最終決戦
爆豪がAFOを倒して、拳を突き上げスタンディングしようとしたが、力尽き倒れる瞬間、倒れないよう背中から支えるように抱きしめる。
『…勝己っ』
「…ン、デ…!」
『最高にカッコよかったよっ、ヒーロー…!』
その言葉を聞くと安心したように意識を飛ばす。
配信で闘っている爆豪を見て、不安と希望が混ざり吐き気がしていた。
負けることは考えていない。それより身体への負担が怖かった。心臓が止まった、あの瞬間を目の前にして、世界が止まったような絶望が押し寄せた。
それでも諦めたくなくて、願った。ずっと願って、エッジショット先輩と勝己自身の力で息を吹き返して、最後にもう一度、そばに行きたいと願った。
願ったら私の個性が叶えてくれた。
こんなにカッコよかったんだ、支える形になっても、最後まで倒れさせたくなかった。
配信が爆豪を映すのをやめたのを確認し、そっと横に寝かせる。
昔からずっと、私のヒーローだ。
後から知った話だけど、この配信には私もしっかり映っていた。
背中から支えたので顔は隠れていたけど、この髪色とボロボロだけどいつものコスチュームを知ってる人からしたら、モロバレであることを。
もうゆっくり休んでほしかったのに、病院へ向かってる途中に意識を取り戻した爆豪が、配信を横目で確認したら、爆破で飛び出して緑谷のとこまで行こうとする姿に、こんな状況なのに呆れてしまった。
これでこそ、爆豪勝己だ。
そんな勝己に憧れた私も、紛れもないヒーローなのだ。
名前の星に乗り、加速のために爆破をして最後の一撃を決める緑谷を二人で押す形になった。
こうして、最終決戦は幕を閉じた。
失ったものは大きかったけど、平穏な日常に戻りつつあった。
病院で治療を終えて絶対安静を言い渡された爆豪だったが、緑谷の病室に向かって、個性が消えた話を聞くと病室に入り、涙ながらに思っていたことをぶつけた。
弱くなったんじゃなくて、強くなった二人、それを伝えるオールマイト。
そこにいるのは最高のヒーローだった。
「かっちゃん、名前ちゃんは」
「アイツは、まだ起きねえ」
病室の外からガヤガヤ話し声が聞こえる。
「…勝己!名前ちゃんが、目を、…て、だからアンタは何で動けんのよ!!?」
名前を聞いた瞬間、身体が勝手に病室に向かう。
痛むはずの身体はなぜか痛みを感じず。
個性は使えないから自力で、足で、
はやく、はやく、はやく…!
ついさっきも訪れた病室の扉が開いていたので、勢いのまま入る。
ベットの上で上体を起こして、病室内にいる先生と話していた視線が、ゆっくりと爆豪を見る。
『…勝己?』
「名前!、オマエ、その目…」
『わ、やっぱり目立つ?さっきもね、、勝己?』
「…見えてんのか」
『見える見える、こっちはね』
宝石のような、キラキラしてる目が。
俺の個性を綺麗だと映していた目が。
俺をまっすぐ見つめてくるその目が。
『でも逆はだめだ、ぼやけてる』
輝きがなくなって何も反射しなくなっていた。
なのに、本人はへらっと笑っている。
何だよ、何なんだよ、出久も、名前も、何でそんな顔できんだよ
『……勝己、こっちこれる?痛むなら大丈夫』
「いけるわ」
ずっとぼやけてる方の目を見ているのがわかる。
何でそんな顔をするのか、心当たりがあるから。
「あん時、俺の個性で」
『違うよ』
勝己の心臓が止まる前、みんなで死柄木を押さえ込もうとした時、勝己の汗が、爆破が、私の目に触れた。
でも、あの時、あの爆破がなければ、私の頭は吹っ飛んでいただろう。良くても両目失明。
死柄木の手が、確実に頭を潰しに来ていた。
『言ったよね、私のヒーローだって』
『護ってくれて、ありがとう』
病室に来た時から目が赤かった、泣いたのに、また静かに涙を流す姿に天音も涙を流す。
謝らないでほしい、本当に護られたんだから。
今回だけじゃない、いつも、いつも私が危険に遭わないように、守ってくれてる。
『…それとも』
近くに来た勝己の頬に手を添える。
『この目になった私は好きじゃない?』
「んなわけねエだろ!」
即否定の言葉が嬉しくて。
私よりも痛いはずなのに、ぎゅーぎゅーと片手で抱きしめてくれる身体が嬉しくて。
『ほんとに?』
「ったりめエだろうが、どんだけオレがオマエのこと好きだと思ってんだ舐めんじゃねエぞ」
『え』
こんな正直に言うなんて思ってなかった。
本人も何を言ったか頭回ってないのかひたすらぎゅーぎゅーしてくるだけで。
心が温かくなって、ふわふわした幸せな気持ちになって。思わず涙が溢れながらも、ふふって笑いがこぼれたら、何笑ってんだ、と不貞腐れていた。
だがしかし、勝己は周りが見えていないのだろうか。
私はしっかり見えている。病室の扉からこっちを見ている口元を押さえた勝己の両親が。
病室にずっといる、静かに号泣してる私の親が。
この後、ようやく落ち着いて今の状況を思い出した勝己は勢いよく離れ、ギュン!と首をほぼ180度回転させて扉の方に視線を向けるとニマニマした自分の親がいることに。
「な、な、何見てんだアアア!!!」
「うっさい!静かにしなさい!!アンタが見せつけたんでしょ!」
「勝己くんこれからもうちの子よろしくね〜!」
「〜〜〜っ!守り殺してやらァ!」
嵐だ。
みんな重症だったけど、徐々に回復して学校にも通えるようになった。
お見舞いに来てくれた時に私の目を見たA組のみんなは、各々別の反応を見せてくれた。
やっぱり他人から見たら違和感あるのかなと思って前髪を伸ばすか、眼帯をするかと勝己に相談したこともあった。
「…隠すんか」
『どうしようかな、みんな気になってそうだし、』
「俺は、、見てえ」
オマエが嫌じゃねえなら、隠してほしくない、と。
『じゃあこのままでいいや』
無事全員退院し、順調に回復。
二年に上がって後輩ができたある日。
爆豪と轟のファンなのかガチ恋なのか、一年の子達に追いかけまわされていた。
轟は誰が見てもツラがよく、後輩に慕われるのもわかる。
対して爆豪。ツラはいいが内面の性格の悪さが表に出てるし、実際にヤンキーのような性格は全員が周知していた。関わるな危険を表した人。しかし、あの戦いで大活躍して憧れが勝ったのか、あの爆豪が、女子に、追いかけまわされている。
「いいの?」
『何が?』
「爆豪くん、追いかけまわされとるけど」
『なかなか見ない光景だよね、珍しい』
「彼女として何も思わないの〜!」
『?彼女じゃないよ?』
空気が固まった。
おかしなことは言ってないはず。
「え、あれ、ふたりは、あれ、好きで、あれ」
『お茶子落ち着いて』
「ええー!何で!付き合ってないの!?」
『うん。何も変わってないよ』
「いや、でも前から付き合ってたみたいな感じだったし、それが形になったって思ってただけで、関係が変わってないってことで、ちゃんとお互い好き同士で」
『お茶子、出久みたいになってるよ』
女子軍にぐいぐいこられたけど、本当に付き合っていない。
それに、関係が変わらなくても、ちゃんと勝己が私を想ってくれていることは伝わっている。
「でも、あれ。いいの?」
『……あれは、、、だめ』
三奈が指差した方はとうとう捕まった勝己の胸元に手を置いて顔を覗き込んでいる子。腕を絡めている子。手をそっと優しく触っている子。
勝己もこんなグイグイ来ると思ってなかったのか、イライラと焦りの表情を浮かべる。リハビリ中なので振り解く力の加減もできないし、個性は使えない。
モヤモヤした感情を抱きながら席を立ち、勝己と女の子たちに近づく。中には男子もいたけど。
個性を使って星の輝きで眩しくなって手が緩んだ瞬間に、勝己の背後からお腹に腕を回し、少し後ろに引っぱる。
『…あの、、だめ、です』
行ったー!!!ウオオオ!!!と後ろから女子軍と男性軍の声が聞こえるけど、嫌なものはやっぱり嫌だ。
『ダイナマイトは、みんなのヒーローだけど、爆豪勝己は、私のヒーローなので、今は、だめです』
ぐりぐり背中に額を擦り付けると、勝己の身体がビクッと大きく反応し、そのあとガッチガチに固まった気がする。
「あなた、」
後輩の女の子の声が聞こえる、ああ怖いよ。
この後私はこの子達に冷たい目を向けられるのだろう。人気者を独り占めするなんて。
「この…っ!」
この…!?それは殴る前の一声では!?とさらに勝己に抱きつく力を強めてしまった。
「この光景…!」
…え?
「配信で見た、、!」
「後ろからダイナマイト先輩を支えるステラ先輩!」
「顔は見えなかったけど絶対あの姿はステラ先輩!!」
「はあああ!生で!あの光景を再現してくれてる!」
「眼福!!!」
「尊い!!!」
「ありがとうございますありがとうございます」
そう、彼女たち+彼らはダイナマイトのファンであるがしっかり雄英の生徒であり、あの闘いを見ていたので、あの闘いを繰り広げた先輩たち全員は憧れなのだ。
その中でもダイナマイト推しからすると、あの場面でダイナマイトを支えスタンディングさせてくれたステラも英雄なのだ。そしてガチガチの推しである場合、ダイナマイトのステラに向ける目がしっかり恋してるということもわかっている。
出久みたいな熱量だな、と思いながらも思っていた言葉じゃなくて、おそるおそる勝己の背後から顔を出す。
「ダイナマイト先輩の背後からひょっこりステラ先輩…!」
「ステラ先輩のきょとん顔可愛いんだけど」
「なにこの絵面最高」
「ステラ先輩に抱きつかれて固まってるダイナマイト先輩ごちそうさまですありがとうございます」
「思考停止ステラ先輩いただきますありがとうございます」
「…何だてめエら!勝手に食ってンじゃねえよ!俺ンだ!!散れモブ共!!!」
「「「お れ ん だ … ! 死ぬ」」」
「一年すげえ…」
「なんだよなんだよ!爆豪ばっかり良い思いしやがって!俺だって、俺だってえええ!!!」
原作通りの場面だと、
「かっちゃん昔から女の子に距離置かれてたからね、慣れてないのかも」
「へー、意外」
「それに、」
緑谷の視線が天音に向く。
『ん?』
「ずっと、一人の女の子しか見てないからね」
「納得」
『えええ?そんなことある?』
「わりとわかりやすかったと思うよ」
『幼馴染だし、仲良い友達て感じだと思ってた』
「爆豪かわいそ〜」
『でも今も私の気持ち、気付いてない勝己かわいくない?』
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