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さて、しろーくんに言われた通り必殺タクティクス二人バージョンをお披露目した。

それから数日が経ち、しろーくんはなんと、今日は私の家に泊まると玲央くんから連絡が。お母さんにはすでに了承済みらしい。昔からお母さんはしろーくんと修也くんのコンビが好きだったからなあ。

部活もないので、寄り道せずに真っ直ぐ家に帰る。
ただいまー、と声をかけながら家に着くと、もう五時で、お母さんはしろーくんが来るためか、張り切って夕食の準備をしていた。普段よりも豪勢だ。
おかえりなさい、と返事をしたお母さんの横を通り、手を洗い自分の部屋に向かう。とりあえず着替えて今日はお手伝いをしよう。

一階に降りて、お母さんに何かすることはないか確認すると一品作ることを頼まれたので、横で邪魔にならないように作っていると何かを思い出したお母さんの声が。
お醤油がきれたのと、デザートの果物を買い忘れたとか。少し外が暗くなりつつあるから、お買い物に行けるか不安そうに私を伺うけど、余裕だ。
お金だけ先に預かり、財布に入れ、それをカバンへ。

まだ真っ暗じゃないので、これなら危なくはないかな、と思い歩いてスーパーに向かった。
夕方すぎになって来ると割引のシールが貼られている商品もあるので、賞味期限がいけるものは明日の朝ごはんにしようと、適当にカゴに突っ込み、お目当てのお醤油とフルーツも何種類か選んだ。
レジを済ませて、エコバックに商品を全部詰めてから外に出ると、あらびっくり。行きと違い外は真っ暗になっていた。

帰ろう、と一歩踏み出した時に、着信音が。名前を確認して電話に出る。


『何?』

「あ、吹雪さんそっちに行ってねー?」

『しろーくん?きてないけど、』

「まじか。吹雪さんうちにまだ来てないから、もしかして雷門かも」

『ふーん』

「てことで、一緒に帰って来いよ!」

『は?ちょっ、』


ツーツーと音が聞こえてくるだけで、玲央くんの声は一切聞こえない。切られた。

仕方なく、買い物袋を持ったまま歩いて雷門中に向かう。ちょうどスーパーと家の間にある雷門中に着いた頃には、人通りが少なく周りが静かだった。

こんな時間なのに門が開いてるのは誰かが中にいるからだろう。

なんだか、暗くて不気味だな、と思いながら一歩踏み出した時近くで物音がしたのでビックリして超ダッシュできっと居るであろうしろーくんの元へ走った。
これでしろーくん居なかったら、怖すぎて動けないから玲央くんに迎えにきてもらおう。





***

「まさか君も、フィフスセクターに」

「さわるな」


雷門中のグラウンドで白恋中での出来事を思い出している吹雪の元に、白恋のシードである白咲と、かつて吹雪が自分の技を教えるまで大切に接していた雪村が来た。
雪村のことを気にかけていた吹雪はシードである白咲と一緒にいることを疑問に思い、雪村の肩に手を触れようとした瞬間、その手は本人にはじかれた。


「あんたは白恋中を裏切り、俺を裏切った!」

「違う雪村!僕は君を!」

「馴れ馴れしく呼ぶな!今のあんたは、倒すべき『しろおくううううん!!!!!』なっ!」


雪村の目からは憎悪の感情が表れ、誤解していることに気づいた吹雪は真実を告げようとするが、聞く耳を持たず。

一方、反発した雪村を遮ったのは美羽である。
物音が聞こえてから怖くなり、買い物袋を手に持って超ダッシュで吹雪を探していると、吹雪の声が聞こえたので安心してその方向へ走ったのだ。

吹雪に対面するように立っていた雪村と白咲の間を最高速度で走り吹雪に抱きついている。結構な衝撃があるにも関わらず、しっかり抱きとめたところは流石だ。


「美羽ちゃん、どうしたの?」

『しろーくんのお迎えに来たら、音が!音が聞こえて、吃驚した!!』

「そっか、何もなくて良かった」


吹雪も抱きつかれて満更でもないのか、優しい表情を浮かべて美羽の頭を撫でた。

そんな中、雪村と白咲は目が点になったが、状況を思い出し、まず行動に出たのは雪村だ。
吹雪に抱きついたままの美羽の肩をグイッと掴み、吹雪と離れさせた。


「お前、誰だよ!」

『え、誰って言われても』


う、わ〜、この人昔のしろーくんと雰囲気が似てる。言葉遣いは真逆だけど。
なんで私こんなに敵意向けられてるんだろう。

…もしかして、


「この人と、何の関係があるんだ!」

『深い関係はないけど』


私がしろーくんに抱きついたり、頭撫でてもらったからヤキモチ妬いてる…!?

しろーくん、女の人によくモテてたって聞いたけど、性別関係なかったんだ。


『てか、逆に誰?』

「これは、申し遅れました。俺は白恋中サッカー部のキャプテン白咲、彼はエースストライカーの雪村と言います」


普通に気になることを口からポロリと出てしまった。
それに答えてくれたのは、私に敵意を向けてる昔のしろーくん似の人ではなく、横に突っ立ったままだった背の高い髪の毛が特徴的な男の人だった。


『ご親切にどうも。日向です』

「日向?雷門サッカー部の日向と兄妹か?」

『まあ、兄です』

「ほう」


しろーくんと仲が良いように見えたからだろうか、白咲くんが私と玲央くんの関係にすぐに気付いた人は初めてだ。
妹と気付くと私の全体を頭の先から足の爪までじっくり見られてる気がするけど、私は玲央みたいにサッカーしないから。ホーリーロードにも出ないから警戒しなくて良いのに。

にしても、雪村くんの視線が痛い。何で私こんなに敵意向けられてるんだろう。


『、そんなにしろーくんの事が好きならどうぞ』

「は!?誰もそんな事言ってない!」

『だって、さっき私の頭撫でてたから怒ってたんじゃないの?』

「っ違う!俺たちを裏切ったのに平然としてるのに腹が立っただけだ!!」

『またまた〜。ん?しろーくんが裏切ったって?』

「そうだ!この人はな!」


それから雪村くんはなんと、しろーくんとの出会いから今まで起こったことを全て話してくれた。
チームからは自分勝手だと見捨てられた雪村くんにしろーくんだけが真剣にサッカーに付き合ってくれた。毎日毎日、雪村くんに向き合っていた。
なのに、技を完成させると誓った次の日からしろーくんが姿を現さなかった、と。

いや、聞いて思ったんだけど、


『やっぱりあなたしろーくんの事大好きじゃん』

「な、な!何を!!そんなっ、わけない!!」

『わかりやす!!いつものが無くなったから見捨てられたって、恋人か』

「お、お前!お前だって同じ立場だったら思ってるはずだ!」


照れているのか怒っているのか、両方が混ざってるのだろうけど。
しろーくん、まさか彼女いないからって、雪村くんに手出したりしてないでしょうね。

じゃなくて、


『私なら、そんな簡単に裏切ったなんて思わない。初めて向き合ってくれた人なら尚更』

「っ!」

『不安になるかもしれないけど、それでも信じて待ってる』

「美羽ちゃん、」

「………」

『だから雪村くんとは違いますー!』

「なっ!この、可愛くない奴!!」


べー!としろーくんの後ろに隠れながら舌を出す。あっかんべーだ。
しろーくんだって辛い思いのはずなのに、自分だけ捨てられたみたいな言い方して、何か嫌だもん。

さらに顔を赤くした雪村くんが私のことをキッと睨んできた。
でも、今まで誰も真剣に向き合ってくれなかったら、雪村くんみたいになるのかもしれないけど。

睨んでくる雪村くんにあえて微笑み告げる。


『雷門と試合すれば、しろーくんが伝えたいこと、きっとわかるよ』

「…勝つのは俺たち白恋だ」

『そう。がんばって』


さあ!帰ろう!としろーくんの手を引っ張り門に向かう。
同じように空気と化してた白咲くんが雪村くんの肩を叩き二人も歩き出した。


私が持っていた買い物袋はいつのまにかしろーくんが持ってくれていた。できる男だ本当に。


「美羽ちゃん」

『んー?』

「ありがとう」


しろーくんの笑顔は少し切なさを感じる優しいものだった。


『…今日はね私も晩ご飯作ったんだよ、いっぱい食べてね!』

「美羽ちゃん…」

『伝わるよ、しろーくんの気持ち。だから信じて』


雷門のサッカーと、雪村くん自身を


「…ほんと、後10年若かったら絶対に美羽ちゃんのこと好きになってたよ」

『んー、今は?』

「もちろん大好きだよ」


照れ隠しに聞いたけど、バレバレだったのかクスクス笑われてしまった。
ツンっとしてしろーくんから顔を背けると、買い物袋を持っていない方の手で私の手を握った。

…私だって10年早く産まれてたら、きっとしろーくんのこと好きになってたよ。