準備期間
パチリ。木と木の打つ音が奈良家の縁側に響いた。パチリ。今度は私が駒を置いた。
先日アスマ先生からシカマルが将棋教わったそうだ。そのため力試しがしたいらしく私にも勧めて来た。
奈良家でルールを確認して一局打ったが惨敗し、ただ今二局目。
「王手」
パチリ。やや強めに響いた音と共にシカマルの声が響いた。盤を挟んで向かい側。普段なら悩ましげに頭を抱えている彼が今日は打って変わって生き生きとしている。
悔しさを胸に押し込め、降参の意味を込めて頭を下げた。
「終盤のお前の桂馬の動き、一瞬ヒヤッとさせられたぜ」
「負けたけどな」
「十分、アスマより全然つえーよ」
駒を仕舞い終わった時、ニヤリと口角をつり上げる。嫌な予感がした。
「よし、もっかいやるか」
「……疲れた…」
「俺はいつも付き合ってやってんだろ」
「…………」
次の日、任務後アスマ先生から告げられたのは衝撃的な物だった。何でも“中忍試験”とやらに私達を推薦したらしい。
それを聞いた第10班の反応は様々で、イノは「サスケくんに久し振りに会える!」と喜んでいたし、シカマルは「めんどくせー…」とめんどくさがっていたし、チョウジはこの後行く焼肉屋にしか頭がなかった。
私はというと如何せん実感が湧かない状態のまま。昨日の将棋の疲れで頭が可笑しくなったのかと思ったくらいだ。
「レイ」
そもそも、まだ下忍になって一年も経っていない。そんなにも簡単に受けてしまって良いのか。
「おい、レイー」
それとも何かあるのだろうか、その“中忍試験”に。木の葉の人員不足かとも考えたが現在人員は十分に足りているはず。
「おーい…ダメだこりゃ」
いや、待て。人員が必要となるならば…もしや近々戦を起こす気か?だが…
「レイ、焼肉なくなっちまうぜ?」
思考を練っていると隣から声がしているのにやっと気付いた。
「あ、あぁ悪い…」
「ったくおめーの悪い癖だよな…」
溜息を吐きつつ、シカマルが肩を竦めた。
夕方、私は母さんのお使いに出かけていた。遠くでカラスが鳴くのを聞きつつ、両腕で抱えている紙袋を持ち直す。
ふと住宅地には似つかわしくない殺気を感じた。別段、鋭いわけでもないが警戒するに越した事はない。
こんな時に…と少々不満が出るが、この荷物を捨てる気は微塵にもない。理由は明白。母さんが怖いからだ。普段は温厚で優しい母さんだが、どんな理由であろうとも食品を無駄にすると飯抜きにされる。
次の瞬間、背後から気配を感じ、直ぐに振り返り際に大刀を抜き、襲いかかるクナイを防ぐ。
カキンッ――
前を見ると雨隠れの忍びがいた。どうやらは犯人はアイツの様だ。
ジャリッと足をずらす音が響く。上空で烏が鳴いた。
私は大刀を背中の鞘に収め空を仰ぎ見る。見れば夕焼けで赤く染まった空と黒い姿。普通の青空も好きだか夕方のこんな空も嫌いではない。
敵は私が刀を収めた瞬間、忍び刀で斬りかかってきた。
再び夕焼けの中帰路を辿り始める。重い荷物を抱え直し背後で脛を抱えている雨隠れの忍に一言。
「慣れない武器で挑む必要はないと思います」
「うっ…」
言葉に詰まった雨隠れの忍…否イルカ先生を一瞥してまた前に向き直る。おそらく中忍試験の予備試験…ってところだろう。
シカマル達は無事切り抜けられたのだろうかと思いを馳せた。