五条編 /前編
【五条視点】
最初に言っておくがこれは恋とか愛とかいう純粋なものじゃない、ただの性欲だ。
最近様子がおかしいと傑に指摘された。俺もそう思う。
3人いる同級生の1人である深山真実――こいつのせいで俺は傑にからかわれている。
「……悟、見すぎだよ」
「お前もだろ」
「…………」
否定しねーのかよ。
高専のグラウンドの端に座った俺と傑の視線の先にいるのは、同級生である硝子と真実。2人は借りた呪骸で遊んでいる――いや、一応訓練してるのか。
ピョンピョン跳ねて逃げ回る呪骸を追いかける真実は、呪骸と同じく跳ねたりしながら走っている。ちなみに硝子は横で眺めてるだけだった。
いやまあ、何が問題かって真実が跳ねてるのが駄目だ。
俺についてこられる傑や反転術式を使える硝子はともかく、真実はただの2級、つまりザコ、弱そうなちんちくりん。そういうワケで最初は別に気にしてもいなかった。
……が、気づいてしまったことがある。
「アイツやっぱ、すっげー巨乳だな」
「それ、嫌われたくないなら本人に直接言うなよ」
傑はやれやれみたいな顔してるけど、真実は多分、正面切っていきなり胸を鷲掴んだりしても"どうしたの?"とか普通に聞いてくるタイプだろ。
よく見たら顔もかわいいっつーか……身長差がありすぎて普段アイツの顔どころか存在ごと視野の外だから気づかなかった。
「で、巨乳ってだけで悟は真実に惚れたわけだ」
「ハァ? 誰があんなちんちくりん」
「そうか、安心したよ」
「は? お前――」
「真実、硝子! そろそろ時間だ、戻ろう」
俺の言葉を遮って、傑は2人に声をかけた。
「私の術式、呪骸に効かない……」
「だろうな」
「硝子も手伝ってよー」
「私は治療専門だからパス。応援してるよ」
「じゃあ傑」
「私が手伝ったら意味ないだろう」
「えー」
仲良さそうに喋りながら俺の横を通り過ぎていく3人。
「あれ、悟戻らないの?」
「…………戻る」
振り返って声をかけてきたのは真実だけだった。
「悟、これあげる」
「あ? いらねーよ!」
さもプレゼントでも渡すかのように呪骸を渡してきた真実の頭を引っぱたいた。
「痛い!」
「悟、女性の頭を叩くのはどうかと思うよ」
「サイテー」
「うるせーな!」
前を歩いていた傑たちがニヤニヤしながらからかってくる。クソムカつくな。
*****
なんてことがあってから俺はずっと真実を目で追いかけていた。
ああいうの、別にタイプじゃなかったんだけど、あれはあれでアリ、みたいな感じがしてきている。
「おい真実」
「ん? どうしたの悟」
「ヤらせろ」
「……や?」
やっべ、順番ミスった。
「あっ、もしかして、"こういう"?」
真実は片手で輪っかを作り、反対側の指を1本その輪っかに突っ込んだ。
「おう」
言ってしまった以上はしょうがない。真実もドン引きしているわけではなさそうだし。
「今日?」
「えっ」
「え? あれ、冗談だった?」
「いや、違ぇけど、いいのかよ」
「うん、私も興味あるし」
後から思えばこの時の俺はマジでどうかしていた。
真実の腕を引っ掴んで昼間の静まり返った男子寮に連れ込む。隣室の傑は朝から任務だし、他学年も今はいない。
「あ、悟ゴム持ってる?」
「ある。どれがいい?」
「えー……じゃあ薄いやつ」
「ビッチかよ」
「まさか〜、やったことないもん」
「は? ……え、お前、処女?」
「そうだよ? ビッチだと思われてたの心外なんだけど」
こいつマジで頭大丈夫かよ。俺が言うなって言われるかもしれないけど、普通処女のくせにヤらせろって言われてついてくるか? いくら知り合いとはいえ。
「俺のこと好きとか?」
「友達としてなら」
「マッジでわかんねえ……」
「"初めて"とかこだわらないし。悟慣れてそうだから安心かなーみたいな」
「いや、まあ……お前がいいならいいけど」
「あっ、今日下着上下揃ってないや。ごめんね」
「どうでもいいわ」