日向美羽、ただいまなんとも言えない空気を味わっています。
『……………』
「……………」
ひたすら無言!!!
剣城くんの近くにいてれるだけで満足な私なのに、お家までおくってくれるなんて、幸せすぎる。
けど、一方、会話できない自分にもどかしさを感じる。
優一さんの前だけで、おくる、と言って帰るのはバラバラかと思っていたが、こうしてちゃんとおくってくれる。
惚れる要素しか見当たらないわ。
おくると言ってくれたけど、道がわからないため私の少し後ろを歩いてる剣城くん。
後ろ向いて歩くことはできないので、顔が見えないのが惜しいです。
『あの、剣城くん、ここで大丈夫だよ』
「…そうか」
『うん、ありがと』
じゃあ、と手を振って剣城くんが引き返すのを待っているが、動く気配がない。
え、どうしたんだろ、道同じなのかな?でもこのあたりで見たことないし、
「…兄さん、お前と話してる時楽しそうだった」
『え、ほんと?剣城くんの話いっぱいしてくれるんだ〜』
「俺?」
はっ、あぶない。
これじゃあ私、本物の変態になる。
『優一さんと話してたら自然と剣城くんの話になるの!あ、でも剣城くんの事情?については話してないよ』
「…おまえ、サッカー部じゃないのに今のサッカーにずいぶん詳しいんだな」
『そ、そうかな?サッカー部に知り合いがいるんだ〜。その子からよく話は聞くよ?』
「ならなぜ、兄さんに俺のことを言わない」
『え、?なぜって、何でだろ?』
そういえば、どうして言わないんだろ。わざわざ言う必要がないから?
剣城くんのしてることを聞いたら、優一さんが悲しむから?
うーん、なんでだろ。
悩んでるのが顔に出てたのか、剣城くんは大きく溜め息を吐いた。
「兄さんから何を聞いた?」
『何、って、剣城くんとしたサッカーのこと、それから…、足の怪我のこと』
これを言うのは剣城くんを傷つけるだろうか、
でも、嘘をつくなって目をしてるからごまかせない。
「ならわかってるだろ。俺のせいで兄さんの足は動かなくなったんだ」
『………(まさか、剣城くんがサッカー部であんなことしてるのは、)』
「俺は兄さんの手術代と引き換えに、シードになった」
やっぱり、確かに手術するにはたくさんのお金がいる。剣城くんみたいに優しい人なら、自分のせいだと思って、どんなに自分が犠牲になろうとも、その目的のために死に物狂いでがんばれると思う。
でも、それは、
『それは違うよ』
「なんだと?」
『優一さんは剣城くんとやっていたサッカーが好きだと言ってたよ。サッカーをしてる剣城くんが好きだって』
「だから、そのために俺は兄さんの足を!」
『そんなことして、本当に優一さんが喜ぶって思ってるの?剣城くんが逆の立場だったら、今の剣城くんがしてること、許せないでしょ?』
「っ、どうにもできないことだって、あるんだ」
『私は、優一さんにばらすつもりも、剣城くんにシードをやめろとも言わない。ただ、道を間違えないでね』
伝えたいこと全て剣城くんにぶつけた。
それから私は、剣城くんの言葉も聞かずに、家まで全速力で走って部屋の布団に飛び込んだ。
伝えることはできたけど、きっと、生意気って思われちゃった。
嫌われちゃったかな、
『あああああ!』
「うるさいぞー」
一階からすでに帰って来ていた玲央くんに怒られた。
そういや、最近の玲央くんはキラキラしている。私が中学に入る前は、試合の日なんて全然楽しそうじゃなかった。
それも今思えば、フィフスセクター(やっと覚えた)の指示通りに動いていたからなんだろうね。
今じゃ松風くんから始まり、彼に影響されたサッカー部の人たちも、フィフスセクターの反乱軍となって戦っている。
あと、雷門サッカー部に足りないのは、剣城くんなんだろうね。