佐久間から見た少女

テレビに出ている人物なんて、誰もが同じようなものだろう。
そう思っていた。特にサッカーにしか興味のなかった自分は、俳優や女優、タレントなどに興味はなく、テレビに映る人はみんな同じように見えた。

しかし、部活が休みの日、新しいスパイクを買うために人通りの多い道を歩いていると、ビルのモニターで広告のようなCMが映った瞬間、この場にいた人達の視線はモニターに釘付けだった。
いや、実際はモニターでも、CMの内容でもない。一人の少女の姿に皆が魅了された。自分もその一人だった。

それが流れ終わるまで皆、信号が青になっても突っ立ったままだった。
違う広告が流れると、意識を取り戻し数秒前と同じ行動にうつる。自分も足を進めるが、周りの声が聞こえてさりげなく聞き耳を立てた。


「今の、映画のワンシーンかと思った…」

「すごく綺麗だったね、新しい女優さんかな?」

「あ、これじゃない?調べたら出てきた」

「…白露真雪。13歳、て若!!まだ新人みたいね」

「そんな感じ全然しなかったのに…」


白露真雪、自分と同じ歳。
同い年と感じられないくらい大人びた雰囲気があった。

それから自分は、あっという間に白露真雪という人物に引き込まれた。
正直、一目惚れで憧れの存在だった。

ただ、手の届かない存在であることはわかっていたので、憧れるだけでよかったんだ。


まさかそれが、180度変わるなんて、中学一年の自分にはまだ知らないことだった。







「白露、真雪…?」


イナズマジャパンの応援には何度か行った。それに諦めずに日々特訓もしていた。
その努力が報われたのか、吹雪と緑川の代わりに俺と染岡が代表候補に選ばれた。

そして、イナズマジャパンの試合を観るとき、新しいマネージャーが二人いることにも気付いた。
一人は紫の髪に大人しそうな女、もう一人はいつも試合中は帽子と眼鏡をかけていたので素顔はわからないが噂では白露真雪だと聞いていた。

まさかな、なんて思いながらも期待している自分がいた。

そして、それはやはり本当のことだった。
空港で初めて皆の前で改めて紹介され、飛行機が飛び立つ時間まで自由時間。その時、自分の元に彼女が来たのだ。


『は、はい…!その、よろしくお願いします』

「よ、よろしく!」


テレビで見るよりも、よっぽど華奢で、人見知りな感じがして、少しおどおどしていて、放っておけないタイプの女の子だ。

これはこれで、俺の胸はきゅんと高鳴った。



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佐久間は一目惚れ