連合軍集結

昨日の列車に乗ってからのウェンディは記憶がないらしく、気が付いたらベッドで寝ていたことを疑問に思ったのか、私に聞きにきて、昨日のことを説明したら頭を何回も下げて謝った。気にしなくていいのに。

それよりティアどこ行った。いきなり出てこないかな。


「アリスちゃーん!」
『ティアってほんと、期待を裏切らないね』
「え?それより!六魔将軍を倒すために、他のギルドと連合軍を組むみたいなの!ティアとアリスちゃんが!」
『なんであたし…』
「マスターの頼みなの〜」
『はいはい、行きますよ。でも準備があるでしょ?いつ?』
「今からなの」


ティアがギルドの壁にめり込んだ。あたしは悪くない。
ティアは三日前からマスターに聞いており、あたしに伝えるように頼まれてたが忘れて今日になってしまったらしい。いや、報告面頼むわまじで。

マスターに告げてからギルドを後にしようとしたら、ウェンディがあたしの名前を呼びながら走ってきた。そういやさっき、何かマスターに頼んでたみたいだけど。


「アリスさん!私も行きます!妖精の尻尾のナツさんって人に会いたいんです!」
『大歓迎だよ!じゃあ二人と一匹でいこっか!』
「シャルルは〜?」
「危ないかもしれないからお留守番!さ、行きましょう!」


シャルルは何だかんだでウェンディ大好きだから、心配でついてくると思うな。
待ち合わせ場所の地図はもらったけど、歩くには少し距離が離れているけど、行けなくはない距離だ。そのため途中まではギルドのメンバーに魔導四輪で送ってもらい、無理なく歩ける距離からは歩くことにした。

あたしは歩こうとしていたのに、ウェンディは今回の任務が楽しみなのか何があるのかわからないけど、走り出したのであたしも早歩きで後を追う。てかウェンディはや。もう見えないし、道こっちであってるのかも不安になる。


「こっちなのー」


全然違う方にむかいかけてたじゃない、あたし。猫に案内されるとか、泣くわ。

しばらく森の中を走り続けると小さいお城みたいなのが見えた。可愛いな。
足を止めてその建物の外観に口を開けて感心しているあたしとは違い、ウェンディは足を止めず真っ先に開けられたドアから入って行ってしまった。
あたしも入るか、と止めた足を再び動かした瞬間、ウェンディが躓いてこけた。


「きゃあっ」
「……………」


中にはすでに違うギルドのメンバーが揃っていたのか、中々の人がいて、急にこけたウェンディにみんなの視線が移る。

あ、そっか。走ってた理由って、もう集合時間過ぎてたからなんだ。


「いたぁ…」
「……………」
「遅れてごめんなさい、化猫の宿から来ました、ウェンディです。よろしくお願いします」


え、なんか自己紹介しちゃってるよ。あたしは?でおくれた?
みんなウェンディが子供で女だからびっくりしている。今回の任務って確か闇ギルドの討伐だったよね、確かにウェンディみたいな子が来たらあたしでもびっくりするわ。

ふと足元に違和感。
ティアはあたしの腕の中にいるからあたしの足をつついてるのは多分、


「ちょっと、ウェンディ知らない?」
「シャルルもきたの!」
『ウェンディなら今あそこで転んだ』
「なんですって!?まったく、ほらあなたも行くわよ!」


シャルル行っちゃったよ。なんか話進めようとしてない?だったら早く行けって?むりむり。あたしあの視線あびたら緊張して死んじゃうから。


「それにしても…」
「この大がかりな作戦にこんなお子様一人をよこすなんて化猫の宿はどういうおつもりですの?」
「一人じゃないわよ。ケバいお姉さん」


これまたみんな驚いてる。そりゃあ猫がいるんだもんね。ちなみにあたしの腕にももう一匹猫がいるけど。
それに他のギルドには化猫の宿からは一人だけ来ると知らされていたぽい。それあたしだ。


「シャルル!ついてきたの?」
「当然よ、あなた一人じゃ不安でしょうがないもの。それに…」


ちらりとシャルルがこっちに目線を配った。まじで感謝シャルル様。絶対シャルルはあたしのために先に行ってくれたんだ!今ならみんなシャルルに気が入ってるから、あたしが行っても大丈夫。

ティアを抱きかかえたまま走って中に入った。


『うわっ!』
「ぎゅえっ!」
「はぁ、まったく」


あそこには絶対段差があるんだよ。異論は認めん。それじゃないとあたしもウェンディと同じ所で躓くわけないじゃない。

しかも、ぎゅえってティア酷いわ。シャルルは大きく溜息だし。
うわ、起きあがりたくない。恥ずかしい。


「アリスさん!私の面倒だけじゃなくてシャルルまで…」
「私はあなたみたいに迷惑はかけないわよ!」
『うん、大丈夫だから。それより恥ずかしいわ』


なんていつまでもこの体勢でいるわけにもいかず、ばっと勢いよく立ち上がって周りをみたら、やっぱり戦うんだし男の人が多かった。
ティアはあたしの腕の中ですでに戦闘できない状態だし。そんなにあたし重かったの。


『えっと、ウェンディと同じく化猫の宿からきたアリスです!』
「…はっ!同じくティアナなの〜」


あ、生き返った。みんなあたしより猫に驚いている。驚いてる人もいればティアたちの青&オスバージョンの猫がいた。シャルルに惚れてるし。まあ美人だと思うよ。
猫のどこを基準にしたらいいかわからないけど。

所々でこちらに対する話し声が聞こえ、ウェンディはそのみんなの反応から仲間外れにされたと思ってるらしい。さっきからそわそわしてる。
そんな人たちじゃないと思うけど。


「あ、あの。私戦闘は全然できませんけど、皆さんの役に立つサポートの魔法はいっぱい使えます。だから、だから仲間外れにしないでください!」
『…可愛い』


みんなは驚いてる。オロオロしてても可愛いから大丈夫だよ、ウェンディ。ぼそりと呟いてしまったけど誰にも聞かれてなかった、よかった変態と思われるとこだった。

シャルルはウェンディの気弱な態度に怒ってるけどね。最終には呆れてるし。

そんなあたしたちに一番初めに声をかけてくれたのは妖精の尻尾の一員である、緋色の髪が綺麗な鎧の女剣士、エルザ・スカーレット。


「すまんな。少々驚いたがそんなつもりは毛頭ない。よろしく頼む、ウェンディ。それにアリス」
『よろしく〜』
「うわぁ〜。エルザさんだぁ、本物だよシャルル!」
「おもってたよりいい女ね」
「ねえねえ、オイラのこと知ってる?ネコマンダーのハッピー!」


あー、シャルルに相手にされてないじゃん。お気の毒に。
ティアも猫たちと仲良くなりにいく?どーする?と会話をしているうちに隣にいたウェンディが消えていた。違う方に視線を向けると可愛らしいソファーに座って、周りには週ソラで見たことがある青い天魔の魔道士三人組にエスコートされていた。


「さぁ、お嬢さんもこちらへ」
『え?あたし?あたしはいいよ〜』
「アリスちゃんはお嬢さんじゃなくてお嬢って感じなの!」
『あんた黙れば』


うん。断ったはずなんだけど、なんであたしはソファーに座ってるの?ウェンディはついていけてないみたいだし。オロオロしすぎでも可愛い。

それよりウェンディが会いたいって言ってたナツって人は、一通りここにいる魔道士を確認したけど、あたしたちと同じような匂いがするあの人かな。白いマフラーをつけて桜色の綺麗な髪をしたつり目の人。

ジッと見つめていると、向こうもあたしを見た。目が合ったその一瞬、どこか懐かしい感じがして、胸の奥がドクンと高鳴った。


「オレンジジュースでいいかな?」
「お前正直可愛すぎだろ」
「おしぼりをどうぞ」
「あのぅ、えぇっと」


数秒だけ、違う空間にいたみたいだった。トライメンズとウェンディの戸惑っている声でハッとして戻る。何だったんだろうさっきのは。


「何なのこのオスども!」
『え〜、にぎやかで良いと思うけどね、ティア』
「はいなの!」


さっきのことは深く考えないようにし、青い天魔のおもてなしを受けていると、慣れないウェンディがおろおろしていた。
が、そのウェンディがある一点に視線を移すと、顔がにっこり微笑んでいた。その視線の先は桜髪。やっぱりあの人が火竜(サラマンダー)のナツ。その人の後ろにいるのはたしか、氷の魔道士グレイだっけ?うん、たぶんそうだ、たぶん。週ソラで見たことがある。
さっきからたぶんたぶん自信なさすぎるわあたし。


「どんな男がタイプなの?」
「ケーキも食べる?」
「てか可愛すぎだろ」

「だから遊びにきたんじゃない!すぐに片付けろ!」


一夜さんの一声で一瞬のうちに片付けた三人。すごい。

一夜さんが作戦をあたしたちみんなに伝えようとしたけどその前にトイレの香りらしい。トイレに香りってつけたらなんか、嫌だ。
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