私と組め
障害物競争の終盤、それは起きた。
轟が独走し、それを爆豪が追い、ついに追い越して先頭が入れ替わった頃、緑谷が仕掛けた。
『A組緑谷、爆発で猛追ーーっつーか!!! 抜いたあああああー!!!』
「……あいつ」
「デクぁ!!!! 俺の前を行くんじゃねえ!!!」
轟も後続に道を作ることになっても、気にしてはいられないと氷で追っていく。
万癒は走りながらそれを見ていた。爆豪のことが怖いくせに、緑谷は震えながら挑んでいる。
失速して、でも追い抜かされまいと間髪入れずに妨害した。
「……クソナードのくせに、やるじゃねぇか」
雄英体育祭、第一種目1位は緑谷だった。
万癒は11位でゴールし、続々とゴールする者たちの中に、腰に峰田がくっついた八百万を見かけた。
「くっ……こんなハズじゃあ……!」
「一石二鳥よ、オイラ天才!」
「サイッテーですわ!!」
「(なるほどそう来たか)」
峰田はただでは転ばないとは思っていたが、まさかこういう形でゴールするとは。あの様子では結構な距離をあのままでゴールさせられたのだろうと思うと、八百万に同情しつつも、その実力を評価せざるをえなかった。
大砲だのなんだのを創造した上で、峰田という重りを抱えたまま17位に食い込んできた。それに加えてまだ余力がありそうだ。
万癒は自身が八百万に劣っているなどとは思っていない。思っていないが、その体質になにも思わないこともなかった。
第二種目は騎馬戦だった。
第一種目の順位が持ち点の高さに反映される。が、1位だけ桁外れの1000万P。下剋上サバイバルだった。必然、緑谷は狙われまくるため、組んでくれる人間を探すのに難航していた。
麗日が声をかけてくれて、飯田に一緒に組んでくれるよう頼もうとしたら、飯田はすでに組んでいて、緑谷に挑戦する気でいた。どうしようと途方に暮れていると、万癒が声をかけてきた。
「おい、クソもじゃ」
「クソもっ……その呼び方は医刀さん!」
「悪いことは言わねぇ。私と組め」
「え!? いいの!!? 僕超狙われるよ!?」
「アホ、んなこたぁわかってんだよ。狙われるってこたぁ、おめぇは無茶しねぇといけねぇ訳だ。そんでまた腕なり足なりぶっ壊れんだろぉ? なぁ、緑谷くんよォ……?」
「医刀さんには……た、大変っ! 大変お世話になっておりますっ!!」
「(わぁ……医刀さん顔怖っ……)」
凄みのある万癒の顔に緑谷はもう滝汗で縮こまった。返す言葉もない。入学してからずっと万癒とリカバリーガールに世話になっているのだ。頭など上がるはずもなかった。
万癒もとりあえず緑谷弄りを終えたところで、本題に入った。
「私はヒーロー志望でもあるが、大前提医者だ。そんでおまえはもはや私の患者も同然なわけだ。特別に主治医同伴で挑ませてやるよ。感謝しな」
「(! 医刀さん……そのために僕と組もうとして……)あ、ありがとうっ!!!」
「うわっ! デクくん涙やばっ!!」
「涙腺もブチギレてんのかよ……」
呆れた様子で万癒がそういうと、続いて自分がこの騎馬で出来る役回りを伝える。何も診ることだけが医者ではない。緑谷と麗日は「そんなことできるの!?」「すごいね!!」とそれはもうキラキラした顔を揃って向けてきたので、居心地が悪かった。
そうして最後の一人はこの騎馬に足りない力……防御力を持った常闇を誘うことにした。
「わりぃな、バフといっても要はドーピングだ。フェアプレイ精神に反するかもしれねぇが……これも私の個性だ。多めに見てくれ」
「そう気に病むな、医刀。個性使用が公に認められている場であり、俺たちはチームメイトだ。何の問題もあるまい」
「そうだよ! おかげで身体機能が上がってる! これなら……!」
「といってもくれぐれも調子に乗るなよ。本戦が控えてっからな」
「……うん!!」
スタートと同時に
宣戦布告をしてきた障害物競争2位の轟の騎馬も、3位の爆豪の騎馬も当然狙っていたし、それ以外の騎馬のほとんどが緑谷狙いだった。
「実質
「はっはっはっ!! 緑谷くんいっただくよー!!」
「いきなりの襲来とはな……まず2組。追われし者の
「サダメ……!」
「センタク……」
「もちろん!! 逃げの一手!!!」
その瞬間、2組のうちのB組の前騎馬の骨抜の個性で足元を柔化される。
ぬかるんだ地面に焦っていると、万癒が「踏ん張れよ!」と声を上げて空気砲のようなもので脱出に成功させた。
「飛んだ!? 個性か!?」
「医刀さんっ、今のって……!?」
「
「すご! そりゃこんな飛ぶわけだ!」
「おまえの
そんなことを話している間も、緑谷の1000万は狙われていた。常闇の
そしていよいよ――轟の騎馬が動き出す。