ポスターの人
「よし、じゃあ今日は4人目の1年生を迎えに行こうと思いまーす!」
「は?」
朝、遅刻して教室に入ってくるなりそんなことを言い出した五条。
「1年って3人じゃねえの?」
「あー、常に登校してるのはこの3人なんだけどね。一応もう1人いるんだ。言ってなかったっけ?」
「聞いてないわよ。ていうか、そいつ迎えに行くの? 来させりゃいいじゃない」
「それがそうもいかないんだよね、その子忙しくてさ」
「忙しいって……強いから任務がたくさんってこと?」
「それもあるんだけど〜、まあ、実際会えばわかるよ!」
妙にもったいぶった様子の五条に釘崎は"はっきり言えや"と苛立ちを隠さない。唯一その人物と面識のある伏黒はめんどくさそうに溜息を吐いた。
「五条先生、もういいから行きましょうよ。美鶴も待ってんでしょ」
「あれ、伏黒知ってたん?」
「知ってんならもっと早く言いなさいよ」
「お前らも知ってると思ってたんだよ」
「あれ、僕のせい?」
へらへら笑う五条をよそに、伏黒と釘崎が席を立ち教室から出ていく。虎杖も慌ててそれを追った。
「あの子ら、何で唯一待ち合わせ場所知ってる僕を置いてくの……?」
*****
待ち合わせに指定されたのは釘崎とは真逆であまり人気のない都内の駅だった。
「何もないじゃない。1個前の駅だったらショッピングとか出来たのに」
と釘崎はボヤく。
「お、このアイドル最近よく見るよなー。俺この金髪の子結構好きなんだよね。伏黒は?」
虎杖は初めて来る場所をきょろきょろ見回しており、広告のアイドルに反応していた。
「俺は別に」
「この中から1人選ぶくらいで照れんじゃないわよ、ムッツリか?」
「そういうんじゃねえよ!」
「僕も悠仁と同じ子かな〜」
五条も会話に混ざり始め、若干盛り上がった。
「アンタわかってて乗っかってんでしょ」
「まあね、でも美鶴がタイプなのはホントだし」
「せめて俺らの在学中は捕まらないでくださいよ」
「待って、何で犯罪者扱いなわけ?」
「いいから行きますよ。ほら、もう待ってるじゃないですか」
「お、真面目だね。悠仁、野薔薇、あの子だよ」
五条が指をさした先には高専の制服を着た金髪ポニーテールの女子がいた。しかしメガネとマスクのせいで顔はよく見えない。
「なんだ女子か。つーか顔見えないじゃない」
「ちょっとワケありでね」
「ケガとか?」
「いや? 傷一つない綺麗な顔だよ。――おーい、こっちこっち!」
五条が呼びかけるとその人物は振り向き、小走りで4人のいる方に向かってきた。
「恵くん、久しぶり」
「おう」
「そっちの2人は、新しい同級生?」
「こっちからしたらアンタの方が新しいんだけど」
「あー、確かに。ごめん」
「別に謝んなくてもいいわよ。なんか妙なヤツね」
「妙って。面と向かって言われたの初めて。変わってるね」
「初対面だけどアンタにだけは言われたくないわそれ」
「あっ!?」
釘崎とテンポ良く? 会話を繰り広げていると、虎杖が突然大声を出した。
「えっ、マジで?」
「虎杖落ち着け、マジだ」
「恵、それ逆に悠仁混乱するから」
「悟くん、やっぱ説明してなかったんだ。ひど」
「え〜、だってサプライズしたいじゃん」
そう言って五条は馴れ馴れしく少女と肩を組む。
「はいはい。こちら4人目の1年生、禪院美鶴ちゃんです!」
「禪院美鶴です。よろしく」
軽い挨拶とともに美鶴は適当にピースした。
「美鶴って、さっきのポスターのアイドルじゃない!」
「だよな!? ヤ、ヤベー!」
「え、私そんなヤベーの?」
「ま、詳しいこと高専戻ってからね〜」
「っていうか、結局顔見えないんだけど」
「あー、うん。一応変装だからこれ」
「そっか、アイドルだもんな。……ヤベェ!」
「お前ら、目立つから静かにしろよ……」
「オイ伏黒! アイドルと知り合いだからって後方彼氏面してんじゃないわよ!」
「してねえよ! つーかなんだそれ」
「俺も知らん」
「あはっ、ウケんね、同級生」
「美鶴、馴染めそうで良かったね」
「俺思ったんだけど、先生が一番彼氏面してね?」
「五条先生はいつもこうだぞ」
「ないわ」
「悟くん、早く行こうよ。次の時間遅れると困る」
「あ、うん」
「手懐けられてんじゃねえか」
「つーかどこ行くん? 高専戻るんじゃないの?」
「いや、今日は近くの廃ビルで呪霊祓って解散。美鶴も仕事残ってるし」
「詳しくは戻ってからって言ってたのは!?」
「今から戻るとは言ってないし〜」
「俺、先生のそういうとこ嫌いです」
「あー、わかる、ちょっとダルいよね」
「マジ!? ちょっ、待って美鶴、どこがダメか教えて? 僕頑張って直すから!」
別れ際の彼女のような五条の態度に、1年生たちはシンプルに引いた。