泣き虫少女と険悪な雰囲気
少し遠くにいる守くんに近付くと、険悪だった雰囲気が少し和んだ気がした。
「どうした真雪?」
『えっと、守くん、とてもお似合いですよ。でもあと少し…、バンダナ外して、少し髪型を整えて、あとネクタイ少し締めすぎです』
馬鹿にされたのならば、見直してもらえばいい。
きっと守くんなら何も気にしないだろうけど、ここにいる守くんの仲間が黙っちゃいない。
気になるところをテキパキと直して確認すると、立派なナイトの、
『できあがり、です』
大事なバンダナを胸に抱えて微笑むと、目をまん丸くした守くんとイナズマジャパンのメンバー。
顔を真っ赤にする秋さんと冬花さん。
家族以外で一番長く守くんと過ごしてきた自信はある。いっくんももちろんだけど、この二人は陸上やサッカーに没頭してたから、ファッションや髪型を深く意識したことはないだろう。
でも、周りが何も反応しないから、良いと思ったのは自分だけなのかな、と思っていたら、
「すすす、素敵です!円堂さん!」
「なんだか一気に大人っぽくなりましたね!何か、こう、色気がむわわんと」
「春奈は黙ってろ」
立向居くんから始まり、春奈ちゃんも目をキラキラさせて木暮くんのそばから離れこちらに来た。そんな春奈ちゃんは鬼道さんに呆れられている。
エドガーさんの元にいた冬花さんも守くんの近くに来ていた。
「見間違えたぞ円堂!何一丁前に大人っぽくなってんだよ!」
「は?」
綱海さんの褒め言葉に、わけがわからない顔をしてる守くん。
私は少し嬉しくて一人笑顔が溢れる。
春奈ちゃんが私の元に来て、右手を両手でガシッと包み込んだ。力強い…
「さすが真雪さんです!!」
『ひぇ、』
ぎゅううううと痛いぐらい手を握られるけど、悪い気はしない。むしろ嬉しい。
これでここの雰囲気は戻ったかな、と思ったけどそう簡単にはいかなくて。
「ふっ」
「今度はなんですか」
「いや失礼。こんなにも変化するんですね。さすが真雪さん」
『え、?』
い つ の ま に
気がついた時には、春奈ちゃんが握っていた手と逆の手を片手で包み込み、もう片方は肩に添えられていた。
「きっと貴女がこのチームの支えになっているのでしょうね、よかったらあちらでご一緒しませんか?」
『え、や。私は、その…』
エドガーさんの素早い行動に春奈ちゃんも握っていた力を緩める。その隙を見逃さず、エドガーさんはスッと自分の方に私を引き寄せた。
ひええ、免疫ないです私。
「…は!!真雪さんは私のです!英国紳士でも渡しませんよ!」
「誰のものと構わず、真雪はイナズマジャパンのメンバーだ」
『豪炎寺さんっ、』
「ほう。そんなに真雪さんが大切ですか、このチームにいるよりは何倍も幸せだと思いますが」
「お前に何がわかんだ!」
『あの、』
「野蛮な人達よりかは女性を大切にする我がチームにふさわしい」
「んだと!?」
『みな、さん、』
どうしよう、私のせいだ。
私がよけいなことしたから、もっと悪くなっちゃった。エドガーさんの腕の中でじわじわ涙がこみ上げてくる。
だめだ、泣いちゃダメなのに。
「やめろお前ら!俺たちは喧嘩しにきたんじゃない!」
「円堂…」
『っ、ごめ、なさ、い』
「真雪さん?」
私の涙を見た瞬間、手を離して心配してくれるエドガーさん。そんなところは英国紳士だと思った。
手が緩んだ瞬間にそっと腕の中から抜け出し、イナズマジャパンのメンバーのところに駆け足で下を向きながら向かう。
どんっ
「…前向いて歩けよ」
『うう、不動さああん、ふえぇ』
「ちょ、やめろ!離せ!(視線が痛えんだよ!)」
『ごめんなさい』
謝りはするけど離れない。
やっぱり、初対面の人より同じチームの人の方が安心できる。不動さんも軽い力で私を押し返すけど、それよりも強い力でタキシードを握りしめる。
ああ、せっかくの正装なのにごめんなさい。
その間にも、守くんはみんなの苛立ちを抑えていた。
「その思いはグラウンドでぶつければいい。俺たちのサッカーを見せてやればいいんだ。だって俺たちはサッカーをやりにきたんだろ?」
守くんの言う通り。私たちは言い争いでも、喧嘩でもない、サッカーをしにこの島に来たのだから。
「てことだ、楽しみにしてな。コテンパンにやっつけてやる」
「だったらやってみますか、今ここで」
なんと、エドガーさんは自分がシュートを決める、それを守くんが止めることができるか、という勝負を持ちかけてきた。
試合前に相手のシュート力をこの目で実際見れるとは。
しかし、エドガーさんの余裕な感じからよほどシュートに自信があるのだろう。守くんも考え出した答えは、
「いいだろう、受けて立つ」
守くんならそういうと思ってました。
「円堂!」
「おもしろいじゃねえか、やらしてやれよ」
止めようとした鬼道さんの肩に不動さんが手を乗せてそれを止めた。
ちなみに私をしがみつけたままなのであまり格好良く決まってませんよ。
『い!なにふるんでふか』
「お前今よけいなこと考えただろ」
ほっぺをぐにーんと引っ張られた。
どうやら顔に出てたみたいです。