出会いは突然に

『うそっ。ウェンディどこ行った…』
「アリスちゃんが買い物に夢中になってるからなの!」
『今日はシャルルがいないから一人じゃない!探そっ!』
「はいなの!」


クエストのついでに久しぶりに買い物しようとしていたのにあたしの一歩後ろにいたウェンディがいつの間にか消えた。
まあ、あたしが買い物に夢中になってたのが原因のような気がしないこともないけどね。

にしても探してもいない…。急いで探さないと泣いてるかもしれないし。泣き虫だしね。

鼻より耳が利くあたしは捜索とか苦手な方なんです!
ちょっと叫んでくれないかな。だったらすぐに見つけれるのにな。


「ウェンディいたの!」
『…そういやティアって飛べたね』
「何その最初から探しとけよ、みたいな目は!?」
『べっつにー。で、どこ?』


ティアは大きく溜め息をつくと羽を出して飛んでいった。
え、ちょっと、あたしも連れてけよこんにゃろ。

ビューンと飛んでいったティアを走って追いかけた。つもりだったんだけど、どこ行った…、これはまさかあたしが迷子になっちゃったパターンですか。
いやでもあたしは道わかるし、ティアもウェンディ連れてあたしの元に帰ってくるだろうし、それまでこの辺りで買い物しようかな。


『化猫の宿のみんなにお土産買っておこうかな』


店に入ろうとしたらあたしの胸元にポフッと音を立てて飛び込んできた猫。
それはさっきウェンディを探しに行ったティアだとすぐにわかったけど何々、何かあったの。


「ウェンディがナンパされてるの!」
『は?ナンパ?誰に』
「男数人!」

『…行くぞ』


潰してやる。
あたしの可愛い妹をナンパなんて許さない。

ティアはあたしの背中に回り羽を出してあたしをつかんで飛んだ。やっぱり歩くより楽だな。

あ、いたいた。たしかに数人の男に囲まれた状態で、どう振り切ればいいのかわからずあたふたしてるウェンディが。
ティアにおろしてもらうように頼んだら放り投げやがった。いや、鬼畜。


『よっ、と』
「あ、アリスさん!」
『いてて。ティア覚えとけよ。じゃなくて、あなたたち!あたしの可愛い妹に何してるの!』
「あ?いきなり現れて何だこいつ」
「でも可愛くねぇか〜」
「たしかに!」


き、キモイ!ニヤニヤニヤニヤ顔がキモイ!!
ウェンディなんて半泣きだし、可哀想に。でもあたしが来たから大丈夫だよ。
ウェンディの涙の分ぶっ飛ばさないとね。


『瞬殺!』

「あの、アリスさん…、手加減って言葉知ってますか?」
『ん?知ってるよ。だから手加減したよ?』
「、5秒もたってないですよね…?」
『相手が弱かったの!』


ウェンディが可哀想な目で男共をみた。そんな目しないでよ。何かあたしが悪いみたいじゃない。

あれ、そういやティアどこ。あたしを放り投げてからどこにいてるのよ。


「アリスちゃーん!ぐえっ」
『よくも放り投げてくれたな!足がじーんってなったじゃん!』
「ギブなの!」


尻尾を持って振り回したらすぐにダウンしたティア。
気絶してしまったし仕方なく腕に抱きかかえてウェンディと一緒に今度こそお土産を買うために店に向かった。











ちょっと買いすぎちゃったかな。

ウェンディの手にはお土産がたくさん山積みになっている。どれくらいかって言うとウェンディの顔が見えなくなるぐらい。あたしは身長が高いぶんギリギリ前は見える。

ウェンディは前が見えないのか顔を横から出している。あたしが持とうとしても持たせてくれない。


『大丈夫?』
「はい!早く行きましょう!」


先に列車に乗ったウェンディを追うように乗ろうとしたら人にぶつかった。手に持っていた荷物が少しだけ落ちた。
あちゃー、拾うのめんどくさいな、と思ってたら誰かが先に拾ってくれた。

ありがたい。


「ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
『あ、うん。こっちこそごめんね。あと拾ってくれてありがと』
「い、いえ。あたし急いでいるので失礼します!」


行っちゃった。キレイな金色の髪の毛だったな…。

て、あたしも列車に乗らなきゃ。ウェンディ発見したし、てか何でティアはウェンディの手伝いをしてるのよ。あたしを見捨てるな。


「あ!アリスさんの方が荷物多いから手伝ってあげて?」
「大丈夫なのウェンディ。アリスちゃんは丈夫なの!」

『死になさい』


やっと席について一息。疲れたわ〜。ウェンディはあたしより疲れてたらしくすでに寝ていた。

…これってあれじゃない?ウェンディの荷物もあたしが運ぶみたいな


「アリスちゃん荷物持つの、ティアはウェンディを運ぶの」


予想通りでびっくりはしなかった。あたしを殺す気あるな、こいつ。
まあギルドに戻ったらゆっくり休もう。ギルドで休ませてくれないなら本気で殺してやる。あたしの殺気に気付いたらしいティアは顔をばっと背けた。

くそう。
TOP