『一A!轟!攻略と妨害を一度に!こいつはシヴィーー!!!スゲエな!一抜けだ!!アレだな、もうなんか、ズリィな!!』
『合理的かつ戦略的行動だ』
『流石は推薦入学者!初めて戦ったロボ・インフェルノを全く寄せ付けないエリートっぷりだァアアア!!!』
『まあ……もう一人は推薦入学者じゃないけどな』
『ってオイオイオイ!マジかよ!一A!遊砂!いつの間に轟に追いついたんだ?!』
画面に映る轟の背後から追いかけて来るさらさの姿が映し出される。
『見てなかったのか』
『轟の派手な氷結にすっかり目を奪われてたぜ!解説よろしくゥ!』
『………仮想ヴィランの目の部分だけを分解して暴走させたんだよ、以上だ』
『予想通りの雑な解説センキュー!!!』
相澤の言う通り、さらさは轟が大衆の目を引き付けている間にロボットの大群に飛び込み目の部分を分解し、その隙に走り抜けて来たのだ。お陰でロボットは暴走し始め、後続の良い足止めとなっていた。
轟、さらさに続いて第一関門を突破したのはロボットの上を飛び越えて行く爆豪、続いて常闇と瀬呂。
後続はA組の面々が目立つ活躍を繰り広げ、次々とロボットを攻略して行く。その頃先頭は第二関門に到着していた。
『オイオイ!第一関門チョロいってよ!!んじゃ第二関門はどうさ?!……落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーーーール!!!』
目の前に広がるのは断崖絶壁、そして一本のロープが渡された小さな足場の数々。いわゆる綱渡りが大量に施された一帯となっていた。
轟が氷の個性でロープを凍らせつつ難なく渡って行く。しかしさらさはここで足を止めた。
後続を断つために渡ったロープを分解すべきか、もしくは足場を分解しその砂で渡って行くか、ここら一帯を全て分解し砂地に変えてしまうか。
思案していると爆風がさらさの横を通り抜けた。
「ボサッと突っ立ってんじゃねェ居眠り女!!!クソ邪魔なんだよ!!!!」
爆豪は暴言と共に上空へ上がる。あっという間にさらさを追い抜くと物凄い形相と速さで轟を追走し始めた。
『一A爆豪勝己が二位の遊砂を一気に抜き去ったーー!一瞬の油断がアダとなったか?!遊砂も慌てて追いかける!依然として一位は一年A組轟だ!』
さらさは近場の足場を分解し砂で移動して行く。ただし先ほどのようなトップスピードではない。
理由は爆豪の個性を警戒したため。さらさの個性上、爆豪の爆破は分解できない。しかも彼の爆風はさらさの分解物質を吹き飛ばしてしまい操作性を失いやすくなる。つまり相性最悪なのだ。
『なんか砂で移動してんの見るとアレだな、あの忍者漫画の“砂漠の我『言うな、色んなところに迷惑掛かるだろうが』』
そうこうしている内に先頭を独走中の轟は次の関門へとたどり着いた。
『さあ!早くも最終関門!かくしてその実態は……一面地雷原!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!目と足酷使しろ!!ちなみに地雷は競技用で威力は大したことねーが……音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!!!』
『人によるだろ』
爆発ターボで第三関門を余裕で進んで行く爆豪に続いて到着したさらさは少し迷ってから慎重に地雷原に足を踏み入れた。進行方向の地面を地雷ごと分解してしまえば簡単な話だがそれでは後続に道を作ってしまう。それを考慮した上での結論だ。
『ここで先頭が変わったーー!!!喜べマスメディア!お前ら好みの展開だァアアア!!!!』
前方では爆豪が轟に追いつき先頭争いを繰り広げ始めた。妨害をし合う彼らは着々と準備を進める一人の少年に時間を与えてしまっていることに後々気づく事となる。
ドォオオオンーーーーー
遥か後方から大きな爆発音が聞こえたかと思うとその爆風に乗って緑色の何かが先頭へと飛んで行くのが見えた。動体視力の良いさらさはいち早く現状を把握し後続を構う事なく分解しながら突っ張り始める。
先頭に躍り出た緑谷はそのままトップをキープし一位でゴールを通過した。
『序盤の展開からこの結末を誰が予想できた?!?!今一番にスタジアムにかえってきたその男……緑谷出久の存在を!』
二位轟、三位爆豪。四位は少し後にゴールしたさらさ。
その後続々とスタジアムに生徒が帰って来るのを尻目にさらさはポケットに入れていた目薬を両目に刺した。四位という好成績にも関わらず、その表情はどこか悔しさが滲み出ている。
そんな様子を尾白は息を整えながら不思議そうに見ていた。
「凄いね遊砂さん、個性精密度測定で学年一位だなんて」
「………一位?」
「さっき相澤先生が言ってたよ」
「……じゃあこの後寝てても許されるかな?」
「いやそれとコレとは関係ないんじゃないかな…」
いつだったか、尾白は当時の会話を思い出し再び首を傾げた。普段、授業の演習などで順位が付いてもさして気にしないさらさ。
「(あの遊砂さんが順位にこだわるなんて……よっぽど体育祭に力入れてんだな…そういや遊砂さんって相手構わず無自覚で喧嘩ふっかけるけど…そういう負けん気が出てんのかな)」
尾白が脳内でさらさの分析をしていると、当の彼女のポケットから何かがこぼれ落ちた。しかし本人は気づいた様子もなくその場から離れてしまい、尾白は慌てて拾い上げる。それは手触りの良いアイマスクだった。
「(やっぱ体育祭でも相変わらず居眠りする気満々なんだ……それでこそ遊砂さんだよ)」
やる気が見えたかと思えばこれである。やれやれとかぶりを振って尾白は遊砂の背に声をかけた。
「これ、落と……」
ピリッとした空気に思わず口を噤む。伸ばしかけた手は宙を彷徨った。近づいて分かったさらさの背から発せられる異様な空気。冷や汗が尾白の背中を伝っていく。
結局アイマスクはさらさの手に渡ることなく、尾白の手に握られたまま次の種目を迎えることとなった。
全員の順位が発表された後、第二種目はポイント制の騎馬戦という事が公表された。そのポイントは順位に応じて与えられるとのこと。
「それじゃこれより15分!チーム決めの交渉スタートよ!」
ミッドナイトの掛け声を受けていち早く行動に出た者たちがいた。それはーーー
「遊砂」
「居眠り女!ツラ貸せや!」
「…………」
轟と爆豪だ。二人は開始の合図と同時に一直線でさらさの元へやって来た。さらさはと言うとなんだコイツらとでも言った具合にしれっとした表情を浮かべている。
「てめーはすっこんでろクソが!」
「それは無理だ、俺は遊砂に話がある」
「あ゛ァァ?!?!」
周りにいた者たちは一斉に10歩ほど後ずさった。
「さらさちゃんモテモテだね!」
「本人はいたって興味なさそーだけど…」
葉隠と耳郎が遠巻きにそう囁き合った。轟と爆豪はどちらも一歩も引かない。と、その時。
「……2位3位と組むつもりはない」
ポツリとさらさが呟いた。ある意味宣戦布告とも取れるその一言に爆豪がキレないはずもない。
「上等だこの居眠り女ァァ!!!!ボッコボコに叩き潰してやっからな!あん時の借りも返してやっからせいぜい首洗って待っとけや!クソが!」
ちなみに爆豪の言う“あん時”というのはもちろん登校初日の件である。
「さっすがさらさちゃん!」
「まあ……あーなるよな……」
再び葉隠と耳郎はそう囁き合った。