儚い花束

ウェンディとあたしがフェアリーテイルに来てから少ししたときの話、やっとこの町にも慣れてきました!
今日はミラにおつかいを頼まれて買い物に来ていました。


『ティアー?どこ!』

「はいなのー!」

『勝手にいなくなるなよ、このやろう』

「ごめんなさいなの、このやろう」


意味の分からないやりとりをして森を抜けると隣町に着いた。マグノリアとは雰囲気が違い和んだような感じに見える。

ミラに頼まれたモノをメモを見ながら探すと案外すぐに見つかった。


「アリスちゃんアリスちゃん」

『ん?』

「これも買いたいの!」

『お花?よっし!買おっか!』

「やったの!」


花屋に入って目の前に広がったお花の綺麗さに見とれてしまった。


「いらっしゃいませ!何かお探しでしょうか?」

『あ…、別に探し物はないんですけど…。どれがいいかな?』

「恋人さんにですか?」

『え!?ち、違いますよ!』


何か勘違いしたよこの店員さん!

否定したのにそうですねー、とか言いながら何か分からないけどお花を選んでいく。さすがプロ、手慣れてるな…、じゃなくて!


「これでいかがでしょうか?」

『わっ、綺麗…』

「気に入っていただき光栄です」


まぁ、これでいっか。代金を支払って受け取ったお花に鼻を近づけて臭いをかいでみると甘い臭いがした。

ティアにも小さな花を買ってあげるとすっごく喜んでくれた。買って正解。


『あーあ、これギルドに飾ろうと思ってたのに』

「飾ればいいんじゃないの?」

『いやー、だってさ恋人にだからギルドに飾ってもなって』

「しかたないの!誰かにあげたらどうなの?」

『誰か、ね…(ジェラールは、無理か)』

「あ…、アリスちゃん……」


あたしの表情からジェラールのことを考えていたのが分かったみたいでティアは泣きそうな顔をしてあたしを見た。大丈夫だよの意味を込めて頭を撫でてあげたら目を細めて安心したみたいだった。

でもこの花どうしようかな、さすがに恋人でもない人から貰うのはみんな嬉しくないだろうし。


帰りは少し暗くなってきたのでティアに運んでってもらうことにした。それはあっという間で気が付けば目の前にはあたしたちのギルド、妖精の尻尾があった。


「お帰りなさい」

『ミラ!ただいま!』


おつかいのモノを渡したら疲れもとれる笑顔でありがとうと言ってくれた。ほんと、ミラの笑顔で癒される!


『あ、この花どうしたらいい?』

「あら、綺麗ね〜。どうしたの、これ?」

『何かギルドに飾ろうと思って買ってきたんだけどお店の人が恋人にあげるのと間違えちゃって』

「恋人?アリスいたの!?」

『いないいない!だからさ、ミラこれ貰ってくれない?』

「私が?そうねぇ……、悪いけどそれはできないわ」

『え、何で!?』

「ふふ、何ででしょうね」


面白そうに微笑むミラだけど何で貰ってくれないんだろ?とか思ってたら後ろからすごい勢いの何かが突進してきた。
うん、マジで痛いなこんにゃろー!
あ、でもこの温もりって、


「アリス!彼氏できたってほんとか!?」

「ひどいよー!どうしてオイラには教えてくれなかったんだよー!」

「クソ炎!アリスに抱きつくんじゃねえよ!!」

「テメェこそ離れろよ!」

「あんたたち!アリスが潰れてるから!!」

「やめんかー!!」


ありがとうエルザ、ルーシィ。それに何で助けてくれなかったのウェンディにシャルル。一瞬お花畑が見えたよ。


「そうよ!アリス!何で彼氏できたって教えてくれなかったの!?」

『は?』

「さっきティアと話してたじゃない!恋人がどうとか!結婚がどうとか!!かけおちするとか!!」

『それ違うから、勘違い。しかも話盛りすぎ!』

「そ、そうだったんですか!?」

『何信じてんのウェンディ!?』

「ご、ごめんなさいー!」


いつものメンバーはあたしの恋人ができてお花をあげて結婚するとかすごい妄想をして話が大きくなったらしい。何とか弁解して訳を話すとみんな納得してくれた。よかったよかった。

ナツとグレイは何だかソワソワしてたけど。


「で、どうするんだ?」

『ギルドに飾ろっかなー』

「そ、それはちょっと…(ナツたちが可哀想…)」

『やっぱ悪いかー、いっそのことあたしの家に置いとこかな?』

「それでいいんじゃない?」

「そうだな、恋人ができるまで大切に育てておくんだ」

『らじゃ!じゃ、あたし今日は帰るね、ばいばい』


席を立ってミラやみんなとお別れをしてティアを探したけどいなかったから先に帰っておくことにした。

ウェンディとあたしは女子寮に住んでるけどあたしは普通の一軒家も買っていたから気分で日によってどっちに帰るか決める。今日は一軒家のほう。


『はぁ…、!?』


ため息を吐いたとたんギュッと後ろから誰かに抱きしめられた。
何これ痴漢!?でもこれってさっきと同じ…


『どした?ナツ』

「送ってく!一人じゃ危険だしな!」

『ナツー!イケメンだよ!』


何この人すっごいイケメン。その笑顔がまぶしいぞー!ハッピーを探したけどナツの周りにはいなかった。
今日は猫ちゃんたちよくいなくなるな。ティアもいないし。


「ハッピーならシャルルのとこに行ったぞ、ティアナも」

『そうなんだ!ナツは?』

「ん?アリスと一緒にいたかったしな!」

『……そっか』


うおおおおおおお!何なのこの人!?天然ですか!?ナツの発言のせいで顔が真っ赤になってる気がする。絶対。

家に着くまでナツは何か言いたそうにチラチラこちらを見ていたけど『何かあった?』て聞いても「なんもない!」って全力で否定された。


『送ってくれてありがとね』

「どうってことねえって!」

『じゃあまた明日ね』


ナツにお礼を言ってから鍵を開けて家の中に入ろうとした。瞬間手に持っていたお花が消えた。


『うゎ!?』

「…………」

『ナツー?その花、』

「も、もらう!誰にもあげないんだったらオレがもらう!!何か文句あっか!?」

『え、あ、ありません』

「じゃあな!!」


え?なに、何なの今の一瞬の出来事。
真っ赤な顔をしたナツにお花をとられて、あまりの勢いに頷いちゃったよ。いいの、それ恋人にあげるやつだよ。恋人じゃないのに?あれ、もうわけわかんない。
顔が熱いけど。
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