泣き虫
たくさんの仲間に囲まれて、卒業試合を見ることができて、過去一泣いてる。
卒業式終えて、サッカー部の部室裏でしゃがみ込み泣いてる横に夏未が一緒に座ってくれる。お嬢様の夏未が親友のために地面に座るのがえもい。きちんとハンカチは敷いている。
『すごく、すごく、素敵な時間だったんです』
「ええ、そうね」
『高校生になることに憧れもあったんです』
「ええ…」
『憧れて、早く大人になりたいなって思って、』
「…」
『でも、でも、今がすごく楽しくて、眩しくて、それで、それで、』
「…それで?」
『みなさんと、離れ離れになりたく、ないよぉ、うぅ、』
「名前…」
夏未さん声が優しいし、肩ポンポンしてくれる。
わんわん顔を隠しながら大泣きする。
「みんながそれぞれの道に進むことは仕方ないことよ、大人になるってそういうことでしょう?」
『、っん、わかって、るんです』
「…寂しいのよね」
『んん、さみ、しいよぉ、やだよぉ、』
柄にもなく子供のようにわんわん泣く。それを優しい顔で寄り添いながらも、夏未も目頭が熱くなってくる。でも、親友だけの前ならまだしも、寂しいからと言って"みんなの前で"泣くわけにはいかない。プライドの高いお嬢様は。
それにそろそろ、この可愛らしい泣き虫を独り占めするには大勢に恨まれてしまう。
全国のかつての仲間や、帝国も集まっていたが、気になった人が数名木や茂みの裏、部室の影から覗きにきている。
現に、疾風少年が飛び出してきそうで、雪原のプリンスも泣きそうになってるし、天才ゲームメーカーは手を出しては引っ込めを繰り返して、炎のエースストライカーは瞬き忘れるぐらいジッと見つめている。元新聞部マネージャーなんて同じように大泣きしている。
さてさて、そろそろ泣き止んでもらわないとね、と夏未が思って立ち上がり、少し待っててね、と声をかけて幼馴染風丸のところに向かって姿が見えなくなったところで、これまた運命かと思うタイミングで別方向から偶然通りかかった1人の男。
「また泣いてんのかよ」
『う、うぅ、ぅあぁ』
「今日はいつも以上じゃねえか」
泣いてる名前の前にしゃがみ込み、膝に肘をつき、頬枝をつく。
呆れたような顔をしているが、そこには隠れた愛情が見え隠れしている表情が。
『みな、みなさんと、ばらばら、やだ、やだよう』
「ずっと一緒なんて無理に決まってんだろ」
『うぅ、わかって、ま、でも、でもっ』
「…はあ」
相手のため息に呆れられたと心を抉られた感覚が。元々ウジウジしてる人は嫌いなタイプだろうし、よく今まで関係が切れなかったものだ。サッカーという繋がりがあったからだろう、卒業して自分はサッカーから離れてしまう、そうなるとこの関係も薄く薄く、やがては切れてしまうのか。
自己完結したらまたまた涙があふれた。
『やっぱり、不動さんと縁切れちゃうの、やですうぅ!』
「はあ?…切れねえよ」
『だって、不動さん、めんどくさ、て、いつも。でも、サッカー部だから、だから、繋がってただけで、離れ、ちゃうよお、』
泣き虫はめんどくさい、うじうじしてる奴は見ててイライラする、関わりたく無い。不動が散々言っていたことだ。
「…少しは考えろ、阿呆」
『いっ!』
おでこを軽く突かれる。
泣きながらなんとか目を合わせると、いつものように呆れた、でも、なんだかいつもと違うようなそんな感情が感じとれる優しい目で真っ直ぐ名前を見ていた。
そんな目を向けているなんて思ってもなかったので、涙が止まる。
「オマエこそ、」
ぽかんとしてる名前の耳元に顔を寄せる。
「逃げんじゃねえぞ」
我慢できなくなった風丸や音無が飛び出すまで後…
ifアレス主も原作通りの卒業を迎えたら
「妃鞠ちゃん?」
『ん〜?』
「もしかして、寂しくなっちゃった?」
『…ん、そうだね』
寂しい、と呟いた言葉を聞いて、秋は驚く。
少し冗談混じりに問いかけた言葉に、いつものような明るい笑顔ではなく、儚げがあり、寂しさで溢れる表情だ。
卒業試合、みんなが笑顔あふれるなか、一人何かを失ったような表情でそれを見つめる。
「大丈夫?」
『…は、あは、むり、かも…』
無理して大丈夫を装い、せめて普段通りの声のトーンを出そうとしたが、震えて上擦ってしまう。
そして声を出した瞬間、目の奥が熱くなり、視界がぼやける感覚がして、慌てて後ろを向き顔を伏せる。
「「妃鞠ちゃん、」」
「妃鞠先輩、」
「妃鞠、」
人前で涙を流すことが何よりも嫌いなため、そんな妃鞠の涙に他マネージャーも心配そうに声をかける。
顔を伏せたまま、近くにいる響のお腹に抱きつきにいく。
「…オマエにも人の心があったか」
『…うるさいよ』
軽く腹パンをかます。
10代なんてあっという間で、貴重な時間なのに、過去の自分はサッカーに全てを捧げた。それが悪い事とは言わないが、当時すごく仲の良かった友人とは卒業しても会おうね!と約束をしても、やっぱりお互い大人になり、連絡取る頻度も少なくなり、疎遠になってしまった。
サッカー仲間もかけがえのない、大事な人たちだったが、昔からの知り合いが誰もいなくなったのはやっぱり心細くて、結婚式で、自分を除いた仲良しメンバーが参列してるのをSNSで見ると心の傷が抉られていく感覚に陥った。
『ずっとこのままがいい。何も変わりたくない、今が永遠に続いてほしい』
この仲間たちが簡単にバラバラになることなんてない。それはGOを見てた自分だからわかること。でも、そこには今いる人たち全員がいるわけではなく、数名しか登場しなかったのは、そういうことなんだ、て。
「…やり直せたオマエだからこそ、本気でそう思うんだろうな」
『…うん』
「だったらわかるだろう」
『なにが?』
「人が一生経験できないことを、オマエはできたんだ。ほとんどが望むことを、オマエだけがもう一度」
『…そうだね、私だけ、、ズルいね』
「なら今回は、オマエが繋げ」
『え?』
「離れるな、怖がるな、縋りつけ。鬱陶しいぐらい、ちょっかいをかけろ。…それを嫌がる奴らじゃねえだろ」
『、ん、うん…!』
ここで一気にタカが外れ、声を上げわんわん泣く。
卒業試合を終え、次は帝国メンバーも!となって賑やかな声の中、一人の少女の声が響き渡った。
初めはギョッとしていたメンツやこいつにも寂しいって感情あったんだな…と思っていた人たちも、こんな大声で泣いてるのは初めて見たため、徐々に心配にかわる。
「妃鞠ちゃん、そんなに泣かないで、」
「大丈夫?」
つられて涙目になる秋と冬花
「うわーん!妃鞠先輩〜!」
同じくギャン泣き春奈
「全く、これぐらいのことで、泣くなんて、ほんと、」
ツーッと一筋の涙を流す夏未
未だに響監督のお腹で泣いてる妃鞠。
突然のマネージャー陣の涙に戸惑いが隠せない選手たち。
一ノ瀬や土門は昔からの大事な幼馴染のそばに駆け寄り、鬼道は春奈のそばにいくと兄に抱きつき号泣、久遠監督は冬花のそばへ寄り添い、父親である理事長は夏未の頭を優しく撫でる。
響監督にしがみついている妃鞠の元にはもちろん、響監督がサングラス越しの目配せで呼び寄せた人が肩に触れる。
「な、妃鞠、」
『うぅ、わーん!円堂〜!』
声が聞こえた瞬間、響監督から離れ、ぐるりと円堂の方に向き直り飛びつく。
いつもなら受け止めてた円堂も、なかなか本気のタックルで思わず後ろに倒れ込むが、絶対に妃鞠に怪我をさせないように受け身を取るイケメン。
『円堂〜!円堂〜!』
「泣くなよ〜」
『ムリ…!!』
「無理かあ…」
『やっぱ離れたくない無理なのわかってるけど、、綱海のせいだー!!』
少し離れた位置にいる綱海がオレ!?とまさかの指名に驚きの声をあげ、周りはそんな綱海に疑いの眼差しを向ける。
「オレ何にもしてねえよ!」
「綱海さんデリカシーがないからね…」
「自分じゃ気付かないうちに何かしたんじゃないか?」
木暮と塔子に追い打ちをかけられ顔が青くなる。
「きっとさっきのだろう」
さっきの?とほとんどの人が疑問を浮かべる中、察した数名も。
「コイツらじゃねえと物足りない、さっき言ってただろう」
「あ?…ああ!あれか!本当のことだしな!」
『わーーん!!』
「また泣かせた…」
ジトーとした目で綱海を見る数名。
オレ悪くなくね!!?とあたふたする綱海。
拘束が解かれることなくずっとしがみつかれたままの円堂。
『わ、わたしっ』
「ん?」
『円堂とずっと一緒にいる…!』
「おう!あたりまえだ!」
『円堂とっ、結婚する…!!』
「お?」
「「は?」」
ずっと一緒と言われて嬉しそうに返した円堂だが、その後に続いた言葉に一瞬頭が真っ白になる。
ちなみに妃鞠も頭が回ってなくて、円堂といればみんなとも繋がれる、何より円堂のことは大好きだから良い考えじゃん!と頭弱弱になっている。
その妃鞠の発言に、ウブな子たちは顔を赤くし、リカのテンションは爆上がりで、数名は少し面白そうにその場を眺めたり、頭を抱えたり。円堂に好意を寄せる人達は焦りながらも妃鞠なら、でもやっぱり、と思ったり、
そんな中、密かに妃鞠に想いを寄せるものは…
「…お?どうした?」
『…円堂?』
ずっと縋り付いていた妃鞠は円堂の顔を見るために顔を上げると、円堂の視線は妃鞠の後ろで。
その視線を追いかけるよう振り返る前に、お腹と首元に腕を回されて立ち上がり、円堂とも距離ができる。
「それは、」
『えっ』
「俺が困る」
ぼそりと妃鞠だけに聞こえる声で耳元で囁くと、円堂と距離ができたことに安心し、拘束を解くと、自分の行動を思い出し焦ったのか照れたのか、少し顔を赤らめながら部室の方に駆け足で行ってしまった。
その言動に、
もちろん妃鞠の涙は引っ込む。
『…え?』
「ちょ!ちょっ!妃鞠!?今の何!?三角関係!?」
「私も涙止まりましたよ!?お二人はいつから!?」
「何を言われたのかしら?」
『え?』
何が起こったか理解が追いつかない妃鞠に、さっきまで大泣きしてた春奈も猛スピードでリカと共に駆け寄ってくる。夏未は大事な幼馴染がとられそうなことに少しジェラシーを感じながら問いかける。
目の前で起こったラブコメにピュアな学生たちは顔を真っ赤にさせたり、口元に手を当て乙女になったり。明王ちゃんやマックスに関してはニヤニヤ楽しんでる。
そんな空気に何が起こったか、泣きすぎて機能してなかった頭も理解しだすと顔に熱が集まる。
「卒業式マジックだあ…」
『士郎くんちょっと黙ってて』
あなたと違って彼は名の通り、熱い人なんだから。
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