昨日の今日で慌ただしいけど、雷門と白恋の試合当日になり、今日はしろーくんの事もあり優一さんの病室ではなく、実際にスタジアムに来ている。
寒いよここ。フィールド凍ってるから明らか白恋が有利だし。はあ、とため息を吐いたら薄く白い息が出た。こんなに寒いんだ。
普段は腰に巻いているカーディガンを羽織って一番前の席に座る。座った瞬間に妙にお手洗いに行きたくなり、試合が始まる前に済ませてしまおうと、席取りしたところにタオルを置いて、一般客用のお手洗いに向かうことにした。
ガヤガヤする中、お手洗いを済ませてから先に戻ろうとしたら、携帯が震える。メッセージの写真を確認してから内容を見ると玲央くんから、家の鍵を取りに来いと。
今日はお母さんも家にいるから鍵持ってないんだけど、もしかして用事できたのかな?それなら玲央くんの帰り待つけど、て思ったけどミーティングがあるからやっぱり先に帰りたい。
指定された場所へ向かうと、玲央くんと雷門サッカー部の人達がいる。
話をつけてくれていたのか、警備員さんには名前を言うとすんなり通してもらえた。
「よっ!ほらこれ」
『お母さん家にいないの?』
「出かけるらしいから念のためにってな」
チャリと言う音と共に私の手に乗った鍵。それを鞄に入れて、肌寒さに腕を摩る。
それを見て玲央くんは寒いのか?といつもと変わらず聞いてくるので少し腹が立った。いいよね、もともと体温高かったら。
摩っていたら葵ちゃんが近くに来て抱きしめてくれた。でも葵ちゃんも寒いらしく、お互い寒い寒い言い合う。
松風くんや西園くんも少し冷えるのか二人とも手を握っている。マサキくんと輝くんはさっきの私みたいに一人で腕を摩っている。剣城くんは何か探しているのかスポーツバックを漁っていた。
そんな一年生の様子を見てか、私の様子を見てかはわからないけど(シスコンだから多分後者)、玲央くんが来ているジャージに手をかけた。
「しかたねーなぁ、俺の『っうぶ』…」
玲央くんの言葉を遮るように私の視界が真っ暗になり、同時に頭に何か被さっている感触。反射的に声が出てしまった。
頭に被さっている何かを取り除き確認してから、キョロキョロ視線を動かすと私の大好きな人が。
「それ着てろ」
『…好きだ(ありがとう!!)』
「美羽、逆よ」
はっ!!!無意識に本心が出てしまった危ない。
剣城くんに近付き、焦るようにお礼を言い直すと目を丸くしながら「あ、あぁ」とちょっと引き気味で一言返ってきた。
剣城くんジャージをゲットした私は、えへへ〜と幸せオーラを醸し出していると、真後ろからゴゴゴゴと燃えるような気配が。
「つーるーぎぃ?」
「…何ですか」
「それは俺の役目なんだよ!美羽が着ていい異性の服は俺だけ…、て!」
『あったかーい!剣城くんありがとう!』
少し、いや低身長の私には、かなり大きいサイズだけど、それでもこのジャージは玲央くんには渡さない。
裾からかろうじて指先が少し見える程度だし、鎖骨部分まで見えるけど中は制服の上にカーディガンも来てるので心配はない。丈はスカートより数センチだけ上ぐらいだ。
それでも剣城くんの匂いがするし、こう、包まれてるみたいでたまらない。
はぁ〜と幸せに浸っている私とは違い、ピーピー怒っている玲央くん。
「聞けよ!!美羽も何着てんだ!脱げ!!」
『やだ、脱げとかセクハラやめて。私席戻るからバイバイ』
ここに居ると無理やりにでも剥いできそうだから早めに撤退しておこう。
そこに残された玲央くんは、石像のように固まったままだったらしい。
にしても、このジャージ、剣城くんの匂いがぷんぷんしてやばい鼻血出そう。