というのも、数日前からチームで仕事はせずに、各々仕事をしていて、それに不満を漏らしていたルーシィと、何があるかわからない新人のあたしたち。ちなみにこの期間にあたしは、ルーシィやウェンディとは仕事はした。珍しくナツもグレイも誘ってくることはなく、穏やかな仕事ができていた。
ギルドの全員が呼び出されたので、重大発表なんだろうけど。
『何かな何かな〜!』
「ギルド全員に関係あることなの?」
『まあみんないるし、そうじゃない?』
腕の中にいるティアもわくわくしている。
古参メンバーたちは何があるか分かってるみたいでそわそわ落ち着かない感じだし、毎年恒例とかなのかな。
いよいよ舞台の幕が開け、そこにはマスター、ギルダーツ、ミラ、エルザの四人が。
「妖精の尻尾古くからのしきたりにより、これより、S級魔導士昇格試験、出場者を発表する!」
おおお、これは、確かに一大イベントだし、魔導士からしたら憧れであるS級魔導士には選ばれたい。なるほど、だからみんなアピールしてたんだ。
「今年の試験会場は天狼島、我がギルドの聖地じゃ。各々の力、心、魂、ワシはこの一年見極めてきた。参加者は八名…」
ナツ、グレイ、ジュビア、エルフマン、カナ、フリード、レビィ、メスト
この八人の名前が呼ばれた。
選ばれた人は喜び、選ばれなかった人は落ち込んでいる。それでもお祭り騒ぎになるのはこのギルドのいいところだ。
「そっか、このメンバーに選ばれたいからみんな自分をアピールしてたのね」
『残念だったねルーシィ…』
「あたしぃ!?…て、アリスは選ばれなかったのね」
『ん?ああ、あたしは、』
「今回はこの中から合格者を一名だけとする。試験は一週間後、各自体調を整えておけい!」
ルーシィと話していたが、マスターの話の途中だったので、視線を舞台側に戻す。
「選ばれた八人のみんなは、準備期間の一週間以内にパートナーを一人決めてください」
「パートナー選択のルールは二つ。一つ、妖精の尻尾のメンバーであること。二つ、S級魔導士はパートナーにできない」
そりゃ妥当だ。S級魔導士をパートナーにしたら有利だし、昇格試験としては無意味になるし。
「試験内容の詳細は天狼島に着いてから発表するが、今回もエルザが貴様らの道を塞ぐ」
「今回は私もみんなの邪魔する係やりまーす」
やだミラ、いい笑顔して言ってることはキツイ。
魔神と言われたミラと、ギルド最強の女魔導士エルザを倒すなんてほぼ無理でしょ。
「もしかしてエルザやミラさんを倒さなきゃS級になれないわけ〜?」
「まあ、それなりに手は抜いてくれるらしいけど、」
『見極めるって感じだろうけど、厳しいよね〜』
そしてこの流れだと、ギルダーツもその一人みたい。ナツだけは喜んでいるけど。
「選出された八名とそのパートナーは一週間後にハルジオン港に集合じゃ。以上!…おっとそうじゃ、もう一つ、」
なんだなんだ?とさっきまでとはまた違ったざわざわした感じになる。
まだ何かあるのかな、て思ってたら呼ばれた名前。
「アリス!」
『へ、あたし?』
呼ばれた瞬間、みんなの視線が一気にこっちに集まる。え、あたし何もしてないよ。
とりあえず前にきて〜とミラにちょいちょい手招きされたので、ティアをおろして舞台の目の前まで行ったが、舞台に上がれと言われ渋々舞台に立つ。
何を言われるのかドキドキしていたら、口から出たのは予想だにしていないことだった。
「アリス、___主がS級魔導士であることを正式に発表する」
『え?』
そんなこと?て思っちゃった。
だってあたしは、前のギルドではここでいうS級魔導士だったし、普通に10年クエストも行ってたし。あたしS級魔導士だと思ってたんだけど、違った?
確かにここにきてからはS級の仕事じゃなくて、ウェンディと一緒とか、チームで行ったりして個人で行ってなかったけど…
あ、でもルーシィから聞いた話だと、ジュビアとガジルも幽鬼の支配者ではS級だったぽいから、やっぱギルド変わったらみんな一般の魔導士からスタートなのかな?
ポカーンとしたままのあたし。ギルド内はぶわああと騒いでいたり、ブーイングではないけどなんで!?の声が上がっている。
「何でアリスだけ!ずりい!!」
「静かにせい!」
ナツが一際大きな声でみんなが思ってるであろうことを口にした瞬間、マスターの鶴の一声。
「ごほんっ、元々アリスは前のギルドでS級の仕事をしていたり、10年クエストにも行っておった、そうじゃろ?」
『うん!』
「それに評議員が認めておる、よって特例で昇格試験はなしにした!」
えええ、そんな簡単に決めちゃっていいの?
みんなS級になりたいだろうし、あたしだけなんかせこいってか特別な感じみんな認めないと思うんだけど、
て、思ってたんだけど、、
「うおお!!まじか!!」
「あんな可愛い顔してやる仕事えげついな!!」
「10年クエストもだぞ!?こりゃあ妖精の尻尾自慢の魔導士だな!!」
「すげーな!!かっけえ!!」
「アリスってそんなに強かったの…」
耳がいいあたしが聞こうと思えば全部聞こえたけど、反対の言葉なんて一つも聞こえなくて、、
改めてなんていいギルドなんだろう、て思えた。
嬉しくて、にぱっと笑ったらもっとドッと湧いた。あたしが喜んだからみんなも喜んでくれたのかな、嬉しい。
「もしかして、アリスも邪魔する係…?」
誰かが呟いた声が聞こえてきた。
確かにS級魔導士なら邪魔する係っぽいけど、あたしは何も聞いてない。
「いや、アリスにはサポート面で着いてきてもらう」
『サポート?てか初耳なんだけど』
「うむ、詳細は後で話す。頼んだぞ」
『はーい』
というわけで、あたしも天狼島に行くメンバーの一人になった。
マスターの声で解散になり、各々動き始める。
エルザ以外のチームのメンバーで机を囲み、そこにジュビア、リサーナ、エルフマンもきた。
あたしはミラにもらったケーキを食べながら会話に参加する。
「意外ね、アンタたちみんな初挑戦なんて」
『たしかに〜、誰がS級になるかなあ』
初参加ってのが意外だし、このメンバーだとハードルも高くなりそう。
「そういえば、みんなもうパートナーって決まってるの?」
「オレはもちろんハッピーだ!」
まあここは想像通りだよね。
相棒って感じだし、戦闘だと不利だけど。
同じことを思ってたグレイもハッピーに告げる。
「アリス様にパートナーになってもらおうと思ってたのに、選べないなら、ジュビアはこの試験を辞退したい…」
『んー!あたしをパートナーにしようとしてくれてたんだ!』
ケーキを頬張りながらジュビアに答える。
申し訳ないことしたなあ、と思ったが、辞退してグレイのパートナーになりたいらしい。
さてさて、みんなのパートナーはどうなるのやら、と考えながらケーキを食べ続ける。
「悪ィがオレのパートナーは決まっている」
「久しぶりだね、みんな」
「ロキ!?」
はじめましてのロキってゆー人。
ルーシィとの会話を聞いている感じ星霊らしい。自分の魔力でゲートをくぐってくる、と言ってるし。どういう経緯か、元々妖精の尻尾の魔導士として所在していたらしく、背中にギルドマークもある。
グレイのパートナーは前から決まってたんだなあ、
て思いながら、またケーキを一口食べる。
んー!うまあ!
「・・・・・?」
「アリス、そんな顔して食べているとあたしも欲しくなるんだけど…」
『ルーシィさっき食べたでしょ、太るよ』
「うっ」
試験参加者発表前に食べているのは目撃している。このケーキ珍しいところので、一人一個だけなのだ。
しょぼんとしたルーシィがなんだかかわいそうだったから、
『しかたないなあ。…はい、あーん』
「!!!」
目をキラキラさせたルーシィはあたしが差し出したフォークにかぶりついた。
幸せそうでなにより。
ふと先ほどから視線を感じるので、そちらを向くと、グレイのパートナーのロキが。何かあるのかな?と首をかしげると、高速であたしの前まで移動して跪き、フォークを持っていない方の手を握ってきた。
「なんて美しい…」
『は?』
「またアンタは…」
なんだこいつ頭いかれてるのか、チャラいのか?女好きか?
ルーシィの反応を見る感じよくあることらしい。
「キミ、名前は、」
『アリス〜』
「僕はロキ、ルーシィと契約している獅子宮の星霊だよ、よろしく」
『よろしくねっ!』
まあチャラそうだけど、このギルドに悪い人はいないし、なんならルーシィの星霊だし。
にぱっと笑って握られたままの手を握り返すと、心臓あたりをぐっと掴み出した。
「る、ルーシィ、」
「なによ、いつもの挨拶は終わった?」
「いや、いつもとは違う。初めてなんだこの、言葉にできない気持ち…」
「なにそれも女の子落とす時に使った手口?」
「こんなこと言ったことないよ。あの子が、アリスが笑うと胸が痛いんだ」
「あの子笑顔すごーく可愛いからね、ロキも落ちたんじゃない〜?」
「…そっか、これが、恋に落ちるというものなんだね」
「え?…本気?」
あたしの手を握ったままご主人であるルーシィを呼び、ごにょごにょ話してる二人。
いつまで手を握られているのだろうか、て思ってたら繋いだままの手に気付いたグレイが引き剥がした。
「ったく、ロキのやついつまで触ってやがる」
『仲良いんだね〜』
「まあな」
『やっぱあれか、かっこいい者同士気が合うみたいな?』
「かっ!?」
類は友を呼ぶ、てやつかな。グレイもロキも顔面は間違いなくイケメンだし。なんて思ったことをそのまま口に出したら、グレイが顔を赤くして動揺した。
照れたのかな?て思ったらあたしのいつもの悪い性格が。
ニマニマしたあたしに気付いたのか、グレイが警戒するようにこちらを伺っている。
『グレイはスタイルもいいよね、服のセンスもあるし、脱がなければの話だけど』
「なっ、」
『魔法もキレイだし、あと垂れ目だけど男らしい目つきだし、女性相手だと優しいところも紳士だよね、それに』
もっともっと顔を赤くして照れていくグレイがおもしろくて、普段なら思ってても絶対言わないことをいっぱいこの際だから言わせてもらっていたら、後ろに気配を感じた。
「___アリス」
『んんん』
続けてもっと言おうと思っていた言葉は口から出ることはなかった。
後ろに来たナツに片手で口を塞がれる。塞がれたまま振り返ると、なんとも言えない顔をしたナツが。
『んん?』
「…聞きたくねえ」
何をだろうか。
頭にハテナを浮かべていると、口から手を離して両手で顔を挟まれおでこ同士くっつけにきた。
「グレイを褒める言葉なんて聞きたくねえよ」
『ナツ…』
ちょっと悲しそうな怒ってそうな顔と声色。
顔に添えられている手を離して、背中に腕を回し摩ると、ナツも背中に腕を回してギューーって強い力で抱きしめ返してくれた。
『ナツは仲間思いが一段とあるし、家族をすごく大事にしているし、キリッとしててツリ目なところもかっこいいし、あと笑顔も可愛いなって思うよ。あと、真っ直ぐなところが好き』
「ダァー!!そうじゃねえ!」
『ええ!?ナツも褒めて欲しかったんじゃないの!?』
…わからん。男心ってのが。
でもなんだかんだ、ナツも褒めてもらえたのが嬉しかったのか、元気になってそのままハッピーと特訓に出て行ってしまった。
「ふぅーん?あたしがいない間にナツがアリスをねえ…」
『ん?』
「アリスもナツに甘いわよね」
『そうだね、そうかもしれない』
同じ滅竜魔導士だからかな。否定はしない。
「てことだから、ライバルは多いわよ?」
「ナツとグレイか。…恋は障害があるほど燃え上がるんだよ」
「他にもいそうだけど、、ほんと、男って…」
残りのケーキも食べきった。
食べてる間にパートナーの話は済んでいて、ジュビアのパートナーはリサーナ、エルフマンのパートナーはエバになっていた。
そこからはパートナーと特訓したり、各々試験に向けて準備をすすめる。
ちなみにウェンディもメストのパートナーに選ばれたとかで、あたしに稽古をつけてほしいと頼んできた。もちろん即了承。
一週間の間にマスターにあたしの役割を確認した。
怪我をした人の治癒役だったり、誰が残っていて誰が脱落したかなどの簿記だったり。
あとは何事もなければ良いが、何かあれば瞬時に戦闘できるように、と。ほんと、無事に終わればいいけど。