卒業式も終わり、春休みが始まった。
そして明日から新入生の入寮が始まる。そのため今日は年度末大掃除。
「部屋ごとの掃除が終わったら私に声をかけて下さい!私の検閲をクリアした部屋から次の掃除場所を指示します!通いの人たちは一年マネと一緒に室内練習場の掃除をして下さい!」
「「はい!!」」
食堂のホワイトボード前に立つ二年マネさんがキビキビと指示を出す。いつも以上に生き生きしていると思うのは気のせいだろうか。
「えーちなみに!検閲で三回引っかかった部屋の人達には罰として一ヶ月のトイレ掃除をやってもらいます!さらに!検閲で汚物が発見された場合!全力で捨てます!!!」
二年の先輩達が一気に顔を青くした。一年は“汚物”という単語に首をかしげる。
「汚物について二年生が丁寧に教えてくれるからちゃんと聞く事!全力で探しますので覚悟しとくように!以上!」
パンと彼女が手を打ったと同時に、全速力で二年生は食堂から飛び出して行った。その後を一年生が慌てて追っていく。
先輩マネさんは「ふっふっふ」と不気味な笑いを漏らしていた。貴子が不思議そうに私を見るので首をすくめて見せる。
「汚物って何ですか?」
「エロ本の類よ」
スパンと答える先輩に対し、聞いた貴子が頬を染めた。いやいやいや、純情過ぎるでしょ。可愛いけど。
先輩がそんな貴子を放っておいてくれるはずもない。
「ちょっと!貴子!免疫なさ過ぎじゃない?!」
「す、すみません…」
「ただ単語言っただけじゃない!別に変な事言ってないわよ?!」
「うぅ…」
「初々しいけどねえ、健全な男子高校生はほとんど持ってるからね?」
「なら捨てなくても良いのでは…」
顔が真っ赤になっている貴子をもう少しだけ見ていたかったが、これ以上は可哀想だ。助け舟として軽く話題を逸らそうと横槍を入れる。
すると先輩は楽しそうだった表情から一変、真剣な表情で私に詰め寄って来た。
「#name4#…これでも私は去年より軽くしたのよ」
「その去年はどんな罰だったんですか?」
そう聞いた途端、先輩マネさんがゴクリと唾を鳴らした。
「……部員全員の前で朗読」
…何をとは聞かない、聞かなくても分かる。
女の私でも背筋が寒くなった。なんだその拷問は。
ちなみにその発案者は三年マネさん。あの外見とは裏腹にエゲツない事を考えつくものだ。
だから去年、それを経験した二年生が顔を青ざめさせていたのかと合点がいった。
「さっ!二人は通いの人たち連れて室内練習場の掃除行ってらっしゃい!終わったら教えてね!」
「「はい…」」
これを来年は私と貴子で仕切るのかと思うと、室内練習場までの道のりが遠く感じられた。