炎
2年の初めのテスト期間だし、テスト範囲を知るためと対策のプリントとかもらおうと珍しく学校に登校する。勉強は普通にできたので、懐かしいと思いながら公式を覚えたり振り返るためには、やっぱ対策は必要になる。
ちなみに、妃鞠のメンタルケアのおかげでこの一年で、不登校者が減少した。理事長が大喜び。
制服に着替えて、キャップを被る。
コレ前世での癖で、一応そこそこ有名なサッカー選手だったので、身バレ防止。
マスクはつけたりつけなかったり。
『いってきまーす!』
「帰りにいつもの醤油買ってきてくれ」
『はーい』
響監督のお使いも忘れずに。
そして雷門中に着き、保健室に向かっている途中で角を曲がると前にはキョロキョロしている私服の人が。
頭の回転が追いつかず、妃鞠が整理するより前に当人が振り返り、ばちりと目が合う。
『あ、おはよう?(見覚えがありすぎる…!)』
「…ああ、おはよう」
白紙のワックスで固めた立ち上げヘア。
はじめまして、未来のエースストライカー豪炎寺修也くん
私服で学校にいる、まさか、、と思い、アニメ一話を思い出すと、転校の前日に円堂たちと河川敷で出会っている。あれぞ伝説の一ページ目。
そういえば、円堂が今日は河川敷でまこちゃんたちと練習すると連絡がきてた。
…もしかして今日なのでは?
『えっと、何か探してる?』
「…職員室に行きたいんだが、」
『職員室ね、おっけー案内するよ』
「良いのか?」
即了承する。
確かに雷門はマンモス校なので迷う。うんうんと一人で頷く妃鞠に不思議な視線を向ける。
豪炎寺がいたのは保健室の前だったので、もしかしたら保健の先生に聞こうと思ってたのかも、と思い自分の用事も思い出す。
一言豪炎寺に断りを入れてから、保健室に入る。
『先生いる?』
「はーい!…妃鞠ちゃん今日は来てくれたのね!どうする何する!?」
『あとでね!ちょっと道案内するからこの荷物頼みます〜』
「あら?お友達と一緒なの!珍しいのね!荷物は見てるわ、ごゆっくり」
荷物を先生に渡して、扉の前に待機してる豪炎寺の元へ。
お待たせ、さて行こう、てことで職員室までご案内する。
『職員室で何するの?』
「明日からここに通うんだ」
『そうなんだ!私二年生なんだけど、君は?』
「同じだよ」
うわ、なんか声が優しいな、と思いながらも自分の何も知りません演技すごくない?と感心する。
『同じだ、嬉しい!私、名字妃鞠、よろしくね』
「豪炎寺修也だ。よろしく」
やっぱり迷ってたんだ〜、この学校広いよね〜、とか他愛のない話をする。あくまでも部活関係の話に触れないように。今の豪炎寺にはこっちから触れるのはタブーだからね。
話してたらあっという間に職員室へ。
『ここだよ』
「ああ、ありがとう」
『いえいえ!じゃあ私は…』
中まで案内せずに、扉の前で撤退を決めようとした瞬間、内側から扉が開く。
「お…、君は豪炎寺修也くんだな!待っていたよ」
「遅れてすみません」
「迷っているかと思って様子を見に行こうとしてたんだ。…ん?」
豪炎寺と先生が話してるのを横目で見ながら、そっと忍足でその場から去ろうとする妃鞠に、先生が気付く。
「名字!今日は来てたのか!」
『はい、あの、先生。私が来てることは…』
「おーい!にっしー!名字きてるぞ!」
『あああ!言わないでよ!』
職員室の中から「なに!?捕まえろ!」と若い男の声が聞こえて反射的に駆け出す。
「こらー!名字!廊下は走るな!」
『わー!許して!生命の危機!…楽しかったよ豪炎寺!また会えたら良いね!明日からがんばって!(円堂からの熱いアプローチに)』
早口でさよならを告げる。ほんの数秒の出来事に、珍しく驚いた表情の豪炎寺。その豪炎寺をレアだ!と目に焼き付けてから背を向けダッシュ。
保健室に戻り、先生にテスト対策のプリントをもらい、お茶にする。にっしーの声が聞こえたら妃鞠専用になってるベッドに潜り込み隠れるため、ここにいるのはバレない。
「そういえばさっきの私服の男の子」
『ん?』
「顔が良かったわね〜」
『でた、めんくい!』
「女の子も好きよ!それに、大人になればわかるわ、美形のありがたさが」
『先生まだ若いのに…』
しかし美形が目の保養はわかる。
この後一人の生徒が登校してきて、お仕事へ。
絶対卒業までに不登校者0にしてみせる…!
豪炎寺修也。寡黙だけど、家族思いで、心の内には熱い思いが人より何倍もあって、いつでもみんなのヒーローで。円堂と共に、雷門伝説の基盤になった人。
まさかこの先、1番長い付き合いになるなんてこの時の私は1ミリも思ってもなかった。
