまありえねぇとか、馬鹿じゃねぇのという言葉は不思議と出てこなかった。
「そういやエンデヴァー達は雄英入らないのかな」
砂藤が何気なく、先ほどオールマイトがエンデヴァーたちのところへ行くと言ったのを思い出す。緑谷を連れ帰る時も、エンデヴァー達は人前に出ないようにしていたような気がしたのだ。それに答えたのは轟だった。
「徒に人前に出れねぇよ。荼毘がチラつくからな。今回の件で避難してる人たち全員が全員、一様に見方が変わったワケでもねェだろうし。荼毘の兄弟、エンデヴァーの息子。内心ではきっと俺の存在も未だ不安だろう」
「家庭事情で――悔しいよなぁ、轟が何かしたわけじゃねぇのになぁ」
「したよ――血に囚われて、原点を見失った」
俯いた轟の表情が目に入り、万癒はとっさに口に出していた。
手紙と髪紐をきっかけに、各々明かすことになった過去と秘密。緑谷がきっかけをくれたことも、なりたいものになるために頑張っているのも万癒は知っている。それはもう、その身をもって。轟の発言しようとしてるも、会話しようとしてるも、心当たりしかなかった。
「でも今はちげぇだろ。おまえはもうとっくに、なりたいもんとやらを始めてんだろ」
「医刀……ああ。今はもうあの頃の俺と違うから、違うってことを証明する。皆に安心してもらえるように」
安心してもらえるように、という言葉に万癒はそういえばメディア演習でどんなヒーローになりたいか、と聞かれた時、自分が来て安心してもらえるようなヒーローになりたい、と言っていたなと思い出す。
それがきっと轟のなりたいもんなのだろう。轟はオールマイトに安心をもらっていたのだと思う。
万癒もエッジショットの言葉を思い出す。人々に安寧を齎すこと。ゆめは、ゆめのままの存在で。自分もそう在りたいと思った。
「……漢だよ、おめぇは……! 俺何だか涙が出てくるよ……!」
「避難してる人たち全員が全員見方が変わったワケでもない……か。あれだね、なんかあれ。同列に言っちゃうのもおかしな話だけどさ」
「何? やだやめて」
「きゃっ」
「おいっ」
「ム」
耳郎のイヤホンジャックで文化祭のバンド隊が引き寄せられる。それに万癒は耳郎が言わんとしていることを察した。おめぇも大概いい性格してるな、と内心で文化祭の時に言われた言葉に思いをはせた。
「ウチら不安視してた人たちがいてさ、皆に安心してほしくて、笑ってほしくてさ。やれる事考えてさ。
「……そうだな」
大成功に終わった文化祭。音で殺って、心を震えさせて、そして少女の笑顔を掴んだAバンド。やれると思う、自分たちなら。
「取り戻すだけじゃなくて、前よりもっと良くなるように。皆で行こうよ、更に向こうへ」
きっとどこへだって行ける。