傍観者A視点




※大学設定
傍観者A(モブ)視点




私は大学一回生の女子だ。
私が入っているサークルではとても人気のある剣城京介さんという三回生の先輩がいるのだけど、噂がある。

今日も打ち上げで、大勢が集まっている中、誰もが剣城さんの近くに座ろうと先輩後輩関係なくがんばるが、必ず彼の横には一人の女性がいる。


「なに飲む?」

「烏龍茶」

「またー?たまにはお酒にすればいいのにー」

「俺の勝手だろ」

「はいはい」


剣城さんの横には必ず座っている女性、同い年でそこそこ男の人にも人気がある。
誰も確実に聞いたことはないが、この雰囲気からして恋人なんだろうとわかる。

それでみんな、諦めてしまうわけだ。

が、今日は少し違う感じだ。
少し時間が経って酔いが回ってきた人もいれば、シラフの人もいる。


「京介くーん!飲まないの〜?」

「俺はいい」

「ええ〜、あ!じゃあ私、おくってもらおうかなあ」


三回生の剣城さんと同い年の美人な先輩。
先輩のその発想に、何名かが私も、とゆわんばかりに距離を詰める。

彼女(仮)さんはどうしたのだろう。こんなことになってほっておくわけがないだろう。

ちらっと見ると、下を向いて少し震えているように見える。
やはり怒っているのだろう。


「剣城!!!」


ばん!と机を叩き、女子のせいで離れた位置にいたが剣城さんの横に戻って襟を掴みぶんぶん動かす。

周りは、
お?痴話喧嘩かー?見せ付けやがってー!もっとやれー!
などなど、酒が回ってるのかひやかしている。


「ちょ、おい、やめろ!」

「あんたねー!なに女侍らしてんのよー!うう」

「おまえ、今日は飲みすぎじゃないのか?」

「うるさあい!!もう少しで迎えにきてくれるからいいのよー!」

「迎えって、まさか、」


心なしか、剣城さんが嬉しそうな顔をしてる気がする。
あの剣城さんが、珍しい。

それからというもの、剣城さんの送り狼狙い女子ががんばるが、彼女さんのガードもありなかなかアピールができない。

そんな中、店の扉が開き、何人かがそちらに視線をうつす。
あ、あの人も知ってる。同じサークルだけど、部署が違うから飲み会同じ日だったことはないけど。


「よ!剣城!葵!迎えにきたよ〜」

「はあ、やっぱ空野が連絡したのはおまえだったか」

「ふっふーん!剣城!来たのは天馬だけじゃないわよ!」

「わ〜、葵相当飲んだな」


松風さんから見ても、彼女がべろんべろんに酔っているのがわかるらしい。
その松風さんの後ろからひょこっと顔を出した女性。


『京介くん!』

「やっぱ美羽も一緒だったか」

『うん!!天馬くんからお誘い受けちゃった』

「俺は葵から美羽も連れて来てねー、て言われた」

「私は〜、美羽に会いたかったからあ!」


もう一人、クリーム色の髪の女の人。あの人も同じサークルで松風さんと部署が同じ人だ。
この四人はサークル内では美男美女で有名で、みんな中学生の頃からの仲らしい。

日向さんと松風さんが空野さんに絡まれているのがチャンスと思った女子たちは、剣城さんに近付く。


「京介くーん、空野さん帰っちゃうんでしょ?一緒に帰らな〜い?」

「あ、ずるーい!あたしが言おうとおもってたのにー!」

「早い者勝ちよ〜」


すごい先輩たちの戦いだ。
自分も剣城さんが好きだけど、この戦いに入れるほど肝が座っていない。

皆それぞれ自己主張するが、剣城さんは顔色一つ変えず、松風さんと一緒に来た日向さんを空野さんから奪い返すように、腕を引っ張り横に座らせた。


『どうしたの?京介くん』

「どうせあいつらまだ帰んねーだろ、美羽も飲めよ」

『え!?私がお酒弱いこと知って言ってるでしょ。酔いつぶれたらどうしてくれるの!』

「空野は天馬がおくるだろ。おまえは俺がおくってやるよ」


剣城さんから放たれた言葉に、周りで狙っていた女子たち、こっそり耳を立てていた人たちが一斉に反応する。

本人はスルーだけど。


『ええ、どうしよっかな』

「おら、はやく飲め」

『んぐぐ!京介くんさては、酔わせてそのままお持ち帰りしようて考えてるんじゃないでしょね!!』

「………」

『え、ちょと、冗談で言ったのに本気の顔やめてください』

「さあ、どうだろな」

『(きゅん)その顔はずるい』


剣城さんが少し悪い顔をして微笑んだことで、数名が顔を真っ赤にした。

それより、この二人の会話を聞いていて、自分たちには大きな勘違いがあったようだ。


「ちょ!ちょっと待って!京介くんって空野さんと付き合ってるんじゃないの!?」

「へ?私が剣城とー?ないない!」

「え、じゃあ、」


先輩たちの視線は空野さんから日向さんに向けられる。


「美羽?」

『ん〜?なあに?』


はやい。酔いがまわるのがはやすぎる。
呂律が回っていないのか、普段も少し抜けたところがあるが、それ以上にふわーんとしている。


「え!あんたたちもしかして私と剣城が付き合ってるて思ってたの!?」

「あたりまえでしょ!いつも横にいてるし!」

「吃驚しすぎて酔いが冷めてきたわ。どう考えてもあそこがカップルでしょ」


指差した先には、剣城さんと日向さん。

酔いが回ってる日向さんのほっぺたを剣城さんがつつく。その指を日向さんが阻止すると自然と絡み合う手。
気分がいい日向さんは剣城さんの肩に頭を乗せている。その頭を優しく撫でる剣城さん。

誰がどう見ても恋人オーラが出ている。


『京介くん、ねむくなってきちゃったよう』

「起きてねーと家に帰れないぞ」

『んんん、京介くん家とまっちゃだめ〜?』

「まあ、明日は授業ないしな」

『えへへ、やったあ』

「(計画通り)」


あんなに幸せそうな、優しそうな表情をする剣城さんは見たことがない。


「てことで、あんたたち諦めなさいよ〜。私は剣城に女が寄り付かないようにそばにいただけだから」

「「「………」」」

「ちなみにあの二人付き合って、えっと、8年目だから」

「誰が寄ってこようと二人とも眼中に入ってないみたいだし」

「剣城が飲み会でアルコール取らないのは美羽を思ってのことだしね」


まじですか。
これはみんなおとなしく引き下がるしかないですね。
私も彼氏欲しくなってきちゃった。剣城さん以上の人なんてそうそういないと実感したけど。