チョコ、カオス、手作り
いつものようにアパートのドアを開けると、そこは南国風のビーチ――ではなく、学校の教室だった。
「あっ、真実おそ〜い! もう始めちゃうよ?」
『待っていましたよ』
「ぶふ〜」
混乱しつつ、声のした方を向くと、そこにいたのは真人、花御さん、陀艮さんの3人だった。だったのだが……。
「えっ、何事……?」
「何言ってんの? いいから早く来なよ」
どう見てもセーラー服を着た3人が当たり前のようにそこにいた。真人のいつも3束に結ばれている長髪はポニーテールになっている。花御さんと陀艮さんはセーラー服以外違いはなかった。いや、セーラー服着てるのが一番"違う"と思うけど。
幻覚だろうか。それともそういう術式? いやでも、ここって陀艮さんの生得領域に繋がってたはずでは?
そんなことを考えつつ仕方なく真人たちのところへ行くと、エプロンを用意していた。
「はい、真実のはこれね」
「はあ。というかなんでエプロン?」
くすんだ水色のエプロンを渡された。
「何でって、今日はバレンタインってやつでしょ? チョコを作ろうってことになってね」
『私は漏瑚にあげようと思っています。真実はどうしますか?』
「えっ……」
「真実はアタシにくれるよね?」
「えー……?」
何その設定。バレンタインだからチョコ作る、まではわかる、けど。
「ぶぅ〜、ぶふ、ぶぶ〜」
「あっ、陀艮さん」
いつの間にか横にいた陀艮さんは、ちょいちょいと肘のあたりをつついてくる。照れるなよ〜……みたいな?
「アタシも作ったら真実にあげるからぁ、交換しよ?」
真人、楽しそうだな〜。
「…………まあ、いっか!」
私もチョコを作ることにした。
*****
「お、似合うじゃん。お揃いなのもいいね」
真人の手により私もポニーテールにされた。結構器用だ。その髪も自分で結んだんだろうか。
チョコ作りと言ってもそんな手間のかかるものではないらしく、市販の板チョコを溶かして型に入れるだけのようだった。
それにしてもシュールな光景だ。
「あのー、3人ともなんでセーラー服なんですか?」
「チョコって女があげるんでしょ? ついでにJKごっこ」
「はあ、まあ、似合ってるけど……」
「アタシぃ、こういう形のが良いと思うんだけどぉ」
こっわ。女口調なのはともかく、何でチョコの型を選ぶのに改造人間出してくるんだろう。
私と真人がそんなことをしているうちに、向かい側で作業をしていた花御さんと陀艮さんはチョコを何故か設置されている冷蔵庫に入れて冷やし始めていた。
結局私は特にこだわりもなくハートとか星みたいな無難な型を選んで作ってたけど、真人はもうそれ型じゃなくて改造人間だよね、チョココーティングはかわいそすぎるよ。というかそれ私にくれるって言ってたよね。うわーごめんね人間さん。ひどいな、色々と。
*****
それからしばらくてしてやって来た漏瑚さんは学ランを着ていた。意外とノリがいいなと思ったけど燃やされたくないので黙っておく。花御さんにチョコを貰って割と嬉しそうだった。
陀艮さんは結構たくさん作っていたようで、私も含めて全員に配っていた。友チョコらしい。
真人に貰ったチョコは案の定改造人間チョコエディションって感じだったけど、見た目はともかく中身は普通のチョコなので普通においしかった。
「来月はホワイトデー、だっけ? 俺、次は女体盛りっていうのをやってみたいんだけど、協力してよ」
「どこで覚えたのそれ」
「大丈夫、おいしくしてあげるから」
私があげた無難チョコを食べながら下ネタではしゃぐ真人。こうしてみると男子高校生みたいなノリだなぁ、セーラー服だけど。なんかかわいく見えてきた。こういう子どっかにいそう――いや、いないいない。まひ子ちゃんが何人もいてたまるか。
それからまたしばらくしてやって来た夏油さんもこの光景に驚いていた。そりゃそう。
「あ、チョコ、夏油の分はないから〜」
という真人に、夏油さんは"いらないよ"とだけ返して溜息を吐いていた。