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「えー、なんで!?」

校門を出たところで、深月は叫んだ。

彼女の隣には、言わずもがな杏寿郎が居る。
彼らの前には、宇髄、冨岡、不死川、伊黒の四人が居る。

「人数が増えているな!」

続けて、杏寿郎も叫ぶ。
晩飯に参加するのは宇髄や不死川だけではなかっただろうか。いや、それも許可した覚えはないが。

表情から察するに、不死川と伊黒はあまり乗り気ではないようだ。おそらく、宇髄に半ば無理矢理誘われたのだろう。
冨岡は、仲間との食事を楽しみにしているように見える。

宇髄はにやにや笑いながら、深月の頭をぽんぽんと軽く叩く。

「まあ多い方が楽しいじゃん」
「でも、杏寿郎のお母さん、具合悪いんだよ。大勢で行ったら迷惑じゃないかな」

深月は困った顔になり、杏寿郎を見上げて様子を伺う。
杏寿郎は、引き続き彼女の頭を叩いている宇髄の手を振り払い、口を開く。

「あまり言いたくはないが迷惑だ!」

それを聞いて、宇髄が明るい笑顔を浮かべる。

「親父さんには連絡したぜ。『別に構わん。ついでに買い物してきてくれ』って言ってた」
「なっ……!」

一体、いつ連絡したのか。そもそも、いつ父と連絡先を交換したのか。
杏寿郎は言葉を失い、硬直する。

「槇寿郎先生がいいなら、いいのかなあ。何買ってきてって言われたの?」
「これ」

深月が尋ねると、宇髄は携帯電話の画面を彼女に見せる。どうやら、買い物の内容をメールしてもらったらしい。

深月はそれをのぞきこみ、「多い……」と呟く。

買い物の内容は、日持ちする食材から、ティッシュなどの日用品、千寿郎のオムツまで、大量だった。
これは槇寿郎ではなく、瑠火が指示した物だろう。

瑠火の具合が悪い上に、千寿郎はまだ小さいので、しばらく買い物などは一苦労だ。
杏寿郎や深月だけに任せるより、元気な男子高校生数人を使って買いだめしておくのは、効率的といえば効率的だ。

その駄賃が、今日の晩御飯らしい。

深月は杏寿郎の方を向き、彼の袖を摘まんで引く。

「お金は、杏寿郎と私の手持ちで足りると思うよ。皆と買い物行こ」
「彼らも呼ぶのか!?」

渋る杏寿郎。
深月は宇髄の携帯電話を指差す。

「だって、槇寿郎先生がいいって言ってるし、こんなにいっぱい持てないよ。皆に手伝ってもらおうよ」

深月は眉を下げて、上目遣いで杏寿郎を見つめる。

杏寿郎がそれに勝てるわけもなく、あっさり折れて、六人でスーパーに向かった。


*****


スーパーにて、ほいほいと大量の食材をかごに入れていく深月に、杏寿郎はぎょっとする。

「深月、買いすぎじゃないか?」
「今日の分だけじゃなくて、作り置きもしようと思って。お金はちゃんと計算してます」

というか、と深月は店の奥を指差す。

「みんな着いて来ないで分担してよ。杏寿郎も。宇髄くん、メール転送して」
「へーい」

宇髄は気のない返事をして、言われた通りこの場の全員にメールを転送する。

深月はメールを確認してから、それぞれに取ってくるものを指示する。

「じゃあ、お願いね」

有無を言わさぬ声音と笑顔でそう言って、深月はさっさと食材コーナーの奥に消えていく。

彼女の背中を見送ってから、冨岡が一言。

「前世より性格がきついな」

その言い方では、前世も深月の性格がきつかったみたいではないか。
杏寿郎は訂正してもらおうとして、やはり止めた。

彼女は、前世もなかなか強気な性格だった。
むしろ、今の方がちょっと丸くなったくらいだ。

しかし、冨岡にとってはそうではないらしい。
それもそのはずだ。前世で、深月は冨岡達を『上官や先輩』として扱っていたのだから。
『友人』として接するのでは、外面の度合いが違う。

杏寿郎達五人は、ぱらぱらと散開し、深月に指示された商品を探しに行った。


*****


買い物も無事終わり、六人は煉獄家に着いた。
形だけではあるが槇寿郎に挨拶し、買ってきたものを仕舞ってから、居間に大きな机を運び込んで、男子達がそれぞれ座る。

「じゃあ、皮向きお願いね!」

深月は大量の野菜を机の上に置き、杏寿郎達に手伝いを頼む。
彼らが包丁で皮を向けるなど思っていないので、ピーラーもいくつか渡しておく。
ピーラーは先程買ってきたもので、弟妹が多い深月が持ち帰る予定だ。

「不死川君、料理できるならこっち手伝ってくれる?」
「おう」

深月に声を掛けられ、不死川は彼女についていく。
台所に向かう二人の背中を見つめるだけなんて耐えられなくて、杏寿郎は立ち上がる。

「深月、俺もそっちを手伝う!」
「杏寿郎は料理出来ないでしょ。千君の様子見てきたら?」

ズバッと切り捨てられ、杏寿郎はほんの少し眉を下げる。

深月もそれに気付かないではないが、料理のできない杏寿郎に手伝ってもらっても、効率はさして上がらない。
何だったら、不死川と二人で作業した方が早く済みそうなくらいだ。

それでも、しょんぼりしている杏寿郎が可哀想になってきて、深月は慌てて付け加える。

「ほら、千君、お兄ちゃんのこと大好きだし!」

まだ一歳にもなっていない千寿郎は、兄の杏寿郎のことが大好きだ。もちろん、母も父も好きだろうが、兄にひっついているのをよく見る。

それは嘘ではなかったが、取って付けたような言葉では、杏寿郎の機嫌はなかなか直らない。

深月は困ったように笑って、杏寿郎の頬に手を添える。

「杏寿郎、機嫌直して。瑠火先生は大変なんだから、手伝ってあげよう。ね?」

至近距離で深月が微笑んで、彼女の手が頬に触れる。
見上げてくる深月は可愛くて、ほんのり甘い香りもする。

「うむ!わかった!」

杏寿郎の機嫌は一気に直り、いつものように笑顔を浮かべる。

一連のやり取りを近くで見ていた不死川は、「なんだこの茶番」とツッコみたくなったのをなんとか堪えた。





 




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