何でおまえが知ってんだ

今日のヒーロー基礎学は、人命救助訓練だったはずだった。
ウソの災害や事故ルーム。略してUSJに移動して、相澤とオールマイト、13号の三人体制で見るはずだった。けれどそこには敵が待ち構えていて、ワープゲートの個性を持った敵によって万癒たちはバラバラにされてしまった。


「葉隠、そこにいんな?」
「うんっ、よくわかったね万癒ちゃん!」
「念のためにサーモグラフィーモードにしてっからな。敵にしちゃ攻撃してくる素振りもねぇし、それならおまえしかいねぇだろ。どっか痛めてねぇか?」
「名推理っ! 大丈夫だよ! ちょっと寒いけどそれだけ!」

万癒は轟と一緒に土砂ゾーンに飛ばされていた。
移動した途端に轟がお得意の大規模氷結をお見舞いしてくれたおかげで、特に万癒の出番はなかった。
轟の「そのままだと身体が壊死していくぞ」という脅しにより、オールマイトを殺す策とやらを聞き出すことに成功した。といっても、寄せ集めの下っ端のような連中では、持っている情報に限りがあったが……オールマイトを殺せる奴がいるというのはわかった。本当に殺せるかはさておき。

轟が葉隠がいたということに内心で少し焦った。見えないから危うく凍らせてしまうところだった。
けれど葉隠も無事なようで、轟はオールマイトを殺そうとしている奴等を止めるために、そちらへ向かう気だった。


「おめぇらはどうする」
「私も広場に行く。怪我人がいる可能性が一番高いからな。葉隠はどうする」
「私は……万癒ちゃんについてく! 一人の方が危なさそうだし!」
「それもそうだな。おまえを捕捉できる感知タイプがいねぇ保証もねぇし」
「じゃあ一緒に行くぞ。戦闘は俺がやる」
「頼りにしてるぞ、オウジサマ」

大変心のこもっていないエールであった。姫なんて柄じゃなさすぎる。
それでも轟は内心で王子、と首を傾げつつも口にすることなく突き進んだ。葉隠が轟くんクールだねぇと思っていたのは誰も知らない。







轟を先頭に進んでいると、そこにはオールマイト他数名の生徒がいた。轟がオールマイトをフォローする傍ら、万癒は重傷の相澤を見つけ、すぐさま治療に当たった。


「(腕に……顔も。これ、目に後遺症残るかもな)先生、もう大丈夫だ。私が診る」
「……」
「医刀さん! 13号先生の背中も酷いの……!」
「麗日、先生浮かしてこっちによこせ! もれなく私が診る!」
「はっ、はいっ!」
「他に怪我してるやつは申告しろ! 後になって実はとかやられんのが一番ダリィ!」
「わかりました!!」

急ごしらえの救護テントを創造して、障子らに設営させる。
この場で今一番偉いのは万癒だった。より瀕死の相澤の治療を優先しつつ、13号の背中の処置もする。その間も戦いは激化しており、オールマイトが苦戦を強いられつつも、脳無を追い詰めて行っていた。プロはいつだって命懸けだ。


「あ、ちょっと待て13号先生! 安静にしてろ……!」
「まだ僕は動ける……やることが残ってる……!」
「チッ、プロヒーローってのは難儀だなぁ!? 死んだら先生でも殺すかんな!!」

盛大な暴言を吐いて13号が出ていくのを無視した。
飯田が到着して、他の先生プロヒーローたちも到着したのが聞こえたから無視できたことだ。じゃなきゃ「クソがっ!!」と暴言を一つ増やしていただろう。
ヒーローは救けるために無茶をする。動けない身体でも這っていく。そういう性分だ。


――ったく、誰が治すと思ってんだ……。


イライラしつつも、それでもそのヒーローによって守られているのも事実で、万癒はボロボロになった相澤の顔に視線を向け、もう一度舌打ちをした。







万癒は教師陣が駆けつけた後も治療にあたっていた。
特に相澤の傷は深く、手術を受ける必要があった。万癒が執刀医を担当し、リカバリーガールがその手伝いをしてくれた。案の定眼窩底骨が粉々になっており、やはりこればかりはどうしようもなかった。さすがにこの部分の骨を移植することはできない。目や脳というのはそれだけ繊細なのだ。


「で、次はオールマイト先生か?」
「あっちは私でやっとくからもう大丈夫さね。ありがとね、疲れたろう。ペッツお食べ」
「いや、いらな――」
「お食べ」
「……はい」
「お菓子は大事さね。特にあんたみたいな子は食べないと」
「はぁ」
「疲れた時には甘いもの。お菓子は心の栄養さね」

正直お菓子なんぞより煙草の方が万癒には栄養になっている。
けれど帰国して、今はヒーロー科の一生徒である。アメリカで敏腕の医者としてスパスパ切っていたころとは違うのだ。学生らしく、ヤニ絶ちをしていた。


「帰ってゆっくり休むんだよ」
「え、ええ。あ、でもオールマイト先生の様子は確認した――」
「いいからいいから」
「あ、ちょ――」

リカバリーガールに半ば追い出されるように保健室から出される。
扉が閉まる間際、辛うじて見えた見慣れたガイコツ男の先に……緑のもじゃもじゃが見えた。



「……は?」



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