11




あの試合から二、三日目たって、私は優一さんのところに行くことにした。

この前の帰り際の態度を謝らないと。

ちなみに、あの試合の後、玲央くんにはこっぴどく叱られました。


『こんにちは〜、て』


優一さんいない。
検査かな?病室で待ってるのはなんだか気がひけるし、散歩でもしてようかなあ。

スライド式の扉を開けようとしたら、私が開ける前に開いた。
その人物は目を閉じてクールに入ってきたので、目の前の私とぶつかるわけです。

身長差があるし、剣城くんの方が私より鍛えてるわけで、胸元にぶつかり、そのまま尻餅をついてしまった、恥ずかしい。


「おまえ、なんでここに」

『うわわ、ごめんね剣城くん、大丈夫?怪我とかしてない?』

「いや、俺はべつになんとも(それよりお前の方が、)」


よかった…!
もし剣城くんに何かあったら私一生自分を許せなくなるわ。
尻餅をついたままの私に手を差し出してきた剣城くん。
なんだろ?


「いつまで座ってるんだ、ほら」

『あ、え、えと…』

「?立てないのか?」

『別の意味で立てないです』

「は?」


おっと、つい口から本音が。
まさか、剣城くんが手をかしてくれるなんて、やっぱり優しい人だ。
ドキドキしながらゆっくり手を乗せると、ぐいっと引っ張られた。

きゅんっ

いやいや!きゅんじゃないよ!!力強くて惚れ直したけど!!!


『あの、ありがと…。私、ゆ、優一さんに会いにきたんだけど、いなくて…』

「いない?」

『う、ん』


剣城くんは私の背後のベットを確認すると、心当たりがあるのか部屋を出て歩き出した。

え、まってまって、私もついてく。

後ろからついてくる私に気付いてるはずだけど、来るなとは言わない。
優一さんと面識あるからかな?

しばらく歩いてついたのは、運動ルームのプレートが貼っている部屋。

中の様子を見て、剣城くんは部屋に入ることなく止まった。
優一さん、足が治るのを信じてリハビリがんばっているんだ…


「もう一度サッカーやるんだろ?」

「っはい!」


倒れそうになっても、何度も何度もがんばる優一さんを見て、剣城くんは辛そうな顔をした。


「(やっぱり俺は、フィフスセクターには逆らえない、)」

『剣城くん、どうしたの、?』

「!いや、おまえには関係ないことだ」

『っ!』


これは、なかなか心に刺さるなあ、
たしかに、サッカーもしてないし、話したことだって全然ない、剣城くんからしたら関係ないけど、私には、私からしたら…


『剣城くん、サッカー好き?』

「?」

『優一さんはサッカーが好きだって。剣城くんと小さい頃にやっていたサッカーが』

「どういう意味だ」

『管理サッカーとか、シードとか私には確かに関係ないよ。でも、そのサッカーは優一さんが望んだものなの?』

「…たとえ望んでなくても、俺は兄さんのためにサッカーをする、それだけだ」


それだけ言うと、来た道を歩いて行ってしまった。

…て、私が見逃すわけないでしょ!!


後ろから走り剣城くんの背中に飛びつく。
勢いもあったため、剣城くんは前に倒れ、後ろに乗ってる私の方を向くために体勢を変えた。

周りから見たら、私が剣城くんを押し倒しているように見えるだろうが、気にしてられない。


「っ、おい!」

『剣城くん!!!』

「!!」

『剣城くんは優しすぎるんだよ!!全部一人で抱え込んで、自分を犠牲にしてまで!!そんなことして優一さんが喜ぶと思ってるの!?優一さんはそんな人なの!?優一さんの気持ちは剣城くんが一番知ってるはずでしょ!!!』

「っ、うるさい!!何も知らないやつが口を出すな!」

『たしかに知らない!!だから私、剣城くんのこともっと知りたい!!優しくて、不器用で、お兄様思いで、サッカーが大好きな剣城くんのこと!一人で抱え込むんじゃなくて、私は、ただ、頼って、ほしい、の…』

「……………」


や、やってしまった…。
途中で我を取り戻したけど、こんなのただの熱烈な告白じゃない。数回会った人にこんなこと言われるなんて、剣城くん、怒っちゃった。
目を見開いて、黙ったままな剣城くんと視線がぶつかり合う。
ああ、だめだ、こんなに見つめ合ったことなんてなかったから、心臓がもたない。


『ご、ごめんなさい』

「…ふっ」

『え、(わらった…)』

「真面目になったり、怒ったり、落ち込んだり、おまえほんと変なやつだな」

『うう、(は、恥ずかしい…)』


羞恥心よりも、剣城くんの笑顔に私のハートはズッキュンです。
ふっ、と笑う感じが似合う人ってそういないと思うんだよね。かっこいい。

ふと私は今の体勢を思い出し、顔に熱が集まるのを感じた。


『ご!ごめんなさいいい!!』


飛ぶ勢いで剣城くんの上からどいて、距離をとった。
剣城くんも起きあがり、私たちの間に妙な空気が流れる。


「あれ、京介に美羽ちゃん、きてたんだ」

「兄さん、」

『優一さん!優一さ〜ん!(ナイスタイミングです)』


車椅子に乗っている優一さんに抱きつきに行く。
私の癒しである優一さんは、どうやらリハビリを終えて、病室に向かう途中だったみたい。
剣城くんと二人きりは私には耐えられません。


「どうしたの美羽ちゃん、京介に何かされた?」

『とんでもないです!…むしろ私がやっちゃったてかんじで、』

「ん?」

『いえ!!何もないです!!!』


ボソッと口から出ていた呟きは聞こえていなかったみたい。よかった。


「二人で来るなんて珍しいね」

「いや、たまたま兄さんの病室で会ったんだ」

「俺の?何か用があったの?」


優一さんに言われて、私がここにきた本来の目的を思い出した。


『そうなんです!伝えたいことがあったんです!』

「伝えたいこと?」

『この前は急に帰っちゃってごめんなさい!!』


私が頭を下げて謝ると、優一さんはクスクス笑って、「気にしないで」と言って頭を撫でてくれた。

これ、落ち着く。


「また来てくれて嬉しいよ」

『ほ、ほんとですか?そんなこと言われちゃ、たくさん来ちゃいますよ?』

「歓迎するよ」


優一さん…、なんて素敵なお兄様なんですか。
うちのお兄様と交換したいです。


「…兄さん、俺、帰るな」

「もう帰るのか?」

「ああ」


剣城くん、帰っちゃうのか、
もしかして私が優一さんと話してたから気を使って?
私、悪いことしちゃったかな、
なんていろいろ考えてたら、優一さんは何か思いついたような顔をして、剣城くんに言った。


「じゃあ京介、もう遅いし美羽ちゃんを家までおくってあげたらどうだ?」

「は?俺が?」

『んんん!?そんな恐れ多い!!!私一人で帰れますよ!』

「気にしないで、京介もいいだろ?」


優一さんが剣城くんに微笑むと、優一さんに弱い剣城くんは、仕方ないとでも言いたそうにため息をついた。
ごめんなさい。