素直に笑えない日常に


「ほんま、えらい事件が起きてしもうたなぁ…もう朝からこのニュースばっかりや」
「そうだねー…」

適当に相槌をうちながらキーボードを叩く。
電話の相手は西の高校生探偵、服部平次。彼は初恋だとか一目惚れだとかいう理由で僕を気に入ったらしく、よく電話をかけてくる。これもその内の一つだ。

彼が言う“えらい事件”というのは赤いシャム猫というテロ組織が危険な細菌を国立東京微生物研究所から持ち去ってしまったこと。その後、研究所は爆破。細菌に感染すると死亡率が高い。それを脅しに「一週間以内に行動を起こす」と奴らがネットに公表したもんだから日本中パニック状態。

ふとテレビから「飛沫感染する」とか「免疫力の低い子供は感染しやすい」などの情報が聞こえた。

「ほならオレが守ったるからな!」
「はいはい…あほか…」

大坂と東京という距離がありながらこいつは何を言ってるんだろうか。適当な事言ってやがる。

更に言及するならばこいつの守るべき人は僕じゃない、和葉だ。
側にあったリモコンでテレビをパチリと消し携帯を持ち変える。

「それにしても爆破までする必要、感じないんだけど。わざわざ大げさにしてるみたいだ」
「そこなんよなぁ…それにしても、あっかいシャム猫っちゅう組織、知っとったか?」
「おおよそはね。十数年前、財閥を標的にテロを繰り返していたらしいけど、十年前、あの鈴木次郎吉が警察に手を貸してようやく壊滅できた組織らしいって事くらい」

服部は電話口でほほうと息をついた。

「さすっが天音やな」
「だからさ、名前で呼ぶのやめてくれない?」
「ええやんけ!オレらの仲やろ!」
「そんな仲になった覚えないんだけど」

こいつは何度言っても聞かない。ボロが出そうになる度にヒヤヒヤするのは誰だと思っているのか。

服部はもともと隠し事とかできなさそうなタイプだし、誤魔化しが上手くないため、不安でしかない。

「ところで天音、工藤から聞いたんやけど飛行船に乗るらしいな、東京から大阪に飛んでくるやつ」
「まあね。あのじいさんが、KIDに挑戦状を出したみたいだから」
「ははは…ほんなら天音!工藤にもゆうたんやけどな、そん時は俺んとこ泊まって行けや…添い寝したろか?」
「断固拒否する」

電話ごしでもニヤニヤした服部が目にうかんだ。ったく、何を言い出すんだか。
受話器から「グサッとくるなぁ…」と聞こえたけどそんなの無視無視。

「じゃ、きるね」
「へ、おわっ!?ちょ!?」

ポケットにしまうが直ぐに携帯は震え出す。

どうせ無駄話だろうからこの目の前にあるコーヒーを飲み終わってから出てあげるとしよう。

明日の飛行船、嫌な予感がする。何も起こらなければいいけど。