意味もなく空を見上げては

title by spiritus




 蒼い炎は揺らめいて消えた。全てを焦がすような強大な炎だったのに、消えてしまえばあっけないものだ。
 僕たちは神の眠る塔を後にし、言葉少なにそれぞれのあるべき場所へと帰っていく。
 僕はもちろん、グレイル傭兵団と共に、クリミア王国へ。

「……どうする? アイク」

 帰り道を往く途中、僕は団長に尋ねる。他には誰も居ない夜だ。
 アイクは黙っていた。彼が口を開くのをじっと待った。

「どこへ行きたい? レイシ」

 ずっと鎮められてきた悪しき神も今はいない。もうクリミア王国が他国に侵されることはないだろう。
 だから僕たちは、もう自由だった。ずっと故郷に恩返しをしてきて、グレイル団長が亡くなった後も走ってきて、好い加減好きなように生きてもいい、と言われているような気がしていた。

「僕が決めていいの? ……そうだな」

 僕は空を仰ぐ。月が丸い。

「地平線の果てなんて、どうかな」

 僕たちが見たことがある世界なんてたった一部だ。摘まめてしまうくらいの。
 海の向こうにはもっと知らない景色が広がっているだろうか? それはわくわくするな。

「いい考えだな」
「でもアイク、傭兵団は、どうするの?」
「……そうだな」

 アイクは少し考えた後言う。

「もう世界は平和だ。これから先、傭兵団として仕事があるのはごく僅かだろう。いや、傭兵団の仕事なんて、本当はない方がいい」
「そうだね」
「皆、これから先は自由に生きられるよう、少し話す必要があるか」

 僕もグレイル団長が居た頃からこの傭兵団に居たわけだから、人生の半分近くはもう身を捧げている。アイクなんて団長の息子だから尚更だ。
 今更他の生き方を知らない、なんて誰かは言うかもしれないけど。

「他の生き方の幸せも、見てみたいよね」

 地平線。その先に何があるのか見てみたい。僕の原動力はたったそれだけ。
 多分アイクも同じだろう。僕は、アイクがいるならどこまでだって行ける。

「ああ」
「寂しくなったら、いつでも帰ってこようね」

 皆に会いたくなった時。皆と一緒に居た時が一番幸せだったと気づけた時。
 きっと皆、再び会ってくれるだろう。僕はそう信じている。