鬼道から見た少女
やってしまった、とイナズマジャパンの司令塔である鬼道は思った。
ビックウェイブズ戦という大切な試合の途中で、足を痛めてしまうとは。普段通り、マネージャーに手当てをしてもらおうとベンチに腰を落とし、春奈が手当てをしてくれるのかと思ったが、鬼道の前に座り込んだのは世界大会からマネージャーになることになった白露真雪。
初めて紹介された時は驚きはしたが顔には出さなかった。
彼女は優れた分析力を持っている、イナズマジャパンを必ず強くしてくれる、と久遠監督が言っていたが、正直のところどこが優れているのかわからなかった。
確かに顔は小さく、目はクリッとしてキラキラしている。一般的にすごく可愛いのだろう。
しかし中身はテレビ越しとは違い、すぐに不安になり涙を浮かべ、すごく弱気な少女だった。
鬼道がそんなことを考えていると、救急箱を持った真雪が鬼道の足に優しく触れジッと見つめる。
それから彼女が口にしたのは一般的な知識よりも優れた処置方法だったと思う。
自分の医療の知識が優れているわけではないからよくわからないが、彼女の処置は正しく、すぐに治ったのだ。
久遠監督が言ってたのは、医療知識が優れている、ということなのか。
そんなことを考えながら鬼道は部屋で今日の試合を振り返っていた。
そして、試合でのデータを元に、フォーメーションや必殺技、個人の能力を纏めて一息つくために食堂に向かった。
みんな試合で疲れ、夕食後のこの時間は自室でゆっくりしているのか、合宿所の廊下や階段はしんと静まり返っていた。
食堂のドアを開けると、そこには今日は鬼道の頭の半分の割合を占めていた張本人がいた。
『すー、すー』
「…(寝てる、のか?)」
そっと近付くと、椅子に座り、机の上で腕を枕にして横向いて眠っていた。そのため、髪の毛が邪魔で息がしづらそうと思い、顔にかかっている髪の毛をどける。
『んっ』
微かに漏れた声に、起こしてしまったかと焦るが、すぐに元の寝息が聞こえ安心する。
そして、気付く。
「これは…」
真雪が枕にしている腕の下や、机の上にはたくさんの資料があり、細かく纏められている。
ワープロで作成したものもあれば、手書きで書き込んでいるものもある。
その内容に正直驚く。
鬼道と同じ考えのものもあれば、自分じゃ気付いていない点のものもあり、それを手に取り目線で追うと、確かにこの特訓方法は自分たちのためになるものだろう、と納得する。
それから、今日の試合に出たメンバーの個人個人の能力の変化や、改善点、などが纏められている資料もあった。
「なるほどな」
医療の知識だけではなかった、というわけだ。
天才ゲームメーカーと言われているが、この人の方がよっぽど天才だ。
それに少し悔しい気持ちもあるが、それ以上に興味が出た。
おもしろい…
「俺たちを世界の頂点まで導いてもらおうか、真雪」
『ん…、んん、……ん?あ、れ、鬼道さん?』
目が覚めた真雪は、自分の頭を撫でる鬼道が不思議でたまらなかった。
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鬼道さんは興味から惹かれていく