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僕が渡した鍵を使った海斗は、学校の道場に七緒を呼び出した。
もう日も暮れかけているけど、2人は射詰競射で決着をつけるようだ。
僕と静華、後から合流した湊と遼平は、その様子をこっそり覗いている。
「すごい、私と静弥みたい」
「確かに」
中学時代にやった静華との競射では、海斗と七緒と同じくらい互角というか、とにかく中たりと外れが同時だった。
それを思い出したのか、静華は少し笑ってそう言った。
湊が同意したことで、その場にいなかった遼平が当時の様子を聞きたがる。
「初心者の新入部員だけの競射会があって、それが私と静弥で最終決戦だったんだよね」
「へぇ〜、俺も見たかったなぁ」
「しかも、結局射詰じゃ勝負がつかなくてさ。遠近競射に切り替えて、僅差で静弥が勝ったんだよな」
悔しがる遼平に、湊は懐かしそうにしながらそう付け加えた。
「そう! あと1cmくらいのとこで負けちゃって。永亮くんにも怒られたし、むかついた〜」
「えっ、怒られたの!?」
それは僕も知らなかったな。とは思うものの、二階堂先輩に関しては、静華の理解できないところその2だ。
「"ちゃんと中てろ"ってデコピンされた。中ててはいたのに」
「あはは、二階堂先輩、静華のこと応援してたんだね」
遼平のその言葉に、静華は目を丸くした。
「そう、なのかな」
「違った?」
うーん、と首をひねる静華。何をそんなに迷うことがあるんだろうか。
あの二階堂先輩が、静華より僕に勝ってほしいなんて思うはずがないのに。
「――まあいいや、今度会ったとき聞いてこよ」
「へぇ、会う予定があるんだ?」
どうやら静華は口を滑らせたようだ。僕が聞き返すと、途端に嫌そうな顔になる。
「今のなし」
「あとで聞かせてもらうよ」
「言わない!」
ぷいっとそっぽを向いた静華に、苦笑する湊と遼平。
静華は、静華のことをよく知らない同級生からは"大人っぽい"だとか"落ち着いている"だとか、そんな風に評価されている。
僕からすればただの抜けた妹なんだけど、わざわざそれを教えてやるつもりはなかった。
*****
――カラン、と、聞き馴染んだ音が聞こえてきた。
音のした方、射場に目を向ける。
七緒が弦切れをして、矢が床に落ちた音だった。
*****
翌日。
「メッハー!」
と、元気な挨拶が聞こえて振り向くと、七緒と海斗が一緒に道場に来ていた。
仲直りをした2人を見て、妹尾さんたち3人はそろって安堵のため息を吐く。
こうして、風舞弓道部はいつもの雰囲気を取り戻したのだった。