泣き虫少女の名前呼び

いっくんについていくと、そこにはイナズマジャパンの数名が集まっていた。

見知った顔を見るだけですごく安心する。
いっくんは私のために飲み物を取ってくる、と言い一人で行ってしまった。

ぽつん、と一人で突っ立っていると後ろから声をかけられた。


「真雪」

『鬼道さん!遅れてごめんなさい』

「いや、円堂のことだ。特訓でもしていたんだろう」

『ふふっ』


さすがわかっていますね。
鬼道さんと話していたら、気になる彼の横にいる人からの視線。


『えと、佐久間さん?』

「っ!あ、どうした?」

『いや、あの、』


真っ赤な顔の佐久間さんと私が、もごもごしていると、傍から見ていた鬼道さんが溜め息をついた。


「佐久間もわかりやすいやつだ、」

「んなっ!?」

『わかりやすい?』


わかりやすいって、どういう意味かしら?
私と同じで人見知りとか?
んん?と思考を捻らせていると、またまた聞こえた鬼道さんの溜め息。


「真雪は鈍いやつだな」

『へ、私、鈍い?ご、ごめんなさい、』

「鬼道!」

「あ、いや、悪い意味ではない(と思う)」

『ほ、ほんとですか?よかったあ』

「(かわいい…)」


悪い意味じゃないならよかった。
少し涙目になったけど、ほっとしていると、またまた違う人に名前を呼ばれたので鬼道さんたちに軽く会釈をしてから向かった。


「…佐久間」

「なんだ?」

「ライバルは多いぞ」

「な!?まさか、鬼道…」

「ふっ」


後ろから佐久間さんの驚く声が聞こえて、振り返ると視線がバチっと合い、笑うと佐久間さんも笑顔を返してくれた。


「真雪ちゃん」

『わあ!基山さん、スーツ似合っていますね』

「ありがとう。でも俺から先に言いたかったな」

『何をです?』

「ドレス、すごく似合ってるよ」

『えぇ、っ、その、ありがとう、ござい、ます、』


にこにこした基山さんから、女子なら誰もが落ちるような笑顔と言葉をいただきました。

あたふたしていると、その手を基山さんに握られて優しい力で引っ張られる。


『あの、基山さん?』

「真雪ちゃん、俺からお願いがあるんだけど」

『は、はい!何でしょうか?』


引っ張られたことによって近くなった距離。じっと私の目を見る基山さんの視線から、逸らさないように私も見つめ返す。

こんなに真剣な表情で、お願いって、よっぽど深刻なことじゃ…。
しかし、お願いがあると言ったが、それからは口を開かない。どうしたのかな?


『基山さん?』

「それ」

『え、?』


それって、何のことかな?特に行動もしてないし、基山さんの名前を呼んだだけなんだけど。


「基山じゃなくて、名前で呼んでほしいな」

『名前、ですか?』

「うん、名字で呼ばれるの慣れてないんだ」

『そ、そういうことなら、はい、名前で呼ばせてもらいます…!』


良かった、名前で呼ぶくらいなら私も叶えてあげられる。
ホッとしてると、じゃあ、と基山…ヒロトさんが言った。


「真雪ちゃん」

『はい』

「…真雪ちゃん」

『は…、、あ…、えっと、ヒロト、さん?』

「はい、なあに?」

『!!これ、想像以上に、は、恥ずかしい、です…』

「…効果抜群」

『へ、?』


名前呼び、というものは簡単に呼ぶことができたけど、思っている以上に何だかこそばゆい感じで。
両手で頬を抑えていると基山、ヒロトさんも口元に手を当てて顔が真っ赤になっていた。


『だ、大丈夫ですか?』

「ったく!」

『!?いっくん!』

「真雪さん!」

『立向居くんも、一緒なんだね』


私とヒロトさんの元に来て、わかりやすくため息をつくいっくん。そして目の前で顔を真っ赤にしておどおどする立向居くん。
あ、もしかして私がくる前に皆で行動とかしてたのかな?それなのに飲み物も取ってきてもらったりして、
悪いことしちゃった。


「ほら、真雪」

『あっ、ありがとうございます!』


いっくんからグラスを受け取り、二人で何かに悶えてるヒロトさんと立向居くんに視線を向ける。
私たちの視線に意識を取り戻したヒロトさんはいっくんを見つめ返す。


「ヒロトも抜かりのないやつだな」

「油断して誰かにとられたら嫌だろ?」

『(話に入っていけない、)あの、その』

「真雪さんすごくドレス似合ってます!可愛いです!」

『っえ!』


私他のところも廻ってきますね、と言おうとしたが、立向居くんのド直球な褒め言葉にまたまた顔に熱がたまる。言った立向居くんも恥ずかしかったのか、周りをキョロキョロ不自然に視線を動かしていた。
すると、ある一点をみて守くんの姿を発見し、瞬時に声をかける。そちらに振り向くと、タキシードに着替えた守くんがその格好に慣れなさそうに歩いてきた。
日本じゃめったに正装なんてしないものね。


「ふっ、ふふふ」


守くんのところに行こうと足を一歩踏み出した瞬間聞こえてきた溢れるような笑い声。バカにしてるようにも聞こえる。
皆が視線を向けるのはイギリス代表ナイツオブクイーンのキャプテン、エドガーさんとエスコートされている冬花さん。


「いや失礼、あまりに似合っていたものだから」


そのまま言うこと言って、エドガーさんは冬花さんと別の場所へ移動しようとする。
でも、この雰囲気は険悪で。


「ちょっとまっていただけますか」


目鏡さんの声に振り返るエドガーさん。


「今のはうちのキャプテンに失礼ではありませんか」

「はははっ、困るなあ誤解してもらっては。私は褒めたのですよ」

「褒めたア?」

「ええ、だから言ったじゃないですか、似合ってる、て」

「お前なあ!」

「やめろ綱海」


目鏡さんだけではなく、土方さん、綱海さんもエドガーさんの言葉に苛立っている。

このままでは、せっかくのパーティーが、
何とかしなくちゃ…。