親友の姉
【五条視点】
「あ、悟先輩と傑先輩おかえり〜。アイス食べる?」
「食う」
「姉さん、服を着てくれ」
「? 着てるじゃん」
任務を終えて寮に戻ると、共用スペースにある冷蔵庫の前に美鶴がいた。今日は休みなのかキャミソールにホットパンツというなんともエロい私服姿だ。
美鶴が年下である俺たちのことを"先輩"と呼ぶのは実際先輩だからで――ふざけてるのもあるが――現在美鶴は1年生だった。夜蛾センのスカウトを保留にしたまま忘れていたらしい。バカなのか?
呪霊も見えて術式も自覚していたにも関わらず、それを誰にも悟らせずに生きてきた美鶴はやはりどこかイカレている。傑も夜蛾センに聞いて初めて知ったらしい。
気まぐれに生きていた美鶴が高専に入学したのもまた気まぐれの1つだった。俺とマリカで勝負して負けたら入学するという約束を律儀に守っているというと聞こえが良くなるのでそういうことにしておく。
美鶴は当時通っていた大学をあっさりやめて高専に入ったが、それを知っているのは俺と傑と硝子と夜蛾センだけ。同級生である七海や灰原は美鶴のことを傑の妹だと思い込んでいる。いつまでバレずにいられるかを傑や硝子と賭けていた。
「悟くん何味がいい?」
「美鶴のとおんなじやつ」
「え〜これラス1。食べかけでいいならあげるけど」
「貰う」
「貰うんじゃない」
美鶴に差し出された食べかけの棒アイスを受け取ろうとしたら傑に横取りされた。お前も欲しいんじゃん。
「てかあっつ〜。なんでここクーラーないの?」
「あるけど壊れてるんだよ。いいから姉さんはこれ着て部屋戻って」
傑は自分の制服の上着を美鶴に羽織らせた。
「やだ! 暑い! 全裸じゃないだけ偉い!」
「こら! 脱ぐな!」
マジでどっちが姉だか兄だかわかんねえなと思いつつ、いっそ全裸でそのへん歩いててくれねーかななんていう思考がよぎる。暑さで俺も頭やられたかも。