特別な黙示を君に捧ぐ
飛行船に乗る当日。園子に連れられ飛行船搭乗場所に来た。ちびっこ3人のはしゃぎっぷりに比べると僕らとの温度差が激しいのは仕方ない。
「みんな、速くー!きゃっ!!」
「おっと…あんま急ぐと危ないよ、お嬢ちゃん」
「ありがとう!」
こけそうになった歩美ちゃんを救ったのは乗組員の一人だった。そこへ蘭が急いでやって来て、ちゃんとお礼をして尚且つ絆創膏まで渡している。
ただその絆創膏ちょっと蘭の気持ちが全面に押し出されているというか…なんというか…どーせ園子のイタズラなんだろうけど。
「ほら、お嬢ちゃんも」
皆が飛行船に乗り、残るは僕一人。その嘘くさい言葉に思わずため息をはいた。
「何やってんの、バ怪盗」
「あれ、もう気付いちまったのか?」
驚くこともなく、不敵に笑う彼は怪盗KID。
「この見た目からして“お嬢ちゃん”ではないでしょ」
「相変わらずだな」
わしゃわしゃと頭を撫でられた。全く持って嬉しくない。
「それよりバ怪盗。あんた人から貰った物なんてしっかり確認してから身に付けなよ」
「何だ、焼きもちかぁ?」
「焼きもち?誰が?誰に?自意識過剰も大概にね」
鼻で笑って腕を組みなおす。こいつのこの自信はどこから湧いて来るのか。
バ怪盗は目の前に膝間付き、僕の右手にキスを落とした。
「なっ?!」
「ご無礼をお許しください、天音嬢」
「ば!ばっかじゃない!?」
こんな奴に弄ばれるだなんて腹がたつ。いつかこの借りは倍にして返すから、覚悟しとけバカ。
バ怪盗がしてやったりと笑みを浮かべている隙に飛行機に乗り込んだ。頬が赤いのなんて気付きたくもない。
「「「わぁぁっ!」」」
少年探偵団三人はトロピカルランド上空に差し掛かると一際大きな歓声を上げた。
彼らは飛行船が離陸してからはしゃぎっぱなしで見てるこっちが疲れるくらいだ。
はしゃぐ子供たちの次にご機嫌なのは園子。貴女はいつでも乗れる環境でしょうが。
蘭が椅子に座って唸ってる迷探偵に向かって振り向いた。
「お父さん、すごい景色だよ!ねぇ、こっち来て見れば?」
「っるせぇ!今考え事してんだっ!!」
「もう…」
「そう言えば、毛利くんは高い所が苦手じゃったのう…」
「っ!そんなんじゃねー!!」
やれやれ、と呆れていると「ねぇ」という歩美ちゃんの声でまた窓に向き直る。窓には未だ変わらず、青空が広がっていた。
「KIDさんはいつもこんな景色を見ているのかなー?」
「羨ましいですねー!」
「でもよー…KID、本当に来んのかぁ?」
子供たちや園子のやり取りを聞き流しながら外を眺める。嵐の前の静けさというか妙に平和なのが少し引っかかる。ただ、今はこの安寧を受け入れようと軽く目を閉じた。