ホテルのオートロックのドアが閉まるとほぼ同時にゆらの口を塞いだ。見開かれる目と視線があったかと思うと恥ずかしさからなのかすぐに閉じられてしまったゆらの目。顎も持ち上げてゆらにとっては苦しい体勢だろうけど、その体勢で何度もゆらの舌を絡めとり、舌と舌をあわせて、混じりあった唾液がゆらの顎を伝い落ちるまでそのキスは止まらなかった。
「っ、は…ち、か、」
足に力が入らなくなったゆらを支えるとゆらはぎゅっと俺の服に掴まる。ぎゅっと、とは言っても足同様に力が入り切ってないからわずかな力だけど。そんなゆらを見下ろしながら髪を梳く。心地好いのか目を細めるゆらの目にはカラコンを入れたままの俺がいる。控え室でのゆらの反応を見てそのまま来た。千秋楽の直後にあんなに見つめられたら、俺の言葉で揺れたゆらの目を見たら、衝動に従うしかない。
「言ったでしょ、スイッチ入るよって」
ゆらを抱き上げ、ベッドへ。
ベッドにゆらを座らせて屈んでまた深く舌を絡ませる。ゆらがベッドに倒れないように後頭部と背中を支える。ゆらはそんな俺の腕に縋るように手を添える。漏れ出す吐息と甘い声に湿った舌を絡ませる音。後頭部に回した手でそっと首筋を撫でるとゆらの肩が震える。
ゆらの肌にそうやって焦らすように触れながらゆっくりと服を脱がしていく。露わになっていくゆらの肢体に喉が鳴りそうになる。今日はいつも以上にゆらのこと乱したいと思った俺はいつもとは違うスイッチも入っているのかもしれない。
「ゆら、腰少し浮かせて。下も脱がしたい」
「っ、……」
とろんとした目で俺を見た後小さく頷いて、俺に掴まりながら腰を浮かすゆら。ゆらの力が抜けないうちにすっと下着ごと服も脱がしてそのまま床に落とした。
身に纏っているものを全て脱がしたゆらを改めてじっと見つめる。何度も抱いたはずなのに見飽きることなんてない、綺麗な肢体。恥ずかしそうに俯いているゆらも可愛い。目の前にいるゆらを、今日はどう抱こうか。
「ゆらもスイッチ入れよ」
「あっ、…ん、はぁっ、ちか、」
啄ばむキスをして、唇を別の場所にも落としていく。熱くなり始めたゆらの肢体は俺の熱と混じってまた熱を上げる。甘い声が上から降り注がれる。しゃがみながらゆらの肢体を味わっていく。浮かび上がった鎖骨も、形のいい胸も、細い腰も全部、俺のもの。
「っん…ふ、くっ…!」
「声我慢しないで」
下から胸を持ち上げるように揉みながら硬くなっていくその中心を指先でぐっと押し込む。指先を離すとまた硬さを増して出てくる。それを何度も繰り返しながら時々口に含んで唾液でそこを湿らす。肩に置かれたゆらの手が爪を立てるように力が入る。乱れて、ゆら。そんな気持ちを込めながら上半身を味わう。
「や、じんじんす、るっ」
「嫌じゃないでしょ?」
「ひ、あ!あっ、ひう…!」
「抱く度にどんどん敏感になってるの分かってるでしょ?」
「あ、あっ、ち…かぁ」
もうこれ以上硬くならないほどの硬さになったそれを少し強めに摘まんだり歯で挟んで引っ張ってみる。甘くも少し切なさの混じった嬌声が響いてたまらない。ほらね、と伝えるように胸に顔を近づけたままゆらを見上げると涙が零れ落ちそうになっている。顔は真っ赤だ。その顔を見て満足した俺は視線を今度は胸の下に向ける。さっきから動き始めている足。足と足を擦りあわせるように動いているそれはいつもよりいやらしく感じてそっと胸と胸の間からおへそへ舌を這わせながらそこへと向かわされた。
「っ、だ、だめ、ちかっ」
ゆらの手が俺の肩を押すけどやめるつもりはない。それに、ゆらだって触れてほしいと思ってるでしょ?
床に膝をついて、腰を折り曲げながらゆらの両足を手で広げてそこへと舌を伸ばす。まだ触れていなかったそこはもうすでに濡れていてわずかに水音を立てた。
「はず、かしっ…や、」
「やめないよ」
「あぅ、…っ、ひあ、あ、あっ」
足を閉じられないように腕で固定して、舌でそこを舐め上げる。じわじわと奥から出てくる液。頃合いを見て舌を中へとねじ込んだ。ゆらは力が抜けたのか俺に被さるような体勢になる。ゆらの中から出てくる液を飲み下しながら鼻先で外の芽も刺激する。首筋のあたりから聞こえてくるゆらの声は甘さを増して心がどんどん昂っていく。
ゆらの弱いとこを刺激し続けると中が小さく痙攣し始めて背中にあったゆらの手に瞬間的に力が込められた後、すぐに力が抜けた。
「ゆら、軽くイったみたいだね」
「はぁ…ん、は……」
口元を拭い、ゆらを支えながら俺に被さっていたゆらの上半身を起こした。口元からは唾液、目尻からは涙が零れて、扇情的だ。そんなゆらと視線をあわせていると不意にゆらがぽつりと言葉を零した。
「ガ、ウェイ…ン、」
俺の目元にゆっくりと伸びてくるゆらの指先。ああ、スイッチが入ったみたいだね、ゆらも。
でも、それはちょっと煽りすぎだったかもしれないよ。
「姫」
「っ、」
目元に触れたゆらの指先は熱い。
「あなたは俺に火を点けてしまった」
茅ヶ崎がいたら怒られそうだがここに生憎茅ヶ崎はいない。だから、存分に身に沁みついたガウェインに今はなろう。ゆらも、煽った責任ちゃんととってね。
「姫、愛くるしい表情をもっと俺に見せてはくれませんか」
ゆらの手をとり、甲にキスを。
そして着ていた服を脱ぎ捨て、ベッドに腰かけるゆらの後ろに回り込みそっと抱きしめた。目の前には大きめの鏡。それにゆらはやっと気づいたようで鏡越しに視線があう。
「姫、見えますか?姫の熱くなった綺麗な肢体が」
「っやだ、」
「綺麗なのにこんなにも扇情的な姫の肢体を他の誰にも見せたくはない」
「あ、あ、」
「姫と繋がらせてください」
ゆらの腰を浮かせ、俺のを濡れたそこに擦りつけ湿らせていく。十分に湿った後はゆっくりとその入口へと侵入していく。その様子がはっきりと目の前の鏡に映りこんでいる。ゆらは恥ずかしさのあまり手で顔を覆ってしまっているけど、それももうすぐ出来なくなるよ。
ゆらの中に全てを入れ込み、なじむまで動かない。けれどゆらの中はひくひくと蠢いて欲しがっている。息を吐きだして呼吸を整えているゆらの手を顔から離し、鏡を見るように囁く。
「姫の中、とても熱くて気持ちがいいです」
「っあ、や…」
「しっかりと見てください、姫。俺たちの繋がっているここを」
「ひあ!ふぅ、あっ…!」
「首をのけ反られるほど気持ちがいいですか?」
腰を緩く動かしながら芽を摘むと俺の胸に寄りかかるようにゆらの背中が凭れてきた。胸の先も刺激しながら揺さぶり方を徐々に大きくしていくと声も肢体もより一層甘く跳ねてたまらない。隙を見て耳や肩に甘噛みをすればそれだけできつく絞めつけられる。けどまだまだ、イかせてはあげない。もっと蕩けさせて、乱したい。
「姫、名前を呼んでください」
「んあっ、ひ、…ち、か、」
「ガウェインですよ、姫」
「や、やだぁ…ちか、がいいっ…ちかが、いいの、」
首を何度も横に振りながら「ちか」とそう呼ぶゆら。ああ、困った姫だ。自分から煽っておいてまた更に煽り返すなんて。
「あっ…」
繋がっていたそれを抜き向きあうようにゆらを動かした。
「物足りなそうな声出してそんなに俺が欲しい?」
ゆらの手をとり指の腹にキスをする。ゆらの爪は俺のカラコンと同じ色。
「この爪、俺の目にあわせてきたの?」
ゆらが見比べられるようにゆらの指先を目尻付近まで持っていくとゆらの顔はまた赤く染まって固まってしまっている。ああ、可愛い。ねぇ、ゆら。狙っても狙ってなくても今日は俺に食べられる運命だったのかもね。
「ゆら、もっと甘く俺の前でないて」
「ぅあ、ひっ、…あっあう、ああっ!」
向かいあったゆらの腰を引き寄せてまた繋がる。深く、深く、暗い海の中を潜るようにゆっくりと。
奥深くを擦り上げながらゆらの他の弱いとこも刺激する。その度にきゅうきゅうと絞めつけられて湿った息が漏れる。目の前で甘くなくゆらが可愛くて、でも乱れてるゆらは扇情的で。ゆらにはまっていくのが分かる。他人に深入りしないようにしてたのに、するりと心に入り込んできたゆら。ねぇ、手放す気なんてないってことちゃんと分かってる?ゆらが、俺をこんな風にしたんだよ。
「ゆら、はっ…」
「ちかっ、あっ、あ、…す、きっ」
「うん、俺も」
ゆらの指先を見せつけるように舐めて齧った。
「ゆら、一番甘くないて」
「んんっ、ふあ、…くっ、ひ、あ…あ、あっ、−−あああっ!」
*
「マゼンタ・テンプテーション、ね」
直訳するとマゼンタの誘惑。果たしてそれはゆらと俺、どっちにはたらいたのか。そんなことを思いながら腕の中で眠るゆらの額にキスをして眠りについた。