夢と親友

人生で眠っている間に夢を見たことがない人はいないだろう。かく言う私も、毎日ではないが夢をよく見る体質だった。
アニメが好きだったので、その一人としてアニメキャラになっていたり、現実の知り合いとよくわからない世界に閉じ込められて脱出を心掛けたり、魔法使ってみんなを助けたり、などなど。
たまに友人や身内が亡くなる夢を見て、起きた時に涙を流すこともあった。

たくさん夢を見たが、イナズマが大好きだった私は、都度その世界に入り込む夢を見た。
夢は急に場所が変わったり、おかしなことが起こったりするのが多いが、イナズマの夢はなにかとリアリティがあった。
例えば、響監督の若い頃と出会ったり、円堂くんのお母さん(温子ちゃん)や影山と友人になったり、微妙にメインキャラではあるが、サッカー少年たちとはあまり関わることがなかった。
その夢が、途切れることなく、きちんと時間通りに進んでいた。
全員、はじめまして、から、またね、で夢が覚める。たまに別の日の夢で、同じ人に出会うこともあった。あの世界のみんなは夢の中でも優しくて、やっぱりいい世界だなと認識させられた。


そして、その夢の出来事が現実のものだということは、こっちの世界に来てから知った。

正剛くんと初めて会って、夢の出来事が現実だと教えてもらった。つまり、他にあった人たちも、私のことを覚えていてくれるのだろうか。
そう期待をして、私は今雷門中の正門前に立っている。

ここに来ることになったのは、正剛くんの一言がきっかけであった。

「妃鞠、学校はどうするんだ」

私としては、過去に中高大学卒業してるわけで、別に学校行かなくても良く無い?学費浮くし、と思ったのでそれを伝えると怒られてしまった、解せぬ。
まあお金は定期的に振り込まれるから心配はないんだけど、世間一般的に在籍せずにブラブラしてるのも怪しい。
というのもあって、小学六年生の三月、雷門中にきてみた。影山率いる帝国学園と迷ったが、帝国は校則とか厳しそうだし、なにより雷門中を選んだのは、ここにいるのが雷門理事長と夏未ちゃんだから。

そう、実は理事長と夏未ちゃんとも夢であっている。だから、もし、私を覚えていてくれたなら、ワケを話して入学させてもらえないかと。

世間は春休み、敷地内からは部活動の声は聞こえる。お邪魔します〜と呟き、足を踏み入れる。
こそこそ進みながら、今はまだ物置にされている過去のサッカー部を目に焼き付ける。
ここをサッカー部として始動させるのは私ではない、来るべき人がもうすぐ来る、と考えて理事長室に向かう。
持ってきたスリッパを履き、理事長室を探す。ゲームをしたけど、あんまり場所は覚えてないから、自力でなんとか辿り着けた。今日は来ているか分からないけど。

ドキドキしながら深呼吸をして落ち着かせる。
ノックを3回、、、

「…どうぞ」
『失礼します』

扉を開ける。
ここからは見えないが、おそらくパソコンの前に座っている理事長。そして、来客用のソファに座っている夏未ちゃん。

「…君は、」
『…私のこと、わかりますか?』

夏未ちゃんと理事長と会ったのは、おそらく数年前。
夏未ちゃんがまだ小さかった頃で、私はあの頃と変わらない姿だけど。

「ま、まさか…!」
「…妃鞠姉様?」

この反応的に、二人とも覚えてくれていたのだろう、そして、確信した。
正剛くんだけじゃない、やっぱり夢であった人はみんな、私の友人だ。

『久しぶりだね、夏未ちゃん、おじ様』
「どうして、君は、あの頃と、」
『色々あったんです。…その話と、一つお願いがありまして』

驚きを隠せない二人に、正剛くんと同じ話を簡潔にする。
夢で二人に会っていたこと
夢だと思っていたこと
死んでしまったこと
こっちの世界で目を覚まして若返っていたこと
今はこっちで第二の人生を過ごしていること

「まさか、そんなことが、」
『私もびっくりしました。でも、現実だって、やっぱり二人に会って実感しました』
「…妃鞠姉様っ!」

ソファに座ってきた夏未ちゃんが涙を浮かべながら立ち上がる。
そしてそのまま、私の元に来て手をぎゅっと握る。

「姉様が生きているなら、それでいいんです」
『夏未ちゃん、』
「もう一度会えた、すごく嬉しいわ、」

プライドの高いお嬢様が、私のために涙を流してくれるのが嬉しくて、可愛い可愛い小さかった夏未ちゃんと同い年になったのも、違和感があるが。

「状況は理解できた。私も君にもう一度会えて、夏未が嬉しそうでなによりだ」
『私も、まさか夏未ちゃんの涙が見れるなんてね』
「な、なにをっ!」

ああ、後ろ向いちゃった。
理事長と目を合わせて微笑む。少ししか会えなかったけど、こんなに懐いてくれていたなんて嬉しい。

「それで、お願いというのは?」
『実は、非常に申し上げにくいことなんですけど、、この春から私も雷門中に通いたいんです』

無理なお願いとはわかっている。
過去に数回あっただけの少女の大きなお願いは、なかなかのリスクがついてくるもので。
最悪断られたら、帝国へ、と思っていたが。

「そんなことか。もちろん構わないよ」
『え?いいんですか!?』
「YES!君に恩返しができる、それぐらいの手助けはさせてもらうよ」
『私、何もしてないのに、』
「そんなことはない、あの頃の夏未を引っ張って前へ進む光をくれた。親からすれば子供を救ってくれたことが何よりも感謝しきれないことだ」
『、ありがとうございます』

夏未ちゃんと会った時、母親を亡くして暗闇に閉じこもってしまっていた。
私がそれを何とかしたとは言えないが、私と会って、話して、遊んで、夏未ちゃんは昔のように笑顔を取り戻したという。

『ですが理事長』
「おじ様でいいのに、、」
『いいえ、これからはきちんとします。が、私学校はほとんど不登校になると思いますので!』
「なんだって?」
「どうして!?」
『過去に卒業してるし、正直めんどくさい、、』
「姉様???」
「妃鞠くん、思っていても言ってはいけないよ」

失礼本音が出てしまった。

「さすがに理事長としてそれを良しとするわけにはいかないね」
『ですよね、、そこを、なんとか、』

お願いします!と普通は理事長として見過ごせないお願いをする。
悩んだ挙句、理事長は提案してくれた。

「テストは必ず受けること。それから、そうだね、色々あって不登校になっている生徒もいることだし、どうかね?保健室登校は?」
『保健室…』
「体調不良やクラスに馴染めない人は何人かいるから、その子たちと同じように来れる時は保健室にきて勉強してくれればいいさ」
『ぜひ!それでお願いします!』
「それから、ついでと言ってはなんだが…、その子たちのメンタルケアも頼めるだろうか?」
『メンタルケア?』

心を閉ざしたり、ストレスでメンタルが崩れてしまっている生徒に対して、ヒアリングしてほしい、と。それで不登校者が減って、生徒が気持ちよく学生生活を楽しめるようになることが理事長は望んでいる。
応えれるかはわからないが、やれるだけやってみることにする。大きな我儘を受け入れてもらった恩でもあるし。

理事長本当にありがとう。夏未ちゃんはまだちょっといじけていたけど。

『あ、それから夏未ちゃん。私のことは妃鞠って呼んでよ!今は同い年なんだから』
「で、でも、」
『姉様としての、最後のお願いよ』

私が夏未ちゃんからみて、姉様としての最後のお願い。しぶしぶ、受け入れてくれた。
それから、少しもじもじして何か言いたそうにしていたので問いかける。

「あの、私のことも、、」
『…夏未って呼んでもいい?』
「!、仕方ないわね!」
『改めてよろしくね、夏未!』

赤い顔がぱあっと嬉しそうに笑う夏未可愛すぎでは?画面越しではこの年の夏美はツンツンしててたまにデレるお嬢様だったからか、破壊力抜群。
夢の中の夏未はまだまだ小さかったから愛でる対象だったし。

私たちのやり取りをすごく優しい眼差しで見守る理事長に、手続きのことを確認すると、後日雷門にきてほしい、とのことで。
今日は夏未に校内を簡単に案内してもらって帰宅した。