そう、私はいつも通りに学校に行って、剣城くんが部活終わるまでサッカー棟で寝てた。
寝てただけなのに、起きたらここどこ。否、場所はわかってる、ただ受け入れるのに時間がかかるだけで。
私が目を覚まして周りを見れば何度も見た景色。
十年前の修也くんたちが使っていたサッカー部室。
そこを出てグラウンドを見ると、予感はあたりくらっと目眩がした。
頭にバンダナをつけた円堂さん、でも身長は低く顔つきもまだ可愛らしい。
修也くんもワックスで髪の毛を固めて立てている。鬼道さんもゴーグルにマント。
この姿は私がよく知っている、いつも私の面倒を見てくれた人達。
嬉しいと思う反面、まだ困惑があるけど。
まさかの、タイムスリップ、?
じっと、みんながサッカーをしているのを見ていると、近くに来ていた人に声をかけられた。
「見学者の方ですか?」
『あ、秋さん!』
ジャージを着てヘアピンをつけている、サッカー部の第一のマネージャー。
嬉しすぎて思わず名前を呼んでしまったので、彼女は首を傾げて私を見た。
「えっと、どこかで会ったことあるかしら?」
『あ!いえ、その、私が知ってるというか何というか…』
秋さんを困らせてしまった。
きっと、私の小さい頃の姿は知っているだろうけど、成長した姿はそりゃ知らない。
なんて説明したらいいのか、と悩んでいたら私の知っている声より少し高い声で秋さんを呼ぶ声。
「おーい秋!どうした?」
「あ、円堂くん!何でもないよ!」
なかなか戻ってこないマネージャーを心配したのか、練習はいつの間にか休憩になっていて、みんな水分補給をしていた。
何名か同じように気になったのか、こちらをじっと見ている。
修也くんだ…
「………!」
修也くんがこっちを見ていたので私も修也くんを見ていると目を見開き、持っていたドリンクを落とした。
周りはそんな修也くんに声をかけるが、修也くんの耳には届いていないようだ。
私も急に動かなくなった修也くんにどうしたんだろ、と思ったが急にダッシュをして私の元まで来た。
「美羽!?」
『え、』
修也くん、私がわかるの?
「え、豪炎寺くん、美羽ちゃんはもっと小さくて、え、え?」
「美羽、だよな」
『修也くん!!』
私のことをわかってくれた。すごく嬉しい。
感極まって飛びつくように抱きついた。修也くんだ、間違いない。
「え!?本当に美羽ちゃん!?」
秋さんの驚く声や、少し離れたサッカー部の絶叫。
私、化け物でもなんでもないんだけど。
「美羽、お前いつからそんなに大きく」
『えへへ〜、私今中学一年生なんだよ!』
「そ、そうなのか、ずいぶん急な成長だな」
「違うだろ!」
おっと、まさかの円堂さんからツッコミを受けてしまった。
とりあえず、円堂さんに連れられて、ベンチまで来た私は、そこに腰かけた。もちろん横には修也くん。
『修也くーん修也くーん、まさかこの歳の修也くんにもう一度会えるなんて!』
「その様子だと、美羽は未来から?」
『わからないの、教室で寝てて、気がついたら部室にいて、』
頭の回る鬼道さんに聞かれたけど、一番知りたいのは私だ。
「それにしても美羽ちゃんすごく可愛くなりましたね!」
「ほんと、可愛らしかったけど、大人っぽくなったわ」
『や、春奈さんも秋さんも褒めても今は何も持ってませんよ〜!』
「恋人の一人や二人いるんじゃないんですか!」
いや、二人いたらすごいよ。だめだよ。
春奈さんの言葉に真っ先に反応したのは修也くん。体が微かにビクッと反応していた。
『恋人はいないですけど』
「ほっ」
『すごーくすごーく大好きな人がいるよ!』
「!!?」
きっと、私の時代のサッカー部の前で言ったら、みんな剣城くんてわかるだろうけど。
私の言葉に春奈さんが年頃の女の子の反応を見せてくれる。
「どんな人ですか!!」
『え、えっと、サッカーしてるよ?ポジションはFWでエースストライカー!身長が高くて、目が切れ目で、普段は無口かな?でもすっごく優しくてかっこよくて人気者なの!』
「(豪炎寺くんみたいな人ね…)」
「サッカーしてるのか!」
私が目をキラキラして話すと、春奈さんもキラキラして頷きながら聞いてくれる。
やっぱり女の子同士の会話は楽しい。ちなみに円堂さんもサッカーをしてるの時点から目が輝いていた。
「美羽ちゃんがそこまで言う人!見てみたいです!」
「私も美羽ちゃんの好きな人見てみたいな」
『すごーく!かっこいいよ!!一目惚れ!!修也くんと不動さんを足して二で割った感じかなあ?』
きゃっきゃっうふふな私たち女子とは裏腹に、固まって動かなくなった修也くんを円堂さん以外の男子が慰めていたことは知らなかった。
「豪炎寺、元気出せ」
「美羽が、美羽が」
「だめだな、これは」
「「「(豪炎寺と不動を足して二で割る…、優しいのか?)」」」