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瑠火と男子達の食事をこさえた深月は、不死川に礼を言って食事をしてもらい、一人で作り置きのおかずを作っていた。
レシピは母や瑠火に教わったものや、料理本に載っているものでどうにかなる。
先程、瑠火には食べやすいものを、とおじやを作り、槇寿郎の分の食事と一緒に持っていった。
男子達には肉じゃがや味噌汁を与えたが、伊黒以外はそれでは足りないらしく、カレーを追加した。
宇髄が「肉じゃがの後にカレーっておかしいだろ!」と文句を言っていたが、大人数の食事を作る身にもなってほしい、と深月は突っぱねた。
途中、何度か男子達がおかわりをもらいに来たが、自分で装ってもらうようお願いした。
「一人で大丈夫か?」
冨岡が気を使って尋ねてくれたが、おかわりをもらいに来たついでに聞かれただけなのは明白なので、深月は笑顔で「大丈夫」とだけ返した。
冨岡も杏寿郎同様、戦力としては数えていない。
それに、そんなに難しい料理を作るつもりではないので、一人で充分だ。
なんとか数日分のおかずを作り終えてから、居間に様子を見に行き、深月は怒鳴り気味にこう言った。
「もー!お皿ぐらい下げてよ!」
杏寿郎と不死川以外は、食べた皿を放置していたからだ。
そういえば、台所にいる間、おかわり以外で来たのは二人だけだった、と深月は思い出す。
宇髄は携帯を弄っているし、冨岡はのほほんとお茶を啜っている。伊黒は、食事の量が多すぎたらしく、食べきれずにいるようだ。
「お家で、全部お母さんにやってもらってるんでしょ」
深月は文句を言いながらも、空いた皿を回収していく。
それを杏寿郎と不死川が手伝って、冨岡と伊黒に皿洗いを任せる。
不死川は「弟達の世話がある」と先に帰宅し、杏寿郎が机をふきんで拭いていく。
「宇髄君もなんか手伝ってよ」
台所から出てきた深月に睨まれ、宇髄は渋々立ち上がり、台所へ向かう。
その途中で振り返り、何故か深月を腕に収めた。
「ちょっと、何するの!」
深月は驚いて宇髄の胸を両手で押すが、体格差がありすぎてびくともしない。
居間では、深月の声に気付いた杏寿郎が、宇髄と深月の方を振り返っていた。
杏寿郎は直ぐ様眉間に皺を寄せ、二人に駆け寄ろうと立ち上がる。
それを確認した宇髄はニッと笑って、深月の腰に手を回し、彼女のスカートを捲り上げた。
視界に深月の下着や太腿が飛び込んできて、杏寿郎は硬直する。
白い太腿も、淡い水色の下着も、深月の許可無しに見ていいものではない。
いや、太腿なら体育の授業で見られるが。
それでも、そこから視線を逸らせず、杏寿郎の顔はみるみるうちに赤くなっていく。
深月は少しの間首を傾げていたが、臀部が妙にスースーすることに気付き、確認しようと身を捩る。
首をひねって下を見れば、宇髄がスカートを持ち上げていて、下着が曝されていた。
ぎょっとして悲鳴を上げる前に、視界の端に見慣れた金と赤が映って、そちらを見れば、杏寿郎が真っ赤になって固まっている。
しかも、彼の視線はやや下向きに固定されていた。
見られている。
そう分かったら、深月の羞恥心は悲鳴に変わった。
「きゃああ!宇髄君、離して!杏寿郎も見ちゃダメ!」
宇髄はパッと深月を解放し、深月の悲鳴で我に返った杏寿郎も慌てて二人に駆け寄る。
深月はもう降ろされたスカートの裾を押さえつけ、真っ赤になって震えている。
杏寿郎が深月を宇髄から庇うように抱き締めようとしたところ、深月はそれをさっと避けた。
涙目で杏寿郎を睨み付け、彼から距離を取る。
「なんですぐ助けてくれなかったの!?杏寿郎の馬鹿!えっち!」
深月としては、今まであらゆることから守ってくれていた幼馴染みに裏切られたような気分だった。
杏寿郎は申し訳なさそうに眉を下げるが、彼の頬はまだ赤い。
深月の下着を見てしまったことも原因だが、涙目で睨み付けてくる深月を可愛いと思ってしまった。
「すまん。次からはすぐ助ける」
「次があってたまるか!」
そう怒鳴ってから、深月は利き手を振りかぶる。
バシン、バシン、と乾いた音が居間に響いた。
*****
「何かあったのか?」
台所にやってきた杏寿郎と宇髄を見て、伊黒は怪訝な顔で尋ねた。
先程、深月の悲鳴や怒鳴り声が聞こえてきたし、彼らの頬には立派な手形がそれぞれついているからだ。
「いや、ちょっとからかいすぎたっていうか……」
「不甲斐なし……」
宇髄はへらへらと笑い、杏寿郎は肩を落とす。
伊黒は呆れたように溜め息を吐く。
この場に深月が居ないので、きっと彼女に何かしたのだろう。
おそらく、実際に何かしたのは宇髄で、杏寿郎は巻き込まれたというところか。
伊黒は再度溜め息を吐いて、冨岡が洗った皿を拭いていった。
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