のんびりできるのは
日当たりが良い窓際の席。そこは雲を眺めるのも寝るのにも最適な場所だと幼馴染は言う。
試したことはないが事実そうなのだろう。現にその幼馴染は私のとなりの席で船を漕いでいるのだから。私はそんな彼を横目に本を捲った。
今は一人の生徒が授業を抜け出したため自習時間。興味がなかったため詳細は分からない。ただこれは日常茶飯事だ。遠くでイルカ先生の怒声が聞こえた。
「…ねみー…ったく、またナルトかよ」
眠そうな声を発したのは幼馴染の奈良シカマル。もう11年の付き合いになる。
「懲りないな」
「ま、それがナルトだもんね」
菓子を食べながら口を開いたのは秋道チョウジ。「まあな…」とシカマルが相槌を打った。まどろみつつふと思う。
あぁ、今日でアカデミー最終日か。
次の日、無事卒業試験は合格。卒業試験課題は分身の術と極めて初歩的だった。まあそんな事はどうでも良い。
その日の夜。我が家では卒業祝いの宴会が開かれた。参加者は山中親子、奈良親子、秋道親子。
父親達は酒を飲み、思い出話で盛り上がる。母親達は料理を摘まみながら世間話に花を咲かせていた。
私の父親は昔、猪鹿蝶を纏め率いていたんだとか。故に我が家に集まるのは暗黙の了解らしい。
「「………」」
シカマルと私はいつものように縁側で囲碁を嗜む。
「うーん!やっぱレイのお母さんのアップルパイは美味しいわね!!あ、でも食べ過ぎには注意しないと…じゃあ、あと一口っ!!」
「おかわり!!」
イノとチョウジは美味しそうに母の料理を食べていた。
「レイには相変わらず敵わねェな…」
碁石を片付けながらシカマルがそう呟く。彼の手から白の碁石が溢れた。私はそれをすくい上げる。
「わりぃ」
「いいや」
彼の目の前に手に持った碁石を置く。
「おい…まだ打つのかよ」
「負けっぱなしで良いのか?」
「ったく…めんどくせー…」
シカマルは顔をしかめて頭をかいた。
口ではああ言っているが、何だかんだ言いつつも一局付き合ってくれる。そういう彼の優しさを私は知っている。
宴もたけなわと言った頃、私達は父親達に呼ばれた。四人で顔を見合わせ首をかしげる。
「おめェらにこれを託そうと思ってな!」
父がそう言って、イノとシカマルとチョウジに銀のピアス、私には金のピアスを渡した。
「これは俺らが着けていた、絆の証みてェなもんだ」
「けどなんでレイだけ金なの?」
「それはだな、レイの父キオは俺達、猪鹿蝶のまとめ役だったからだ」
イノの疑問にイノイチさんが答える。「本当だったのか」と正直驚いた。
「なるほどねー!レイ!!しっかり頼むわよ?」
「レイなら大丈夫だって」
「この中で一番頼りになるしよ」
「それもそうね」
三人に代わる代わる肩を叩かれる。喉に引っかかった何かを飲み込んだ。
私にそんな大役が務まるのか。このピアスを付ける資格はあるのか。そもそも猪鹿蝶に私は必要なのか。
金のピアスを握りしめた。
「おめェらしくねェな、んな面は」
はっとして顔を上げる。隣にはいつの間にか父が立っていた。見上げたその横顔は何を考えているのか分からない。いつもそうだった。
「レイ…年下だって年上より優れているこたァある。それにだ、イノやチョウジの暴走を止められんのはおめェだけだ。シカマルに適切なサポートをできんのもおめェだけだ。んなにスゲーのに不服か?」
ちらりと視線を寄越したその瞳に捕らえられる。
全く、父親とは恐ろしい物だ。「ありがとう」と呟いた言葉は背を向けた父に届いただろうか。
私は両耳にピアスを身につけて宴会の輪に戻った。
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