直哉くん@
それは美鶴が同級生と体術の訓練をしているときのことだった。
「美鶴ちゃん、こんなとこにおったんか」
突然外からかけられた声に、4人は動きを止めて声の主を見る。
運動場の端に立っていたのは金髪にピアスをつけた和服の男。
「誰よあのイケメン、美鶴の知り合い?」
「あー、直哉くん」
美鶴は全く説明になっていない返事をすると、直哉の方へ走って行った。
「あの人は禪院直哉さん。美鶴の兄にあたる人で、真希さんのいとこだ」
「えっ、そうなん? あー、でも確かにちょっと似てるかも」
珍しく自主的に説明した伏黒の話に納得する虎杖と釘崎。
「……気をつけろ、特に釘崎。絶対に気が合わない」
そう小声で付け足した伏黒に釘崎が聞き返そうとするも、美鶴と直哉が連れ立って戻ってきたことにより話は中断された。
「いやー、ごめんなぁ訓練の邪魔してもうて。お、恵くんもおったんか」
「どうも」
絶対見えてたでしょ、と思いつつ一言で会話を終わらせる伏黒。
「ほんで、君が虎杖くんやんな? 宿儺の器の」
「虎杖悠仁っす! よろしくおなしゃす!」
「あ、直哉くん、私飲み物買ってくる。何がいい?」
「ええの? じゃあ美鶴ちゃんに任せるわ、これ使い」
「ありがと」
直哉は千円札を美鶴に握らせた。
「野薔薇行こ」
「えっ、何で私が――」
美鶴は釘崎の腕をがっちり掴んで自販機に連行した。
「何のつもりよ」
「直哉くんちょっとヤベーんだよね」
「はぁ?」
「ザ・禪院の男だから。男尊女卑は基礎代謝みたいな」
「うっわ……アンタ大丈夫なわけ?」
「うん、気に入られてるから」
「あっそ。っていうか、そんなのが真希さんのいとことか、ないわ」
「私の兄なのは"ある"んだ? っていうかまあ、先に知らせておいた方がいいかと思って」
自販機に着くと美鶴は迷わず1本選んで購入し、運動場に戻ろうとする。
「アンタまさか、アイツの分だけ買ってくつもり?」
「うん、こういう時は直哉くんのだけ」
「何で好き好んでパシリなんかやってんのよ」
「いや、ゲーム感覚の点数稼ぎ。あと直哉くん嫌いじゃないし」
「意味分かんね―、やっぱ妙なヤツね」
「ふふ、ウケる」
「どこにウケてんだよ」