仕向け方にコツがある
探偵バッチを忘れてしまったため飛行船内の自室まで戻っていたら、前方からウエイトレス二人の話声が聞こえてきた。
「あれ?そろそろティータイムの準備じゃない?」
「うん、でもその前にちょっと一服!直ぐ戻るから!」
ポニーテールのウエイトレスがそう言ってこちらに向かってきた。
その時、彼女の背中越しにちらりと見えたショートカットのウエイトレス。眉をひそめ、少し悲しげな顔をしている。
何かが脳内で引っかかった。
ショートカットのウエイトレスの後ろ姿を見送る。彼女の足首のあたりが少し膨らんでいた。
嫌な考えが頭を横切り、冷や汗が頬を伝う。まさか。彼女が角を曲がってしまったため、急いで後を追う。
しかし同じ角からあの藤岡が出てきた。さりげなく脇を通ろうとするが思いっきり阻まれる。
「…邪魔なんだけど」
「坊主、この先は関係者専用だぜ?入れねーの、分かるか?」
「じゃあ何であんたはその関係者専用のとこから出てきたわけ?」
「はっ!こっちは仕事できてんだよ。お前みたいなガキと一緒にすんな!ほら、帰った帰った!」
藤岡は払うように手を振り僕の前から一歩も引こうとしない。
強行突破するかとポッケにあるヨーヨーに手を伸ばす。しかしふと思い直し手を引っ込め踵を返した。
まだ時間は十分にある。僕は緩む口元を隠す事無く歩き続けた。
探偵バッチを取り終え、皆と合流した。走り出す子供たちの後ろをついて歩く。
「ほんと楽しそうね、あの子達」
「あんな小さなうちから飛行船に乗れるとは…園子くんに感謝せんといかんわい。彼らにとってはまるで大空に浮かぶ雲に乗っているようなもんじゃからのう…」
哀が子供たちを眩しそうに見つめた。それに気づかないフリをして窓の外を見る。空が青い。何も考えたくなくなる空だ。
目を開くと、皆どこかに移動し始めていた。今の今まで何があったのか分からない。軽く目を閉じていただけだったはずなのに意識が遠のいていたらしい。
「これから何すんの?」
「おめー、聞いてなかったのかよ…」
「…悪い?」
「そんな睨むことねーだろ…天音は自分が思ってる以上に目力あるからな?」
「ハーイ、キヲツケマース」
「お前なあ…で、話を戻すけど…スカイデッキに行くんだと」
「ふーん…」
コナンと並んで歩く。廊下に出ようとした時、左の角に人影が見えた。
「先行ってて、後から行くよ」
「お、おい!!天音っ!」
「直ぐ戻るって」
そう言って片手を軽く振って見せる。コナンは大きな溜息を吐いて、「またいつものが始まった」と呟いた。