協力
「そういえば、最近吉野くん来ませんね」
呪霊である真人さんを視認できて、改造人間を見てもビビらなかった珍しい一般人の吉野順平くん。
今日も訪れたこのトンネルで、数回だけだが雑談をした仲だ。
一時期は私よりここに来る頻度が高かったんじゃないかってくらいだったのに、最近は全くその姿を見ない。
「順平? あー、死んだよ」
「えっ」
死んだ? ずいぶん急な話だな。
真人さんは特に変わった様子もなく改造人間をいじっている。
「あっ、殺したんだ」
「そっ。よくわかったね」
「うわぁ……」
「? 何その顔、初めて見た!」
「軽蔑の眼差しなんですけどー」
文字通りうわぁって感じの表情で真人さんを見ると、私とは対照的に嬉しそうな顔をしていた。
まあでもそうだよね、呪いだもんなぁ。やっぱり真人さん的に吉野くんはオモチャだったみたいだ。
「呪術師が、わざわざ呪いを軽蔑なんてするなよ」
「それは確かに」
「あはっ、順平も真実くらい面白ければ、もうちょっと長生きしたかもね?」
「そうですか? どっちにしろ殺すでしょ、真人さんは」
「俺のことよくわかってるじゃん」
真人さんのこと、というよりは呪霊のことなんだけど。
「今度は俺が真実の考えてること当てようか?」
「わかるんですか?」
「"縛りがあるから自分は殺されない、ラッキー!"」
「…………」
うーん、合ってる。いや、呪霊との縛りなんて基本ラッキーではないけどね。
返事を聞くまでもなく確信を得たのか、満足げな顔をされた。
「それより聞いてよ、面白い相手を見つけてさ」
「何ですか?」
「虎杖悠仁、両面宿儺の器だよ。アイツは俺の天敵だ」
「天敵って言う割に楽しそうですね。イタドリくん? のことはよく知らないですけど」
「そうなの? 高専の制服着てたけど」
「へぇ、じゃあ1年生かも。まだ会ったことないんですよね、最近任務が多くてタイミング合わないっていうか」
「ふぅん」
真人さんは興味なさそうに相槌を打つと、イタドリくんのことを思い出しているのかどこか楽しそうな表情で人間いじりを再開した。
「俺は虎杖を殺すよ」
「そうですか」
「何だ、反応薄いね」
「はぁ、知り合いでもないですし。っていうか、前会ったときは殺せなかったんでしょう?」
「そうなんだよね。ん〜、もどかしいよ。今すぐにでも
そんなこと言われてもなぁ、と思って適当に返事をしておく。
「真実も協力してよ」
「えー、それ私必要ですか?」
「真実次第でしょ、もっと強くなりたくない?」
「うわ、宗教勧誘みたいなの始めた。うち理系一家なんで、非科学的なのはちょっと〜」
「何それ、呪術師ジョーク?」
真人さんは首を傾げた。
「違いますけど……。でも、強くはなりたいですね。近接戦闘苦手だし」
「だよね、真実って見るからに弱そう」
「実力はわきまえてるつもりですけど」
「そんなのつまんないじゃん。俺もっと術式試したいし、付き合ってよ」
「そうですね、わかりまし――うわっ、いったぁ……!」
返事をし終わる前に、変形して異常なほど大きくなった真人さんの片腕によって地面に押し付けられた。
とはいえかなり手加減されているのか、打ち付けられた地面の硬さ以外に痛みはない。
「……ずるくないですか?」
「え〜? 今いいって言ったじゃん」
子供かよ。