そして、セレスティーナが消える一、二年前の事…
あたしはセレスティーナに内緒で遠くの海岸に遊びに行った時に大人の人に捕まった。
その後の記憶はない。
気付いた時には楽園の塔に連れて来られていて幽閉されていた。ここはあたしと同じように連れてこられた子供が働いている。扱いは奴隷そのものだけど。
それに比べ、あたしの部屋はドアと、窓が一つしかないけど、布団や食べ物があるあたり扱いはよかった。
それでも一般の扱いとは違い、あたしは物の様に扱われて必要以上に魔力を何度も吸い取られた。死者を復活させるとかなんとか、それにはあたしの魔力は適していた。
セレスティーナに会いたくても会いに行けない、あたしがあの時海岸なんかに行かなければよかったんだ。
何度死にたいと願ったか。
そんな時、君に出会ったんだ。
「人…?」
『…あなたは……』
部屋にある唯一外を見ることができる窓、そこにいたのは右目のタトゥーにあたしの瞳と同じ青の髪をもった男の子。
夜だからか、背後の月に映えて見える髪に見惚れたんだ。
「君は、どうしてこんなところにいてるの?」
『…気付いた時には、ここにいたの』
「そっか…」
それよりも、彼の格好からして奴隷の子供で間違いないのにどうしてこんなところにいてるのだろう。
『あの、「君の、」?』
それを聞こうとすると彼もあたしに話しかけた。
「君の瞳、すごく綺麗だ」
こんなこと言われたことのないあたしはどうしていいかわからないまま時間が止まったかのように立っていた。きっと間抜けな顔をしてるんだろな。
それからにこっと笑った彼にあたしは言った。
『あなたの髪も素敵だね』
そう言うとさっきのあたしみたいに間抜けな顔をしていた。
それがなんだかおもしろくて小さく笑ってしまった。
その日をきっかけにあたしと彼、ジェラールは時々会うようになっていた。
あたしはどうしてもこの部屋から出れないからジェラールが黙って抜け出してきてくれる。
それがなんだか嬉しかった。
魔力を吸い取られ、ジェラールと会って…、そんないつもと変わらない日常を過ごしていた。時には病んでしまったり、死にたくなったりして、何の関係もないジェラールに怒りをぶつけたけど、その度、彼は笑顔であたしに光をくれた。
あたしがそんな彼に恋をするのに、時間はかからなかった。