進化した姿と名前



落ちていく子供たちを何とかして助けようとデジモン達は必死にもがく。
テントモン、ピヨモン、パタモンの様に飛ぶ手段があるデジモンは空中でパートナーの手を取り羽ばたくが、大きくなったとしてもさすがに子供の体重を支えるのは無理だったようで他のデジモン同様落下してしまう。
パルモンはツタを崖に伸ばすものの、伸ばした先が悪くそこも崩れてしまう。
最初に着水したのは丈とゴマモンだった。

「マーチングフィッシーズ!!」

ゴマモンがそう叫ぶとどこからともなく、次々とカラフルな魚が集まって来て水面を密集して泳ぎ、小さな島を築き上げた。その魚の島に次々と落下していく子供たち。軽い衝撃はあったものの溺れた人や怪我をした者は一人もいなかった。

「た、助かったぁ…」
「おい!アレ!!」

安心していた太一だったがヤマトの言葉で上を向く。他の子供たちもつられて上を見上げると、先ほど戦ったクワガーモンが崖もろとも川に落下してくるのが見えた。あれに巻き込まれたら今度こそ命はないだろう。

「いそげぇえええ!」

ゴマモンの掛け声に魚たちは泳ぐ速度を上げた。かわせたかと思ったが今度はクワガーモンや崖が着水した時に起こる大波が子供たちを襲う。大波に上手くのりながら魚たちは更に加速していった。

ルルは魚にしがみ付きながら後ろを盗み見ると力尽きたクワガーモンが川に沈んでいくのが見えた。ああなっていたのは自分たちだったかもしれないと思うと恐ろしくなる。ルルは自然の摂理を目の当たりにし、唇を噛み締め前に向き直る事しかできなかった。


しばらく波に乗っていると水面がようやく落ち着き、魚の上から地上に戻れた頃には皆疲れ切っていた。

「やっと本当に助かったみたいだな…」

そう言ったヤマトの言葉に皆安心の溜息を吐いた。
吹雪に見舞われ、知らない土地に来たかと思えばよく分からない生物に襲われ、仕舞には荒波にもまれる始末。子供たちにとって久しぶりの休息だった。

「何だったんだ、さっきの魚は…」
「あれはね、マーチングフィシーズさぁ!!」

ぼやいた丈にゴマモンが得意げに答える。

「えぇ…?」
「オイラ、魚を自由に操ることが出来るんだ!」
「そうか!お前のお陰だったのか!ありがとうプカモン…じゃ、なくて…えっと、その…」

丈が言いよどんでしまうのも無理はない。さっき名前を教えてもらった時とは声も姿も変わってしまっている。

「ゴマモンだよ」
「ゴマモン…?」

ニコニコと満面の笑みを浮かべるゴマモンに丈は戸惑うばかり。タケルも変わってしまったパートナーに問いかける。

「どうなっちゃったの?トコモンは」
「今はパタモンだよ」

純粋なタケルの質問にパタモンも純粋に答える。タケルの質問に回答したのはアグモンだった。

「ボクたち、進化したんだ」
「進化?なんだ、進化って」
「普通はある生物の種全体がより高度な種に変化することですけど…」

太一の疑問に物知りな光子郎が答えた。すると光子郎の隣にいたテントモンが手を上げた。

「そうですがな!その進化!ワイはモチモンからテントモンに」
「アタシはピョコモンからピヨモンに」
「オレはツノモンからガブモンに」
「アタシはタネモンからパルモンに」
「オレはワニャモンからレオルモンに」
「そしてボクはコロモンからアグモンになったんだ」

それぞれのパートナーに自分の名前を改めて告げるデジモン達。子供たちは皆納得がいっていないのか、不思議そうにしていた。

「ふーん…とにかく前より強くなったみたいだな!その…進化してもデジタルモンスターなのか?」
「そーだよ、太一と会えてよかったよ」
「んぁ?何で?」
「ボクは自分だけだと進化できなかったんだ。きっと太一と会えたおかげで進化出来たんだよ」

アグモンと太一のやり取りを他の子供たちも静かに聞いて見るものの、謎は深まるばかり。太一も分かっているのか、理解するのを放棄したのか定かではないが「ふーん…」と軽く答えた。

ルルは何となく理解したのか、ワニャモンだったレオルモンを抱き上げて問う。

「何で口調変わったの?」
「ルルはさっきからそればっかだな!」

レオルモンはニシシと笑って見せるがルルの求めた答えになってはいない。
不満そうな表情を浮かべたが答えてくれそうにないので諦めることにした。おそらく理屈じゃないのだろう。

「それよりこの抱き方嫌だ」

回転するようにして手からすり抜けるとレオルモンはルルの着ているパーカーのフード部分にスルリと入り込んだ。当然後ろに引っ張られる事となりルルはよろめく。

「ちょ、重いって」
「ここがいいんだ!」
「むりむり…」
「じゃあ肩!」
「乗れるわけ…」

子供であるルルの肩は広いと言えるほどの厚みはなく、むしろ薄っぺらい。無理だと言いかけたがレオルモンは器用にやってのけた。これには黙るしかない。

「オレにかかったらこんな事朝飯前だ!」

得意げに威張るレオルモンにやれやれと苦笑が漏れる。

「しょうがないなあ」

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