マネージャーはお母さん

3月14日。その日は朝から野球部一年の様子が可笑しかった。一ヶ月前の二年生みたいだ。

よそよそしく何処かぎこちない。それでいて妙な気を使ってくる。

そんな朝練が終わり、貴子と学校に向かう道中。

「皆んなどうしたのかしら」
「変だよね」
「私、何か気に触る事しちゃったのかも…」
「…そういうんじゃないと思うけど」
「眞白、何か知ってるの?」
「…いや…もう少し様子を見ようよ」
「そうね」

眉をひそめる貴子は絵になる。いや、そうじゃなくて。

ホワイトデーだから、そう一言で片付けるには多少無理がある。この間の買い物はおそらくお返しを選びに行っていたのだろうと推測できたが、こういった状況は考えていなかった。

何も買えなかった、あるいは買ったけど渡しづらい、もしくは貴子の言うように知らぬうちに何かしてしまったのか。

学校に着くとその傾向は顕著に現れた。いつもは休み時間のたびにちょっかいをかけて来る小湊君が増子君と共にどこかへ行ってしまうし、毎日一回は必ず何かを借りに来る伊佐敷君も現れず。

「どうしたんだろう…皆んな」
「休み時間の度にどっか行ってるよね」

昼休み、貴子とご飯を食べながら会議開始。

「今日、伊佐敷君が一回も借りに来てないんだけど…」
「クラスでも今日一度も居眠りしてないわ…」
「え、明日槍でも降るの?」
「おかしいよね…」

二人で首を傾げていても仕方ない。ご飯が食べ終わり、教室に戻ろうと渡り廊下を歩いていると自販機の前で野球部の一年生が固まっていた。君たちは本当に固まるのが好きだな。

貴子と顔を見合わせて建物の陰に隠れる。

「お前忘れ物多すぎだろ…」
「しょーがねぇだろ!忘れちまったんだから!」
「いつも#name4#と藤原が全部フォローしてんのかと思うと…」
「今日はたまたま多かっただっつの!居眠りもしてねーし!」
「毎度寝そうになったら携帯鳴らしてんの俺だからな?」
「俺があげた眠気覚ましのアメのおかげじゃね?」
「へーへー!ありがとよ!ケッ」
「礼を言う態度じゃねぇぞ」

「増子は毎度何でこっちのクラスくんだよ」
「お腹の音を聞かれると誰かさんが直ぐ世話やきにくるんだから仕方ないじゃん」
「うがっ…鳴るもんは仕方ないだろ」
「俺のパン食っといて何言ってんだ!」
「あげなきゃいいのに」

「シロが近くにいる気がする…」
「哲…お前重症だな…」
「誰だこいつに#name4#接近禁止命令だしたの」
「いや、お前だろ」

聞いていると何となく流れを察した。どうやら彼らはホワイトデーのお返しに“マネージャーに迷惑をかけない”ようにしてくれているのだろう。なんて可愛らしいの。発想が小学生レベルだけど。

再び貴子と目を合わせる。静かにその場を離れてから二人同時に吹き出してしまった。

「そう言う事だったのね!あーおかしい!」
「まあ今日は1日好意に甘んじておこうか」
「ええ、そうしましょ」