理屈をけすとただの人


侵入者は全部で7人。二人一組になって二組が爆弾を手に走っていった。僕の方向には誰も向かっていない。コナン達の方に一組向かったけど、彼の機転で無事難を逃れていた。

爆弾の設置が終わるとボスらしき人の元に集まった。そのボスもどきは誰かと電話している。おそらくさっき扉のロックを開けたヤツが相手だ。

しばらくするとテロリスト集団は飛行船内に入ってしまった。目的はハイジャックだろう。

とりあえず爆弾が設置されたところに向かうことにする。その途中、「全乗務員につぐ!大至急ダイニングに集まるように!繰り返す!全ての乗務員は大至急ダイニングに集まるように!」と船内放送が入った。思わずニヤッと笑ってしまう。

今日はついてる。方向転換し一気に加速した。爆弾は小さな探偵にお任せして僕は自分の確かめたい事に専念しよう。

盗聴しているイヤホンを耳に入れた。

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人目を気にしながら喫煙室に向かう。予想通り、見張っていた警官はいなくなった。船内放送でここを離れたのだろう。

よし、これで十分に調べられる。覚悟を決め喫煙室に体を滑り込ませた。

喫煙室にはタバコの臭いの他、微かにシンナーの臭いが混ざっている。テカテカと光る机を触ってみると痒みが生じた。「ほー…」と声が漏れる。

他の場所を触らないようハンカチでドアノブを覆い喫煙室から出た。トイレに直行し手を洗う。この痒み成分が広がらないよう、持っていた絆創膏を貼った。

やはりバクテリアはハッタリ。その実態はただの漆。研究所を爆破したのもこれを隠すためだろう。

トイレを出ようとしたがふいに思い出した。喫煙室にいた時、イヤホンから「警察に連絡しろ」とかなんとか聞こえたのを。

アイツらが鈴木次郎吉に恨みがあんなら、警察に連絡の必要はない。むしろ警察には知られたくないはず。それをわざわざ知らせるってことは、単なるバカかあるいは警察に知られて何らかのメリットがあるか。

もう一つ聞こえたのは最低な事態について。日売テレビの派遣レポーターが僕達がいないことをテロリストに教えてしまったこと。余計なことをしてくれる。

トイレを出たところで探偵バッチが鳴ったが、取る間も無く切れた。コナンが捕まったという合図だろう。急いでダイニングに向かう。心臓がうるさいのを振り切るようにインラインスケートのスピードを上げた。

▽▲▽


着いた時、丁度コナンが藤岡ではないハイジャックのボスもどきの前に突き出されていた。

「お前らがやったのか!」
「やったのは僕さ!こいつらは関係ない!」
「じゃあ、もう一人はどうした?一人足りないようだが…?」
「僕は知らないよ!」
「…フン…いい度胸だ…!!」

次の瞬間、彼はコナンの襟首を掴んだ。同時に僕はヨーヨーを手に思い切り振りかぶる。

「っつ!!誰だ!」

ハイジャック犯がコナンを掴んでいた方の手を抑えながら怒鳴った。おー怖い怖い。コナンが無事、そいつから離れたのを確認し一歩近づく。

「ただの小学生だけど、何か文句ある?おじさん」
「ルオンくん!!!!」

こんなに早く出て行くつもりはなかった。もう少し様子を見てからって思っていたのに。まあ、こういうのは理屈じゃない。

迷探偵が眠りこけている脇でバ怪盗が目を見開いていた。大方「らしくない」とでも思っているんだろう。僕も激しく同意したい。

「あんたの拳銃捌き、見てらんないくらい酷いね」
「このクソガキ!!!」

ガッと襟首を掴まれた。そして案の定窓から放り出される。色んな人の悲鳴が遠くに聞こえた。妙な浮遊感が気持ち悪い。

体は重力に従い始めた。空中でコナンの腕時計のようにリストバンドを構える。内蔵している針には致死量の睡眠薬。昨日哀と共に徹夜で仕込んだ。

照準を合わせボタンに指をかけた時、目の前が何かで埋め尽くされた。

「バ怪盗!邪魔しないで!」
「いやーわりぃわりぃ、咄嗟によ」
「ふざけんな!計算が台無しなんだけど!」
「…理屈じゃねえんだって」

彼は珍しく困った様に笑った。